高血圧を予防・治療するために食塩を控えることが重要だが、高塩分の食品を食べるときはブドウをいっしょにとると、高血圧や心臓疾患の対策になるかもしれない――ミシガン大学心臓血管センターの研究チームが、ブドウの食品作用について発表した。
この研究は、学術誌「老年医学ジャーナル:生物科学」10月号に発表された。研究資金の一部は、カリフォルニア・テーブル・ブドウ委員会や国立衛生研究所から支援を受け実施した。
研究者は、塩分の多い食事を与えると高血圧になる性質のラットを使い実験をした。含まれる塩分量を変えた重量が同じ飼料を与え続けた。緑ブドウ、赤ブドウ、黒ブドウを粉末状にして混ぜた飼料を与える群と、与えない群に分け比較した。
18週後に、ブドウを与えたラットではより血圧が下がり、心臓機能が向上し、全身の炎症も縮小していた。高塩分の飼料を与えブドウを与えなかったラットでは、心筋のダメージの徴候がみられた。高圧薬を投与したラットでは、高塩分の飼料のみを与えたラットより血圧が下がっていたが、ブドウを与えたラットに比べ心臓保護の効果は少なかっ
た。
こうした効果は、高塩分の飼料にブドウ粉末を追加することで得られた。ミッチェル・セイモア氏(栄養学)は「ブドウなどの果物や野菜に、既知の降圧作用のほかに、心臓疾患のリスク低下に影響する作用がある可能性がある」と話してい
る。
ブドウには自然の抗酸化作用があるフィトケミカルが多く含まれる。ブドウに含まれる色素成分の総称であるフラボノイドは、抗酸化作用を防止する効果があり「血管に対する保護効果がある」などといわれている。フラボノイドはブドウの果肉や種子、葉に含まれる。
研究者らは「高血圧患者は食塩摂取量の変化に非常に敏感だ。食塩の摂取を抑えることが一般に勧められる。高血圧の治療食として、塩分を抑え野菜や果物を豊富にとる“DASH食”が効果的であることもよく知られている」と話している。実験で使われたブドウの摂取量は、ヒトに換算すると1日当たり9サービング(サービングは1食分として食べる量)に相当する。DASH食では、果物や野菜を5-9サービングとることが推奨されている。
フラボノイドは赤ワインなどにも含まれており、健常者が1日1-2杯の適量を摂取すれば心臓疾患のリスクを30-50%減少させるという報告もある。ただし、アルコール飲料は高血糖、高中性脂肪の誘引にもなるので、注意が必要となる。また、果物は炭水化物(果糖)が多く含まれるので、これも食べすぎは良くなく、適量を守ることが大切。
研究チームはブドウの食品作用について、ヒトでの有効性についてのデータは十分ではなく研究を重ねる必要があるとしながらも、「高血圧の
予防や、高血圧から引き起こされる心臓疾患などを予防する効果を解明すれば、治療食などの開発につながる」としてい
る。
ブドウが心臓病の危険因子を減らす助けになる(ミシガン大学)
[ Terahata ]