尿糖チェックで糖尿病コントロール
2012年03月27日
4. “隠れ糖尿病”を見逃さない
——特定健診ですと、腹囲が男性85cm/女性90cm以上ならHbA1c5.2%(JDS値・以下同)で受診勧奨となりますが、腹囲が基準を超えなければ5.8%までは正常値ということになってしまいます。そういう方は、5.9%になって初めて医療機関を受診するということになりますね
Dr.小田原: HbA1cは非常に良い指標なんですけれども、スクリーニングの面では、特定の人の糖代謝を判定するのにはあまり適切ではないんです。健診で全体のうちHbA1c 6.1%以上が○%いたら、糖尿病の人が○%いるだろうとの推定はできるのですが、誰が糖尿病であるのかはわからない。では、6.1%以上の人は皆糖尿病かというとそうではなくて、実は5.8%で糖尿病の人がいるし、6.2%の人でIGTの人もいるわけです。ですから、だいたいの人数を捕まえるには良いのですが、個別にみると非常にばらつくんです。
——特定健診に、尿糖測定を入れるとよいですね
Dr.小田原: そうですね、一応、確実な基準として、空腹時血糖値とHbA1c値で引っかけるということになっていますが、先程ご紹介した研究結果でもわかったように、その両方に引っかからなくても、尿糖陽性者の約4割にIGTが見つかったわけです。ですから、尿糖測定を入れれば、特定健診での糖尿病スクリーニングの質は、大きく変わるのではと思います。
——本来、もっと早い段階で発見し、治療開始ができれば合併症は減らせるかもしれませんね
Dr.小田原: そうですね。糖尿病は見つかって早い時期から血糖コントロールすることが重要であることは、DCCT、UKPDSをはじめ、さまざまな臨床試験で証明されています。また、早期からコントロールすることで平均20〜30年といった長いスパンで合併症の抑制効果を示すこともわかっています。そうなると、発症して間もない頃から治療を始めるというのが大事になってくるわけですが、発症してなるべく早くに、まずは糖尿病と診断しなくてはなりません。ですから、スクリーニングの段階で、食後の血糖値を測定した方が本来は効率がよく、食後に健診を受けることは、糖尿病を見つける、ひとつの有力な手段であると言ってもよいと思います。非侵襲で手軽に測定できる尿糖チェックのような、"隠れ糖尿病"の方を逃さないスクリーニング方法の検討が、今後重要になってくるのではないでしょうか。
——ありがとうございました
■Profile
●小田原 雅人 先生
おだわら まさと。東京医科大学内科学第三講座主任教授。1980年東京大学医学部卒。同大学助手、筑波大学講師、オックスフォード大学講師、虎の門病院内分泌代謝科部長などを経て、2004年より現職。 ●東京医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科
おだわら まさと。東京医科大学内科学第三講座主任教授。1980年東京大学医学部卒。同大学助手、筑波大学講師、オックスフォード大学講師、虎の門病院内分泌代謝科部長などを経て、2004年より現職。 ●東京医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科
※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。
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