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2007年12月07日

3,600万人の命を生活習慣病から救おう 大いなる挑戦

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 心疾患、がん、呼吸器疾患、2型糖尿病などの生活習慣病を予防し対策するための世界規模のキャンペーン「Grand Challenges(大いなる挑戦)」が先月、英国の科学誌「Nature」に発表された。

 英国や米国、インドなどの研究者らによる研究グループは、50カ国155の専門分野の関連団体の調査をもとに、6項目の目標を設定。これらを達成するための実際的に何をすればいいのかという提言や、優先度の高い研究テーマをまとめた。
「Grand Challenges(大いなる挑戦)」は、「オックスフォード・ヘルス・アライアンス(Oxford Health Alliance)」が支援し、英医学研究審議会(UK Medical Research Council)、インド医療研究評議会(Indian Council of Medical Research)、米国立衛生研究所(NIH)などが参加する。
 世界の死亡原因の44%は心臓病、糖尿病、肺疾患、がんなどが原因となっており、これはすべての感染病を合わせた割合の2倍に上る。今後10年で約3億8,800万人が生活習慣病で亡くなると予測している。

 しかし、途上国では感染症対策に注意が向けられ、生活習慣病対策はあまり注目されていないのが現状だ。例えばアフリカではマラリアやエイズなどの感染症に研究費の多くが注がれている。

 医療経済での損失も深刻だ。生活習慣病の医療負担により今後10年間に、英国は330億ドル(3兆6,000億円)、中国は5,580億ドル(61兆4,000億円)、インドは2,370億ドル(26兆1,000億円)の損失があるだろうと試算した。

 計画の対象となる生活習慣病の要因は、生活習慣の変化、運動不足、肥満、喫煙など。ほとんどは生活習慣の改善でき、場合によっては薬物療法で予防・対策できる。

 この計画は、各国の保健分野の専門家で構成する組織が中心となり行われる。計画が成功すれば、2015年までに世界の少なくとも3,600万人を救うことができるとしている。

「大いなる挑戦」では対策として、6項目の目標を掲げている。
  1. 市民の意識の向上
  2. 経済や法の改善、環境施策の整備
  3. 危険因子の見直し
  4. 関連企業と地域の連携
  5. 貧困、都市化との関連調査
  6. 保険制度の再適応
 これらをもとに20項目の提言や39の研究テーマをまとめる。
・生活習慣病対策の政治的優先課題を掲げ、健康的なライフスタイルを促進する
・タバコ、酒類、不健康な食品の消費を阻止する規制を強化する
・飲料・食品業界や外食産業の責任ある行動を監視する法令を整備する
・疾病の度合いに応じて医療財源を分配を調整する
・行政レベルで予防に重点を置いた実際な対策を定着させる
などの内容。

Grand challenges in chronic non-communicable diseases(Nature.com)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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