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糖尿病の大規模臨床研究 トップページへ メールマガジン無料登録
Funagata Study(1)
今回は山形県舟形町で実施された、糖尿病およびIGTの有病割合を調べた研究について解説します。本研究はランダム化比較研究ではないため少しエビデンスレベルは低くなりますが、日本から発せられた糖尿病に関する重要な研究ということでご紹介いたします。
解説:加藤 昌之  一般財団法人 東京社会保健協会 フィオーレ健診クリニック
監修:野田 光彦  埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科 教授
2016年09月
研究目的
 山形県舟形町において糖尿病およびIGTの有病割合を調べる。
研究デザイン
 舟形町は山形県の東北部に位置し農業を主な産業としています。舟形町は中央部の舟形地区と東の長沢地区、西の堀内地区の3地区に分かれています。1979年から各地区で40歳以上の住民を対象に、食後の尿糖でスクリーニングし陽性の場合にブドウ糖負荷試験を実施するという糖尿病の集団検診を実施していました。しかし尿糖でスクリーニングすると見逃しが多くなる可能性があり、1990年から尿糖でのスクリーニングをせずに75g経口ブドウ糖負荷試験(75g-OGTT)を実施していました。本研究の対象者は脳血管疾患などで障害のある人たち123人を除く45歳以上の舟形地区の全住民としました。1,163名の対象者のうちすでに糖尿病と判明していた52名はOGTTの対象とはしませんでした。
 OGTT受診率を上げるために事前に町のリーダーたちとのミーティングを開いてOGTTの重要性を説明したり、糖尿病についての勉強会を開催したりしました。また当日には車を持っていない人や遠方の人たちのためにバスを出しました。
 OGTT受診者は前日の夜8時以降は絶飲食とし、朝7時に糖負荷検査の前採血をしました。採血から10分以内に75gのグルコースを摂取し2時間後に再度採血をしました。血液はフッ化ナトリウムを含む採血管に移して15分間遠心したのち血清を4℃で保存しました。血糖値はグルコースオキシダーゼ法で測定しました。
 OGTTはNDDG(National Diabetes Data Group、米国国立糖尿病データグループ)の勧告に従って1)対象者は前日の夜から10-16時間の絶食、2)朝に実施、3)空腹時の静脈血、4)75gのグルコースか同等の炭水化物、の条件で実施されました。本研究ではブドウ糖溶液のかわりにトレーランGを使用しました。
 OGTTを実施する際に、NDDGは2時間まで30分ごとの採血を推奨していましたが、WHOでは空腹時と2時間後の採血だけでよしとしていました。本研究では空腹時と2時間後の採血としました。国際比較を可能にするためにOGTTの結果は1980年のWHOの基準(参考図)に従って分類しました。

図1:舟形町。人口は1990年時点


図2:対象者選択の流れ図


参考図:WHO基準(1980年)によるOGTT結果の分類
境界線上の場合は上のカテゴリーに含まれる(例えば、
2時間値140mg/dLはIGTに、空腹時血糖値140mg/dL
は糖尿病となる)
研究の結果
 OGTTの対象者1,111名のうち868名が実際にOGTTを受診しました。うち4名は下痢や嘔吐、全量を摂取できなかったなどの理由でOGTTを完了できなかったため、解析には残る864名のデータを使用しました(表1)

表1:年齢、性別ごとの人数、既知糖尿病、OGTT対象者、OGTT完了者


 45-54歳での参加率がやや低かったものの、他の年代では70%以上の参加率で、全体での参加率は77.8%でした。これは海外の他の研究と比べても遜色のない数字で、全体の有病割合を推定するのに十分な参加率だと考えられました。参加者のBMIは男性で23.4±3.4、女性で24.2±3.5でした(平均±標準偏差)。
 既知の糖尿病、今回の検査でわかった糖尿病、IGTそれぞれの人数を表2に示します。糖尿病の有病割合はほぼ年齢とともに増加していました。IGTと診断されたのは152名で糖尿病の約1.5倍で、やはりほぼ年齢とともに増加していました。
 糖尿病とIGTをまとめると耐糖能に異常のある者は28.5%(男性25.2%、女性30.9%)でした。

表2:年齢、性別ごとの糖尿病、IGTの有病割合


 表3に示すように、年齢を調整した有病割合(1985年の日本の人口を基準にして直接法で計算)は糖尿病が10.4%(男性8.8%、女性14.0%)、IGTが15.3%(男性11.9.%、女性16.6%)でした。

表3: 糖尿病、IGTの年齢調整有病割合

まとめ
 本研究は地域の住民ベースで全員をOGTTの対象者として、糖尿病およびIGTの有病割合を調べた重要な研究です。この研究が行われた当時には日本人の糖尿病有病割合は2%前後だろうと思われていたようです。同じ研究者らが1988年に山形県小国町で実施した、尿糖を1次クリーニングとしたOGTTによる調査でも糖尿病有病割合は3.82%、年齢調整有病割合は2.72%でした(男女に有意差なし)。これらに比べて本研究での有病割合はかなり高いですが、1997年のヘモグロビンA1cを用いた糖尿病実態調査では40歳以上で男性12.4%、女性9.2%と本研究に近い数字が出ています。また本研究と同じ1993年に発表された福岡県久山町での調査結果でも年齢調整後の糖尿病有病割合は男性12.7%、女性8.4%と報告されており、本研究の結果は妥当なものであることがわかりました。
 日本人では男性の方が女性より糖尿病有病割合が高いのが一般的ですが、本研究では逆になっています。この原因は明らかではありませんが、その後行われた調査では年齢調整後の有病割合は1995〜1997年には男性8.7%、女性8.1%、2000〜2002年には男性12.4%、女性11.2%と男性の有病割合の方が高くなっています。


文献
Sekikawa A, Tominaga M, Takahashi K, Eguchi H, Igarashi M, Ohnuma H, Sugiyama K, Manaka H, Sasaki H, Fukuyama H, et al.
Prevalence of diabetes and impaired glucose tolerance in Funagata area, Japan.
Diabetes Care 1993;16:570-574.
Abstract(PubMed)

※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。

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