朝食で牛乳を飲むだけで、2型糖尿病のコントロールが改善する可能性があるという研究を、カナダのゲルフ大学とトロント大学の研究グループが発表した。朝食でタンパク質を豊富に含む牛乳を飲んだときと、水を飲んだときとを比較する試験を行った結果、牛乳は食後の血糖値の上昇を抑えることが判明した。
牛乳を飲むと食後の血糖上昇を抑えられる
朝食のメニューを工夫すると、1日を通じて血糖コントロールに有利に働き、2型糖尿病の管理が改善する可能性がある。研究グループは、朝食で高タンパク質の牛乳を飲んだ場合の血糖変動と、朝食後および昼食後の満足感について調べた。
研究は、カナダのゲルフ大学人間・機能性食品研究ユニットのダグラス ゴフ教授らがトロント大学と共同で行ったもので、詳細は科学誌「Journal of Dairy Science」に発表された。
朝食でシリアルとともにタンパク質を豊富に含む牛乳を飲んだときと、水を飲んだときとを比較する試験を行った結果、牛乳は食後の血糖値の上昇を抑えることが判明した。朝食でタンパク質を摂取すると「セカンドミール効果」を得られ、昼食以降の食欲も抑えられることも分かった。
「セカンドミール効果」とは、最初にとる食事(ファーストミール)が、次にとった食事(セカンドミール)の後の血糖値にも影響を及ぼすという現象のこと。朝食で糖質が少なく食物繊維の多い食品を選ぶと、食後高血糖が抑えられるだけでなく、昼食後も血糖値の上昇を抑える効果を得られるという理論だ。朝食のメニューが1日の血糖コントロールに影響すると考えられている。
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牛乳のタンパク質が炭水化物の吸収を遅くする
「2型糖尿病や肥満など、代謝性疾患は世界的に増加しています。糖尿病や肥満を改善するために食事をどのように改善するかという、効果的な戦略が求められています」と、ゴフ教授は言う。
研究グループが実施したランダム化比較試験には、平均年齢が23歳で、平均BMI(体格指数)が22の32人の男女が参加した。炭水化物を多く含むシリアルを食べるときに、高タンパク質の牛乳を摂取した場合と、水を摂取した場合を比較した。
牛乳に含まれるタンパク質は、「カゼイン」と、「ホエイプロテイン」(乳清タンパク質)の2種類に大別される。カゼインは体内への吸収がゆっくりで、乳清タンパク質は速く吸収される。
牛乳についての研究が進むにつれて、カゼインと乳清タンパク質は「機能性成分」であることが分かってきた。これらのタンパク質を摂取することで、炭水化物の吸収が遅くなる。食欲を促進するグレリンの分泌が抑えられ、食欲を抑えるホルモンの分泌が促進され、満腹感も得やすくなる。
さらに、乳清タンパク質には、インスリン分泌を刺激する消化管ホルモンであるGLP-1の産生を高める効果もあると考えられている。
心疾患や脳卒中などの危険性を下げる効果も
研究グループは、牛乳の乳清タンパク質を摂取すると、炭水化物を含むシリアルを食べても、朝食後だけでなく、昼食後も血糖値の上昇も抑えられる傾向があることを確かめた。乳清タンパク質を摂取すると、昼食前の血糖値にも影響が出ることが分かった。こうした効果は、低タンパク質でない、普通の牛乳で得られるという。
ただし、牛乳には飽和脂肪酸も含まれる。飽和脂肪酸は、悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪を増やし、動脈硬化の進行を促進する。また、牛乳には炭水化物も含まれる。
これについて、テキサス大学の研究グループが今年7月に、「牛乳やヨーグルトなどの乳製品は心疾患や脳卒中などの危険性を高めることはなく、逆に減らしています。これらの乳性品を摂取することで、脳卒中で死亡するリスクは42%低下します」という研究を発表した。
「牛乳やヨーグルトによってカルシウムやカリウムなどの栄養素も摂取でき、これらは炎症を抑える脂肪酸と同じような働きをし、骨粗鬆症の予防にも役立ちます」と、研究者は述べている。
もっとも実行しやすい食事改善
ゲルフ大学などの研究で参加者が飲んだ牛乳の量は250mL(コップ1杯)で、カロリーは約165kcal。「朝食に牛乳を加えることは、もっとも実行しやすい食事改善です」と、ゴフ教授は言う。
「朝食で牛乳を摂取すると、同時に摂取した炭水化物の吸収が遅くなり、血糖値の上昇を抑えられることを確認しました。2型糖尿病や肥満の人では、食後の血糖値が上昇しやすいことが知られています。栄養学の専門家は、そうした人にとって健康的な朝食を摂ることは重要だと指導しています。朝食に牛乳を加えることが勧められます」と、ゴフ教授はアドバイスしている。
Consuming milk at breakfast lowers blood glucose throughout the day(Elsevier 2018年8月20日)
Effect of milk protein intake and casein-to-whey ratio in breakfast meals on postprandial glucose, satiety ratings, and subsequent meal intake(Journal of Dairy Science 2018年8月19日)
New research could banish guilty feeling for consuming whole dairy products(テキサス大学 2018年7月11日)
[ Terahata ]