保健指導などで「お酒を飲む習慣のある人は、週に2日以上は肝臓を休める、いわゆる"休肝日"を設けた方が良い」と言われることが多い。アルコール性肝臓病を予防するために休肝日が効果的であることが、5万人以上を対象とした調査で明らかになった。
週に3~5日の「休肝日」を設けるのが効果的
アルコールを飲み過ぎると、まず「脂肪肝」という状態になる。この段階では自覚症状は乏しく、エコー検査で発見されることが多い。飲酒が原因の場合は断酒や節酒で脂肪肝を改善できる。つまりこの段階で気を付ければ、もとの健康な肝臓に戻れる。
しかし、脂肪肝を放置したまま、アルコールを飲み続けると、「アルコール性肝炎」という重症状態になり、やがて「肝硬変」に至る。これらは治療が困難で、ひどい場合は死亡することもある深刻な病気だ。
デンマークのコペンハーゲン大学病院などが行った、5万人以上の中高年を対象に行った調査で、アルコール性肝臓病を予防するために、週に3~5日の「休肝日」を設けるのが効果的だと判明した。この研究は欧州肝臓学会が発行する「ジャーナル オブ ヘパトロジー」に発表された。
お酒の飲み方がアルコール性肝臓病に影響
「休肝日を設けた方が良い」と言われるのは理由があるからだ。アルコール10gに相当する量(ビールなら500mL、日本酒なら1合)を肝臓で分解するのに、個人差はあるが平均5時間前後かかる。
睡眠中は肝臓がアルコールを代謝するの機能が落ちているので、飲んだ後にすぐ眠るとさらに時間を要する。お酒を飲んだ後、就寝している間も肝臓は働き続けている。肝臓を毎日連続して酷使すると障害が出やすくなる。
欧州では毎年およそ17万人がアルコール性肝硬変で死亡している。原因はもちろんアルコールだが、これまではアルコールの摂取量が問題とされてきた。しかし、今回の調査では、アルコールの飲み方も大きく影響することが明らかになった。
研究チームは、デンマークで1993~2011年に実施された「がん・食事・健康研究」に参加した50~64歳の男女5万5,917人にデータを解析した。その結果、アルコールをほとんどの毎日飲む人では、週に2~4回飲む人に比べ、アルコール性肝臓病の発症率が3.7倍に上昇することが明らかになった。
また、50歳代にアルコールを飲み過ぎた人のアルコール性肝臓病のリスクは7.5倍に上昇したが、20歳代に飲み過ぎてその後は節酒した人では1.7倍に抑えられていた。
症状がなくても検査を定期的に受けた方が良い
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、異常が起きていても自覚症状があらわれにくい。お酒を飲む人は、症状がなくても検査を定期的に受けた方が良い。
肝臓病を早期発見するために血液検査が行われる。検査項目としては「AST」(GOT)、「ALT」(GPT)、「γ-GTP」がある。それぞれ肝細胞に障害が発生すると血液中に漏れ出す酵素だ。これらの検査値が高い場合は、アルコールの飲み過ぎが原因で肝臓に異常が起きている可能性が高い。
アルコール性肝臓病は、男性に比べ女性では少ないと思われがちだが、女性は少ない飲酒量で肝障害が起こりやすい。コペンハーゲン大学病院の調査でも、飲酒量が多い女性では、やはり肝臓病の発症率が高い傾向があることが確かめられた。
「アルコール依存のある人では、一時的にはお酒をやめたり控えたりすることができるが、時間が経つともとの飲酒量に戻る例が多い。特に50歳を過ぎて飲酒量が増えしまい、禁酒や節酒の必要があるのに実行が難しいという人は専門家に相談した方が良い」と、研究者は注意を呼びかけている。
Daily drinking increases risk of alcoholic cirrhosis(コペンハーゲン大学病院 2015年1月26日)
[ Terahata ]