糖尿病のグループ療法は高齢の患者に対しても効果があるという研究が発表された。比較的若い患者を対象とした糖尿病のグループ療法は効果があることが知られるが、高齢の患者においても同等の治療効果があると、研究者は指摘している。
グループ療法は、10人以上のグループを対象として、参加するメンバーの各々が自分を語ることを通じて実践される心理療法のひとつ。同じ問題を抱える人たちや、同じような立場の人たちを集めて行われる。
グループ療法に参加した患者同士で、病気や悩み、自分の性格、考え方などを自由に話すことで、悩みを共有し、理解者が他にいることを認識することができる。患者が自分の殻から抜けだし、治療に意欲的になるなど、多くのプラス要素を引き出せると考えられている。
比較的若い患者を対象とした糖尿病のグループ療法は効果があることが、過去の研究で示されているが、グループ療法は高齢の患者でも便益をもたらすという研究が発表された。
「糖尿病は自己管理が大切な病気です。グループ療法が血糖コントロールに及ぼす影響は、年配の患者でも大きいことが分かりました」と、ジョスリン糖尿病センターのエリザベス ビバリー氏は話す。この研究は、米国糖尿病学会が発行する医学誌「Diabetes Care」に発表された。
研究には18〜75歳の合計222人の糖尿病患者が参加した。3分の1が1型糖尿病で、残りは2型糖尿病だった。全員が発症してから2年以上が経過し、HbA1cが7.5%以上で血糖コントロールが不良だった。うち151人は平均年齢が53歳でHbA1cの平均が9.0%、71人は平均年齢が67歳でHbA1cの平均が8.7%だった。
参加者をグループ療法に参加する群と、標準的な治療のみを行う群に分け比較した。グループ療法群では、参加者を3つのサブグループに分け、糖尿病の自己管理をテーマとしたグループ療法に参加してもらった。糖尿病治療への取り組みを、食事療法、運動療法、薬物療法のそれぞれの側面から見直してもらい、どうすればより良い治療を実現できるかを主体的に考えてもらった。グループセッションの合間には、患者自身に目標を毎日決め、達成するために何ができるかを考える訓練も行った。
対照群には、6週間に5回のグループセッションを受けてもらった。糖尿病療養指導士が糖尿病治療についての標準的な教育を行った。情報を求める患者には、医療スタッフが1対1で回答するようにした。
12ヵ月後、ベースラインと比較してグループ療法群ではHbA1cが0.72%低下し、標準治療群では0.65%低下した。HbA1cの低下は平均年齢53歳のグループと67歳のグループでもあまり変わらなかった。
グループ療法の実施後は、糖尿病の自己管理、毎日の血糖測定、うつ症状の程度、糖尿病療養と生活の質(QOL)関連、糖尿病に関わる悩み、自己管理に対するストレス、自己効力感の向上など、メンタル面での改善が多くみられた。
「高齢の患者を対象にグループ療法を行う場合は、個々の患者の治療をより慎重に行った上でないと、効果を得られにくいと当初は考えられていました。実際には、グループ療法は高齢の患者においても、若年の患者を対象とした場合と同等の治療成果をもたらすことが示されました」と、ビバリー氏は話す。
現状では、米国の公共的な医療保険では、グループ療法をカバーできないという課題もある。「糖尿病ケアの初期段階で療養指導士が介入し、グループ療法を含む高齢患者への効果的な治療を行うことは、明確な便益をもたらすでしょう」と、研究者は指摘している。
Do Older Adults Aged 60 to 75 Years Benefit From Diabetes Behavioral Interventions?(米国糖尿病学会 2013年1月11日)
[ Terahata ]