IFLニール・ドナランさんの来日講演
ニールさんは滞在中に、糖尿病患者さんを中心に旅行や国際交流などの活動をしているグループ「エンジョイ(EJ)ツアークラブ」が6月28日に開催した「14周年記念パーティー」で講演を行いました。
ニールさんはIFLの活動と、途上国や災害に遭った1型糖尿病患者さんを支援する活動について話しました。そのときの講演からご紹介します。
「糖尿病ケアへの取組は困難が伴いますが、すばらしい成果を得られます。その成果とは、命そのものです。」 (E. P. ジョスリン 1928年)途上国には、インスリンが不足していたり、十分な糖尿病の治療を受けられないために、早くに亡くなったり、血糖コントロールが難しいために早い段階で深刻な合併症に苦しむ患者さんがたくさんいます。IFlはそうした糖尿病患者さんを支援するために、国際的な活動を行っています。
“The effort of diabetes care is great, but the reward is also great, for the prize is life itself” E. P. Joslin 1928
また、地震や台風など自然災害に遭った国や地域の糖尿病患者さんのために、糖尿病ケアに必要な薬剤や医療資材を緊急に支援する活動を行っています。
1986年の設立以来、世界各地の団体とパートナーシップを結び、糖尿病患者さんを支援する活動を展開しています。日本の国際糖尿病支援基金からもご支援をいただいています。
左はIFLによって支援される1糖尿病患者さんたち。
右上はIFLのボードメンバー
右下はIFLを支援している団体。英国糖尿病協会、インスリンフォーライフ アメリカ支部、インスリンツムレーベン ドイツ支部、インスリンツムレーベン オーストリア支部など。
主要な寄付団体として、日本の国際糖尿病支援基金やDMハンズの会、ニュージーランド糖尿病協会など。
IFLはこの1年にインスリン約250リットル(2500-3000万単位)、血糖試験紙約40万枚、注射器約152万本、その他にも血糖測定器などの医療資材を支援しました。これらを金額に換算すると$120万米ドル(約1億3000万円)相当になります。
活動を開始したのは1986年です。これまで支援してきたインスリンは、全体で約1482リットル、血糖試験紙は58万枚に上ります。換算するとIFLの支援はおよそ411万米ドル(約4億5000万円)に相当します。
これまでにアフリカ、欧州、西太平洋、南東アジア、中央アメリカ、南アメリカ、カリブ、北アメリカなどの地域で支援活動を展開し、支援した国はボリビア、ウズベキスタン、ルワンダ、イスラエル、コンゴ共和国、カンボジア、エクアドル、ジンバブエ、モルディブ、フィリピンなど、世界70ヵ国に及びます。
IFLは自然災害などで被災した糖尿病患者さんのための緊急の支援活動も行ってきました。2005年に米国南部を襲ったハリケーン・カトリーナ、2005年のスマトラ沖大地震と津波被害のときにも国際的に呼びかけ、いち早く支援の手を差し伸べました。
支援を受ける者同士が助けあう心温まる出来事もありました。2007年にぺルー地震が起きたときに、IFLはオーストラリアからペルーまで支援物資を送りました。被災地に直接送ると通常は10日かかります。1日でも早く届けたかったので、ペルーの隣国エクアドルに協力を求め支援物資を緊急に送りました。おかげで予測より1週間ほど早く被災地に届けることができました。世界中にいるIFLの協力者は、この隣国同士の助けあいを知り感動しました。
送付したインスリン、注射器、血糖測定器、血糖試験紙などの医療資材は、現地の医療機関や医師、糖尿病協会などを通じて、必要とする糖尿病患者さんの治療に使われます。
配送の主体となるのは、糖尿病患者さんやその家族によるボランティア活動です。支援物資の輸送コストとして資金も必要となります。日本の国際糖尿病支援基金からの寄付は、輸送コストを賄ううえで大変に役にたっています。
IFLの活動は、世界中の糖尿病クリニック、糖尿病キャンプ、製薬企業などの支援や寄付により行われています。オーストリアでは、全国糖尿病供給機構(National Diabetes Supply Schem)にご協力いただいています。
ニュージーランドやオーストラリアから過去12ヵ月に、インスリン約200リットル、血糖試験紙約12万枚、注入器約6.6万本、注射針約5.5万本などをご支援いただきました。ドイツからはインスリン約4.6リットル、血糖試験紙約4万枚、注入器約3万本、血糖測定器913台などを、オーストリアからはインスリン約9.6リットル、血糖試験紙約1.6万枚、注入器約1.7万本、血糖測定器105台などをご支援いただきました。その他にも米オクラホマ糖尿病センターからの支援も増えています。
インスリン・フォー・ライフ(IFL)が支援した糖尿病患者さん
IFLの支援を受けた糖尿病患者さんから、多数のお礼をいただいています。支援した患者さんのごく一部をご紹介します。
日本の国際糖尿病支援基金よりいただいたご支援もこのなかに役立てられています。
IFLは、国際糖尿病連合(IDF)、欧州糖尿病学会(EASD)、米国糖尿病学会(ADA)の年次集会などでも積極的に広報活動を行っています。IFLの活動に対する認知と協力を、各国政府にも呼びかけています。
IFLの活動についてもっと詳しく知りになりたいときは、ホームページをご覧ください (IFLホームページ: www.insulinforlife.org)。
2008年08月