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2014年エクアドルの糖尿病サマーキャンプ報告



 南米エクアドルで小児糖尿病患者さんを支援するFundacion Vivir con Diabetes(FUVIDA)(エクアドル)では、7月31日から8月4日にかけて糖尿病患者のサマーキャンプを開催しました。

 オーストラリアで途上国の糖尿病患者さんを支援する、インスリン・フォー・ライフ(IFL)(オーストラリア)のニール・ドナラン氏より、2014年糖尿病サマーキャンプのレポートが届きましたので、ご紹介します。

 国際糖尿病支援基金は、この活動の趣旨に賛同し、インスリン・フォー・ライフ(IFL)を通じてFUVIDAを支援しています。

2014年FUVIDA糖尿病サマーキャンプの報告





Insulin for Life(IFL)オーストラリア
Neil Donelan
ニール・ドナラン氏


 南米エクアドルで糖尿病患者さんを支援するFundacion Vivir Con Diabetes(FUVIDA、代表:アラセリー・バスルト・カルデロン医師)では、糖尿病に関する治療や合併症予防などについて、適切な知識をもってもらうことを目的に、毎年糖尿病のサマーキャンプを開催しています。

 2014年のFUVIDA糖尿病サマーキャンプは、7月30日から8月3日に行われ、エクアドルのビンセスから約1.5?のところにある、パルケ・エル セニョール デ ロス カバージョスで開催しました。FUVIDA本部があるグアヤキル市からは北へ車で約2時間のところにあります。 ここでは過去に2度、2011年の3月と7月に糖尿病サマーキャンプを開催しています。

サマーキャンプでは

 今回のサマーキャンプでは、経済的に恵まれない家庭の3歳から20歳までの糖尿病の子供達70名と、医療従事者等31名、計101名が参加しました。糖尿病の子供達のうち、24名はそれぞれマナビ地区、西海岸のポルトビエホ地区とマンタ地区から、その他の子供達はグアヤキル市以外にオロ地区、リオス地区などから集まりました。



FUVIDA糖尿病サマーキャンプ「Doluces Amigos 2014」より

 子供達は年齢別に8つのグループに分けられ、4名の指導者が割り当てられました。
指導者には看護師、医師、研修を受けた糖尿病教育者(エデュケーター)と医学生から構成され、彼らは参加した子供達やその家族に糖尿病とどのように向き合い、そして自己管理や治療について考える役割を与えられました。

 サマーキャンプ中は、例年通り昼間は2時間毎、夜間帯は4時間毎に血糖値測定が行われました。今回もインスリン・フォー・ライフ(IFL)(オーストラリア)は、このキャンプ中に必要なインスリン、血糖値測定器、テストチップ、ランセット、ランセット付属品、ペン型注射器、シリンジ型注射器、保冷パック、グルコース錠剤を寄付しました。

 キャンプ中、子供たちは乗馬、サイクリング、水泳、Tシャツへの絵付け、散歩やビンセスへの遠足などを楽しみました。
この糖尿病サマーキャンプによって、幅広い年代の人たちとの良い人間関係や、人との繋がりを築くことを学びました。また、普段年長の子供達と接する機会が少なく、外国人と接する機会のない年少の子供達は、コロンビア、アメリカ、台湾、チリ、ブラジル、オーストラリアから来た参加者と友情や絆を深める事が出来ました。

 糖尿病の子供達を持つ親御さん達も、糖尿病でも栄養素の大切さと重要性、糖尿病と向き合う生活の中で合併症もなく健康的な生活を維持する生活環境の大切さを学びました。

ヘンリー ロドリゲス医師も娘のエマさんと一緒に今年もこのサマーキャンプに参加しました。

ヘンリー ロドリゲス 医学博士
小児科教授 南フロリダ医科大学 臨床部長
南フロリダ大学糖尿病センターTriaNet Pathway to Prevention Study(予防研究)

国際糖尿病連合(IDF)のライフ・フォー・チャイルドは、ヘンリー医師の糖尿病教育を支援し、キャンプで継続的な治療に参加しています。
サマーキャンプの中で、ヘンリー医師が糖尿病の合併症の治療及び予防に関する(トレーニング方法、監視方法、医学用語等)のプレゼンテーションを行いました。

 アラセリー代表は、ビンセス地域の医師、医療保険従事者、看護師、糖尿病エデュケーターを今回のサマーキャンプに招待し、糖尿病の治療、予防や糖尿病に対する啓発のトレーニングセッションが行われました。



指導者の教育

 FUVIDAとIFLが考える、過去のキャンプで重要で重大なメリットは、指導者(医療従事者)への教育であると考えています。
本キャンプの主催者であり、自身も薬剤師としての訓練を受けているアラセリー代表は、グアヤキル医科大学の学長に糖尿病医療に関心を持つ学生なら誰でもキャンプに招待し、キャンプを経験し、糖尿病治療に関する真摯な研修プログラムを提供したいと申し出た所、学長から学生たちがキャンプ参加することへの同意が得られました。

 アラセリー代表は、糖尿病サマーキャンプが行われる前に、医学生を対象に、糖尿病に関するワークショップを何回も行いました。
それらは全てこの活動に賛同して頂いた多くのスポンサーからの資金によって行う事が出来ました。
アラセリー代表が、この糖尿病サマーキャンプで常に行っている事は、学生に糖尿病研究に向けて自身のキャリアに磨きを掛ける事は、エクアドルにおける糖尿病治療と教育の未来(希望)であると言って励ます事です。

 アラセリー代表曰く、このキャンプがエクアドル国内の糖尿病患者さんに対する貢献度はこの国にとっても大変貴重なものです。何故ならエクアドルでは糖尿病による死亡率が非常に高い状況でありながら、総人口1,400万人に対し、専門的な知識やトレーニングを受けた内分泌専門医はエクアドル全土で50名程しかいないのです。

糖尿病サマーキャンプ後

 8月3日日曜日、少人数の子供達で、ポルトビエホ在住で、今回のサマーキャンプに参加出来なかった糖尿病の子供達を訪問する事にしました。私を含め、台湾糖尿病エデュケーター協会のクリスティーン・シュウとクワイン・リン、ブラジル人のカミラ・コスタ、3人のエクアドル人のジュアン・キャロル、ダーウィンとミシェルが糖尿病の子供を持つ4つの家族を尋ねました。



ダウン症と1型糖尿病患者のダリオさん宅を訪問しました。
エクアドルのダウン症と糖尿病患者のダリオさん

 今回訪問した4家族の方々は、本当は自分の子供達を糖尿病サマーキャンプに参加させてあげたかったのです。なぜなら、サマーキャンプでは、糖尿病の子供達にとって種類が豊富で、健康に良い食事が提供され、そのような食事は、経済的事情で家では食べることができないからです。
また、このサマーキャンプでは、糖尿病の子供達が安心して学べる環境が提供され、糖尿病の正しい対処方法を体験出来ますが、多くの家族は、彼らの子供達がキャンプに参加する為のお金を払う余裕がありません。だからこそ、スポンサーシップが重要なのです。

IFLから寄付された医薬品等の物資はFUVIDAを通じて、子供達がキャンプから家に戻るときに配られます。十分なインスリンや糖尿病治療に必要な物資は、経済的事情でインスリン等を買うことができない親御さんたちにとって、大きな安心となるのです。

> FUVIDAでは、チャリティーの一環として、2015年のオリジナルカレンダーを製作しました。このカレンダーの売り上げは全て、FUVIDAの活動費や現地の糖尿病患者さんへ支援としてあてられます。

糖尿病は未だ死亡原因の一つ

 エクアドルでは、糖尿病は予防が可能な疾患でありながら、未だに死亡原因第1位のままとなっています。
また、エクアドル国内では、政府が公的資金を投入する形での糖尿病教育システムが存在しません。
何百人もの糖尿病患者が様々な合併症で死亡している原因として、糖尿病に関する専門的知識が全く無かったり、糖尿病の問題点について、何もトレーニングを受けていない医師、看護師、医療従事者や患者が存在するからです。しかし、この問題に対して医療界やエクアドル政府に対して、この現状を訴え続けてきましたが、それはまだ個人の問題として扱われています。

 そのため、FUVIDAが政府からの支援が無い状態で、エクアドルの糖尿病の教育訓練や患者さん達の命を救ってきました。
アラセリー代表は、彼らが糖尿病について出来るだけ多くを学べる環境作りと、参加者が糖尿病に関して、できるだけ多くのことを学ぶことができ、そして糖尿病患者を支援する意思のある人たちに、彼らが学んだ知識が伝えていくとこを願って活動しています。

 国際糖尿病連合(IDF)で制作されたスペイン語のDVDやISPAD International Society for Paediatric and Adolescent Diabetes(ISPAD)、NGO、IDFのチャイルド・プログラム、日本の国際糖尿病支援基金、メドトロニックやロシュといった製薬企業、エクアドルの地元企業のシエロ社など、多数のボランティアが、エクアドル国内からも糖尿病を持つ親御さんたちの支援を得ており、これらの支援がエクアドルの糖尿病患者さんの命を救っているのです。

糖尿病教育の急務

 これまで、糖尿病教育に関する問題を改善すべくエクアドル政府に働きかけたことがあります。2011年4月、私はラファエル・コレアエクアドル大統領閣下に手紙を書き、糖尿病教育問題や、それに付随する別の問題を議論する場を設けて欲しいと懇願しました。それに対しラファエル・コレアエクアドル大統領閣下は、保健省(日本でいう、厚生労働省)で、この問題を取り上げ、会議を設定したと回答して来ましたが、殆ど取り上げられることは無いまま今に至っている状態です。

ここ12か月間の間、IFLがエクアドルにインスリン等の支援物資を送付するにあたって、抱えている問題があります。エクアドルの税関と保健省の対応です。 それを知ったエクアドル・グアヤキル市のThe La Puntillaロータリークラブ・メンバーがエクアドル政府に働きかけて、その問題を解決してくれているところです。
上手くいけば2014年9月末までには、エクアドルへインスリンを出荷する事が容易になるでしょう。

謝辞

以下の方々に心より深謝致します。
・アラセリー代表と彼女のボランティア・チームのザビエルさん、アンドレアさん
・FUVIDAのロベルト・サンチェス医師
・今回のキャンプで写真を担当されたロクサーナさんとそのご主人
・チリのペドロ医師、マカレナ医師、フランコ医師
・ブラジルのカミラ・コスタさん
・コロンビアのソフィア医師
・エクアドルの地元企業・シエロ社クレオパトラさん
・クリスティーン・シュウさんとクアンニー・リンさん(台湾糖尿病エデュケーター)
・国際糖尿病支援基金(日本)
・ジェリー・ゴアさん(イギリス人の1型糖尿病患者、登山家・冒険家、この糖尿病サマーキャンプの設立者の1人)
・ヘンリー・ロドリゲス教授(アメリカ、小児科医)と娘のエマさん
・IDF Life-for Childプログラムのリンさん、キャロルさん
・糖尿病の教材提供をして頂いたメドトロニック・オーストラリアの皆さん
・ハイディ・シュミット・シュミーデバッハ (インスリン・ツム・レーベンドイツ、糖尿病治療に必要な物資の運搬費用、スポンサー支援)

これまで世界中の命を救う為の私の活動を支え、自らの時間を割き、資金や労力を注いで下さった全ての方々に深謝いたします。

敬具

ニール・ドナラン
インスリン・フォー・ライフ(IFL)オーストラリア

翻訳協力:山口様

【English】
Report of DULCES AMIGOS 2014/Neil Donelan
http://www.dm-net.co.jp/idaf/fuvida2014/fuvida2014.pdf


●関連サイト
国際糖尿病支援基金
インスリン・フォー・ライフ(IFL)(オーストラリア)
Fundacion Vivir con Diabetes(FUVIDA)(エクアドル)
2014年エクアドル糖尿病サマーキャンプへのご支援をお願いします。

 国際糖尿病支援基金は、インスリン・フォー・ライフ(IFL)オーストラリアを通じて、2008年よりFUVIDAの活動を支援しています。

 FUVIDAの糖尿病サマーキャンプ活動にご賛同いただき、御参加いただける方は、下記口座(郵便局)までお振込み頂きますようお願い申し上げます。

 御協力頂きました方は、支援者としてこのホームページ上の「支援者名」のコーナーでお名前を発表させて頂きますが、本名での発表をご希望でない方は、振替用紙(郵便局)の通信欄にご希望のお名前をご記入ください。

振込口座(郵便局):
口座番号:00160−3−82542
加入者名:国際糖尿病支援基金口
※通信欄へ「FUVIDAサマーキャンプ支援」とお書き頂きますようお願い致します。

2014年11月
国際糖尿病支援基金
  • これまでに寄せられた寄付金
    2,012万9,888円 
  • これまでに実行した支援金
    1,951万7,033円 

(2024年12月現在)

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