埼玉県飯能市は、市民の野菜の摂取量を増やすため、関係機関や企業などの団体との連携・協働により、「野菜プロジェクト」を開始し、健康な地域環境づくりに取り組んでいる。「野菜摂取量日本一のまち」を目指しているという。
野菜を3倍食べて、健康寿命を延ばす
埼玉県飯能市が平成28年に実施した「健康づくり市民意識調査」によると、市民の野菜摂取量の平均は1人に199gで、とくに20~50歳代の働き盛り世代で野菜摂取量が189gと少ない。国が定めた1日の必要量である350gに満たない市民が8割以上に上る。
その結果、BMI(体格指数)が25以上の肥満の割合は平成28年には17.9%に増え、40~50歳代の男性では35.6%に上る。2型糖尿病の有病率も増えている。
「片手1杯に載る量が100g程度であり、1日あたり小鉢5~6皿分を摂取すれば350g相当となります。市民の皆さまの野菜摂取量を現在の3倍に増やすことで、1人あたり380gを超え、野菜摂取量日本一のまちとなります」と、市の産業環境部産業振興課では話している。
ライフステージによって食育活動は変わる
キャンペーンの一環として、1食あたり130g以上の野菜を使用した「野菜3倍メニュー」を設定するレストランを「野菜3倍レストラン」として登録しPRしている。「野菜3倍メニュー」を注文した人に、キッチン用品などを進呈する「野菜3倍レストラン」キャンペーンも、2月3日まで市内の21店舗で実施している。
地域で栽培された野菜を生かした創作メニューを募集し、地域の代表メニューを選定するための地域野菜グルメコンテストも開催した。
また、家庭・保育所・幼稚園・小中学校などで、食育キャンペーンを実施。「主食・主菜・副菜」という言葉やその意味を知っている市民の割合を、20~30歳代の男性で47.4%、女性で71.3%に引き上げた実績がある。食事で「主食・主菜・副菜」をほぼ毎日揃えている市民の割合は39.5%に上る。
市が2018年から実施している「第2次飯能市健康のまちづくり計画」では、市民への重点的な働きがけをライフステージによって分けている。幼少期には「野菜を食事に取り入れる習慣の確立」「野菜摂取に関する健康教育の充実」に力を入れ、成人期や更年期には「市民農園、家庭菜園などにおける自産自消、地産自消の促進」「野菜摂取量の増加に取り組む市のPR」にも力を入れる。
野菜に親しんでもらう制度を開始 「農のある暮らし」を支援
飯能市へは東京都心から1時間足らず。緑地が多く、農業は市の産業のひとつで野菜生産量も多い。
市では「農のある暮らし 飯能住まい」という制度を2016年度からスタート。市外からの希望者を助成し、良質でゆとりのある住まいを建てて移り住んでもらい、家庭菜園や市民農園などの「農」に親しむ暮らしをおくってもらうというもの。
「農のある暮らし」を支援するために、市は制度の利用者に対してさまざまな対策をしている。農業体験参加型、家庭菜園型、農園利用型、農地利用型の4つのプログラムを用意。野菜に親しんでもらうため、専門家や農業指導者の指導のもと、耕作放棄地などを有効活用するなど、家庭菜園での野菜づくりも推進している。
「健康のまちづくり計画」は、生産量を増やした野菜を、今度は市民の健康にも役立ててもらうというもので、「自産自消、地産自消」を重視している。
体を活発に使う野菜作りは、運動不足の解消にもつながり、一石二鳥だと言える。また、「飯能住まい」は、日本の地方で急速に進んでいる過疎化・高齢化への対策としても役立っている。
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[ Terahata ]