魚を多く食べると、うつ病の発症リスクが低下するという研究結果を、中国の青島大学の研究チームが発表した。
魚を食べるとうつ病リスクが17%低下
世界保健機関(WHO)は、世界でうつ病で苦しんでいる人の数は、人口の約5%に当たる3億5,000万人以上に上るという推計を発表した。
うつ病の発症に食事スタイルが影響していると考えられている。「野菜や果物を多く摂取し、全粒粉や魚を食べることが、うつ病の減少につながることが最近の研究で示されていますが、どのような食品を組み合わせると予防効果が高まるか、まだ判ってません」と、青島大学のファン リー氏は言う。
研究チームは、2001~2014年に発表された16件の研究を解析した。研究のうち10件はコホート研究で、残りは横断的研究で、合計15万278人が対象となった。
研究のうち10件は欧州で、7件は北米で、残りはアジア、オセアニア、南米において実施されたものだ。
全てのデータを解析した結果、魚をもっとも多く食べた人はもっとも少なく食べた人に比べて、うつ病の発症リスクが17%低下することが判明した。さらに性別にみると、男性ではうつ病リスクが20%低下し、女性では16%低下することが分かった。
この傾向は欧州の研究のみで確認された。欧州以外の研究では、そもそも魚を多く摂取されておらず、比較するのが難しいという。
魚の脂が脳に良い変化をもたらす
アジ・イワシ・サンマ・サバなどの青魚には、動脈硬化を抑制する作用などがあるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などのオメガ3脂肪酸が豊富に含まれる。
オメガ3脂肪酸を摂取すると、脳細胞皮膜の構造が変化し、うつ病に対し予防的に働くことが過去の研究で確かめられている。
また、魚に含まれる脂肪をとると、うつ病の発症に関係しているとみられる神経伝達物質であるドーパミンとセロトニンの活動に変化が起こることも分かっている。
さらには、魚には高品質のタンパク質、ビタミン、ミネラルが含まれ、どれもうつ病のリスクを下げるのに効果的だと研究チームは指摘している。
「魚をよく食べる人は、そうでない人に比べ健康的である傾向があります。今回の研究では、魚を食べることで栄養状態が改善し、うつ病の予防にも効果があることが強く示唆されました」と、リー氏は述べている
解析したのは観察研究だったため、魚の摂取とうつ病の発症リスクの因果関係には不明な点も多い。健康に良い魚を食べることを奨励して食事スタイルが変わると、うつ病を減らすことができるかを、今後の介入研究で確かめる必要があるという。
加えて解析した研究では、どの種類の魚を食べると効果的であるかは調べられていなかった。うつ病の予防に役立つ魚のタイプを今後の研究で調べる必要があるという。
Fish consumption and risk of depression: a meta-analysis(Journal of Epidemiology & Community Health 2015年9月10日)
[ Terahata ]