第51回欧州糖尿病学会(EASD 2015)
血糖コントロールの不良な患者は、良好な患者に比べ、認知症を発症するリスクが50%上昇することが、スウェーデンで実施された大規模コホート研究で明らかになった。詳細はストックホルムで9月に開催された第51回欧州糖尿病学会(EASD 2015)で発表された。
血糖コントロールが不良だと認知症リスクが50%上昇
糖尿病患者は認知症を発症するリスクが高いことが多くの研究で示されているが、血糖コントロールの指標であるHbA1c値と認知症リスクの関連を調べた大規模コホート研究は少ない。
認知症は多くの場合、時間をかけて進行していく。国際アルツハイマー病協会によると、世界の約4,700万人が記憶障害が徐々に進行するアルツハイマー病を発症している。
スウェーデン国立糖尿病レジスターのエイデン ロウスハニ氏らは、2004〜12年に国立糖尿病レジストリーに登録された2型糖尿病患者約35万人(平均年齢67歳、糖尿病の診断時に認知症既往なし)を追跡調査した。
追跡期間中に1万1,035人(3.2%)が認知症と診断され入院した。研究チームは、年齢、性、糖尿病の罹病期間、婚姻状況、所得、教育、喫煙、収縮期血圧、BMI、腎機能(eGFR)、使用薬剤(スタチン、糖尿病治療薬、降圧薬)、尿蛋白(顕性アルブミン尿および微量アルブミン尿)、心房細動、脳卒中などで調整して解析した。
その結果、HbA1cが10.5%以上の患者では、HbA1c6.5%以下の患者に比べて認知症リスクが50%高いことが判明した。また、脳卒中の既往がある患者では、既往がない患者に比べて認知症リスクが40%高かった。
「比較的若年の2型糖尿病患者において、HbA1cが不良であると認知症を発症するリスクが上昇することが示されました。このことは、血糖コントロールを改善することによって、認知症リスクを低減できる可能性を示すものです」と、ロウスハニ氏は述べている。
「2型糖尿病の人は、血糖コントロールを改善するために、食事療法や運動療法に取り組むべきです。患者がアルツハイマー病などの認知症の兆候を示している場合でも、医師はインスリン療法などの治療を積極的に推し進める必要があります」と、ロウスハニ氏は指摘している。
Study suggests improving blood sugar control could help prevent dementia in patients with type 2 diabetes(Diabetologia 2015年9月14日)
[ Terahata ]