欧米の運動ガイドラインでは「1日30分の運動」を毎日行うことが勧められているが、それほど運動量が多くなくとも効果を得られるようだ。週に2〜3回のウォーキングなどの適度な運動を続ければ、心臓発作や脳卒中などのリスクを低減することが明らかになった。
週2〜3回の運動でも心臓病や脳卒中の予防効果を得られる
発汗したり心拍数が増加するような適度な強度の運動を1週間に2〜3回行っている女性は、ほとんど運動をしない女性と比べ、心臓病、脳卒中、血栓症の発症リスクが低下することが、英国のオックスフォード大学の研究で明らかになった。
「運動不足が心臓病、脳卒中、血栓症の危険因子になることは明らかです。これらの病気を予防するために、運動を続けることが勧められていますが、毎日行うのは困難と感じている人も多くいます。しかし、今回の研究では週に2〜3回の適度な運動でも効果を得られることが分かりました」と、オックスフォード大学のミランダ アームストロング氏は言う。
今回の研究は、110万人の女性が参加している大規模研究「Million Women Study」のデータを解析したもので、参加者の平均年齢は56歳だった。
研究に参加した女性は1996〜2001年の登録時に、がん、心臓病や脳卒中、血栓症のような心臓血管疾患、糖尿病などを発症していなかった。
参加者は3年間隔で運動の時間や頻度などを報告した。運動には、ウォーキング、ガーデニング、サイクリング、家事労働などが含まれた。
平均9年間の追跡期間に、4万9,113人が心筋梗塞や狭心症などの心臓血管疾患を発症し、1万7,822人が脳卒中などの脳血管疾患を発症し、1万4,550人が静脈血栓塞栓性を発症した。
ウォーキングの時間をあと10分増やす工夫を
解析した結果、週に2〜3回の適度な運動をしていた女性は、週に2回未満か全く運動をしない不活発な女性に比べ、これらの病気の発症リスクが約20%低下したことが判明した。
驚くことに、週に4〜6回の運動をしていた女性では、2〜3回の運動をしていた女性に比べ、心臓血管疾患などの発症リスクはそれほど低下しなかった。
「ランニングを始めたり、スポーツジムに通うといった本格的なスポーツを行わなくとも、ウォーキングの歩数を増やす程度の運動を続けることで、心臓病や脳卒中を予防するのに効果的であることが示されました」と、英国保健基金(BHF)のディレン マドック氏は言う。
心拍数が適度に上昇するくらいのウォーキングなどの運動を週に2回行うだけでも効果を得られるので、「運動をする習慣のない人は、できる範囲内で良いので、とにかく運動をはじめるべきだ」と、マドック氏は指摘している。
BHFでは、毎日のウォーキングの時間を10分増やすキャンペーンを実施しており、多くの人が実践しているという。
「運動を行うことで得られる恩恵は、心臓病の予防だけではありません。運動量を少し増やしただけでも、乳がん、大腸がん、子宮がんの発症リスクを減らせることが分かっています」と、Cancer Research UKのトム スタンフェルト氏は言う
「駅やバス停をひとつ手前で降り歩く、通勤に車を使わずになるべく歩くようにする、駐車場はなるべく遠い場所を選ぶといった工夫をすることで、1日の歩数を増やせる」と強調している。
この研究は、英国心臓財団や英国医学研究審議会、Cancer Research UKからの資金提供を受けて行われ、医学誌「Circulation」に発表された。
Exercise 2-3 times a week reduces heart disease risk in women says new study(オックスフォード大学 2015年2月17日)
Frequent Physical Activity May Not Reduce Vascular Disease Risk as Much as Moderate Activity(Circulation 2015年2月16日)
[ Terahata ]