食べ過ぎや運動不足などが原因で起こる「脂肪肝」は、活発なウォーキングなどの運動を1日に30分以上続けると症状が改善することが、筑波大学の研究で明らかになった。
週250分以上の運動が脂肪肝を改善
アルコールを飲まない人でも、運動不足や肥満の状態が続くと、肝臓に余剰な脂肪が蓄積し、脂肪肝を発症しやすくなる。脂肪肝の国内の患者数は約1,000万人で、肥満の人のほぼ3割に当たる。
筑波大学医学医療系の正田純一教授(消化器内科)らは、食事・運動療法に取り組んでいる31~67歳の肥満の男性169人を対象に、活動量計を使い運動の記録をとり、脂肪肝がどれだけ改善するかを調べた。
その結果、運動量が増えるほど内臓脂肪が減ることが明らかになった。ウォーキングなどの有酸素運動に3ヵ月間続けたグループでは、脂肪肝が改善していた。3~6メッツ以上の「中高強度の運動」を週に250分以上行うと、効果的な運動量になるという。
メッツは身体活動の強度を表す単位で、運動によるエネルギー消費量が安静時の何倍にあたるかを示す。「3メッツ」は時速4km程度のウォーキングに、「6メッツ」は時速7km程度のウォーキング、ウォーキングとジョギングの組合せ、水泳などにそれぞれ相当する。
週150分未満、週150分以上250分未満の運動を続けている人では、改善効果を十分に得られなかった。「脂肪肝を改善するために、活発な運動を週に250分以上行う必要がある」と、正田教授は指摘している。
運動を続ければ体は変わる「やせなくても効果あり」
肝臓などにたまった脂肪は遊離脂肪酸として放出され、運動のための直接的なエネルギー源になる。1週間に250分以上、1日に換算して30分以上の運動を続けると、肝臓にたまった脂肪が減りやすくなる。
遊離脂肪酸が使われるのは、運動を開始して10分後くらいからなので、脂肪を燃焼させるには、運動をある程度の時間続ける必要があるという。
また研究では、運動を続けることで、善玉の「HDLコレステロール」と「アディポネクチン」が増加することが明らかになった。
アディポネクチンは、脂肪細胞が分泌する生理活性物質「アディポサイトカイン」の一種で、動脈硬化を防いだり、血糖を下げるインスリンの働きを高める作用のある善玉物質として注目されている。アディポネクチンの分泌は、運動を続けることで改善していた。
さらに、細胞を傷つけ炎症を引き起こす「酸化ストレス」は、糖尿病や認知症、心臓病、がんなどの病気の原因になる。運動を続けることで、酸化ストレスから体を守る仕組みが促されることが判明した。
血液の遺伝子解析でも、運動により肝臓の脂肪蓄積を抑える働きが活発になっていることが分かったという。
運動を続けていても体重が減らないという人でも、脂肪肝は改善していた。「ウォーキングのなどの運動は1日30分以上行うと効果的であることが確かめられました。やせなくても効果はあるので、あきらめずに運動を根気良く続けてほしい」と、正田教授は述べている。
筑波大学医学医療系
[ Terahata ]