日本人の心疾患の発症がアメリカ人や日系アメリカ人に比べ少ないのは、魚をよく食べているからだとする研究成果が発表された。
魚をよく食べる日本人はオメガ3脂肪酸の血中濃度が高い
この研究は、魚介類に含まれるオメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)とアテローム性動脈硬化症の発症の関連を調べるために、米ピッツバーグ大学(ペンシルベニア州)の関川暁・公衆衛生大学院助教授らが、米国立保健研究所(NIH)による資金提供を受け行ったもので、英国心臓血管学会が発行する医学誌「Heart」3月6日号に発表された。
日本で生活する日本人は、米国人に比べ魚類をよく食べており、オメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)の摂取量が多く、冠動脈にカルシウムが沈着する「冠動脈石灰化」のリスクが低くことが明らかになった。冠状動脈石灰化は心疾患の予想因子となる。
研究は、米国立保健研究所(NIH)による資金提供を受け、40〜49歳の日本人214人と、ハワイとフィラデルフィアに在住している米国白人152人を対象に2002〜2006年に行われた。心疾患を評価するために、心臓の動脈の冠状動脈の石灰化を、CTスキャナーによるコンピュータ断層撮影で調べ、動脈硬化に関連の深いアテローム性動脈硬化症を評価した。
その結果、日本人は、冠動脈石灰化と頸動脈の肥厚が有意に少なく、アテローム性動脈硬化症が少ないことがあきらかになった。米国人は日本人に比べ、冠動脈石灰化の頻度が3倍高かった。喫煙、コレステロール値、アルコール摂取、糖尿病、高血圧症などの罹病率などの影響を取り除いて調整しても、この傾向は明らかだった。
「魚類に含まれる油には、心疾患や糖尿病を予防する効果がある。日本人では米国人に比べ、心疾患の発症が少ないのは、日本人が魚をよく食べていることが影響している。魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸が炎症を抑制し、プラーク形成を遅くしている可能性がある」と、関川氏は説明する。
魚をよく食べる日本人では、糖尿病の発症率も抑えられる傾向がみられた。魚類を摂取することで心疾患や2型糖尿病の発症率が低下することは、過去の研究でも確かめられている。日本のJPHC研究では、小・中型魚(アジ、イワシ、サンマ、サバ)や脂の多い魚(サケ、マス、アジ、イワシ、サンマ、サバ、ウナギ)をよく食べている人では、2型糖尿病の発症率が低下することが判明した。小・中型魚をよく食べている人では2型糖尿病の発症率が最大で32%、脂の多い魚をよく食べる人では同21%、それぞれ低下することが示された。
血液検査では総脂肪量とともに、魚に豊富に含まれる脂肪酸(オメガ3脂肪酸)の血中濃度を測定した。総脂肪量は3つのグループで差がなかったが、日本で生活する日本人は魚介類からのオメガ3脂肪酸のレベルが、米国白人よりも100%高かった。
日本に在住している日本人の魚類の平均摂取量は1日に約100gで、米国心臓学会の基準では1.5サービングに相当する。一方、米国人は平均して1日に7〜13gの魚を食べ、週に1サービングを摂取している。
研究者らは、日本人の心疾患のリスクが低いのは遺伝因子では説明できないことで、魚の摂取が多いことに関連していると結論している。EPAやDHAといった二重結合をたくさんもつオメガ3脂肪酸には、血小板凝集能の阻害、血液の粘稠度を下げるなどのはたらきがある。これが、魚をよく食べると虚血性心疾患を予防できる理由のひとつと考えられている。
High Consumption of Fish Oil May Benefit Cardiovascular Health, Pitt Public Health Finds(ピッツバーグ大学 2014年3月4日)
[ Terahata ]