糖尿病を予防・改善するための運動は、ウォーキングや水泳などの有酸素運動が代表的だが、ヨガやストレッチなどを交えた「スロートレーニング」でも効果を得られる。女性が運動に取り組むと、2型糖尿病の発症を最大で63%抑えられるという研究が発表された。
スロートレーニングで筋力を増強
この研究は、ハーバード公衆衛生大学院などの研究チームによるもので、米国で行われている大規模研究「看護師の健康に関する研究(NHS)」と「看護師の健康に関する研究II(NHSII)」で得られたデータを解析した。
36~81歳の女性9万9,316名を対象に、「有酸素運動」、「筋力トレーニング」、「スロートレーニング」に取り組んだ時間と、糖尿病の発症との関連を調査した。結果は「PLOS Medicine」に1月14日付けで発表された。
運動にはウォーキングや水泳などの「有酸素運動」と、重いバーベルを上げ下げして筋力を鍛える「筋力トレーニング」があり、これらを組み合わせて行うと、2型糖尿病の予防効果を得られ、糖尿病患者では血糖値コントロールが改善することが知られている。
実際には、筋肉に軽い負荷をかけて行う「スロートレーニング」だけでも、糖尿病の予防効果を期待できることが判明した。可能であればスロートレーニングを毎日続けると効果が高まるという。
スロートレーニングとは、筋肉の発揮張力を維持しながらゆっくりと行う運動のこと。運動をしている間、ずっと軽い負荷で筋肉の緊張を保つことにより、筋肉量が増え、筋力を増強することができる。
約10万人の女性を8年間追跡して調査
研究では、約8年の追跡期間中に、3,491人の女性が新たに糖尿病の診断を受けた。筋力トレーニングに取り組んだ女性の割合は、NHSでは19%、NHSIIでは33%に上った。一方、スロートレーニングを行った女性の割合は、NHSでは28%、NHSIIでは38%に上った。
データを解析した結果、筋力トレーニングとスロートレーニングは、ともに独立して2型糖尿病の発症リスクの低下に関係していることが明らかになった。
もっとも糖尿病の発症の少なかったのは、週150分以上の有酸素運動を行い、加えて週60分以上の筋力トレーニングをしていた女性で、ふだん運動をしない女性に比べて発症リスクは平均で70%近く低下していた。
糖尿病の発症リスクは、筋力トレーニングのみを行っていた女性では40%低下し、スロートレーニングのみを行っていた女性では20~30%低下していた。いずれの運動も、1週間の運動時間の合計が長いほど、糖尿病の予防効果が強まることも分かった。
「運動に筋力トレーニングを取り入れると、糖尿病を予防する効果を得られることが分かりました。運動ガイドラインにある通り、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて、週に150分の運動を行うのが理想です」と、ハーバード公衆衛生大学院のアンダース グロントヴェト氏はアドバイスしている。
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スロートレーニングはいつでもどこでも行える
ガイドライン通り運動をするのが難しいという女性は、ヨガやストレッチなどを交えたスロートレーニングから始めても効果的だという。余裕が出てきたら、運動の強度や時間を高めていくと、無理なく体力を高めることができる。
本来、筋肉を鍛えるためには、重いものを持ち上げたり押したりする強い力が必要となるが、スロートレーニングは、軽い力でゆっくり動かし、筋肉の張力を維持し鍛える運動法だ。
スロートレーニングではいろいろな動作方法が提唱されているが、数秒かけて上げ下げを繰り返す動作が一般的だ。分かりやすいイメージとしては、何もないところに椅子に座っている姿勢をとって維持する「スクワット運動」がある。
スクワット運動では、2種類の動作で構成される。▽呼吸をしながら、両足を肩幅程度に軽く開いてまっすぐ立ち、頭の後ろで手を組み、しゃがみこんでお尻を浮かせ、1秒止める。▽ひざを伸ばしきる手前までゆっくり立ち上がり、もとの姿勢にもどる。このトレーニング動作を繰り返す。
なお、グロントヴェト氏は男性を対象に、筋力トレーニングと糖尿病リスクについての調査結果を2012年に発表している。
米国人男性3万2,002人を対象に検討した結果、筋力トレーニングのみでも2型糖尿病になるリスクが減少することが判明した。男性が週150分以上の筋トレをしていた場合、糖尿病発症リスクは34%減少、有酸素運動を組み合わせた場合はさらに効果が顕著で、59%減少した。
Muscle training linked with lowered risk of type 2 diabetes(ハーバード公衆衛生大学院 2014年1月15日)
Muscle-Strengthening and Conditioning Activities and Risk of Type 2 Diabetes: A Prospective Study in Two Cohorts of US Women(PLOS Medicine 2014年1月14日)
[ Terahata ]