座ったまま過ごす時間が長い女性は、筋力が低下し、脳卒中や心臓病などによる死亡リスクが上昇するという研究が発表された。研究者は「1日の中で体を動かす時間を少しでも多くつくることが大切」と注意を呼びかけている。
座ったまま過ごす時間が長い女性は、心臓病の死亡率が27%上昇
この研究は、女性の健康増進の方策をさぐる目的で、米国立衛生研究所(NIH)などが1991年に開始した大規模研究「女性の健康イニシアチブ」(Women's Health Initiative)の一環として行われた。調査は、閉経後の50〜79歳の米国人女性9万2,234人を対象に行われた。
座ったまま過ごす時間が長いと、死亡率にどれだけ影響があらわれるかを調べたところ、1日に「11時間を超える」女性では、「4時間未満」で活動的な女性に比べ、全ての原因による総死亡率が12%上昇していた。死因別に比較したところ、脳卒中などの脳血管疾患(CVD)は13%、心筋梗塞などの冠動脈疾患(CHD)は27%、がんは21%、それぞれ死亡率が高くなっていた。
調査前に、座ったまま過ごす時間が長くても、1日のどこかで運動をする時間をつくり活動的に過ごせば、死亡リスクを低減できると考えられていた。しかし実際には、運動をしている人でも、座ったままの時間が長い女性では、死亡につながる深刻な病気の発症率が高いことが判明した。
意識して運動をする時間をつくることが大切
「女性は一般的に、35歳をピークに筋肉の量が減り、体力が低下していきます。閉経後の女性では、特にこの傾向が強くなります。座ったまま過ごす時間が長いと、若いときのような筋力や身体機能を取り戻すのが、ますます難しくなります」と、研究を主導した米コーネル大学ヒューマン・エコロジー学部のレベッカ セガン氏(栄養学)は話す。
現代は豊かな生活を享受しており、体を動かす機会が減ってきている。移動は車や電車やバスで、掃除や洗濯などの家事を、体を使わず電化製品で賄うのが当たり前になっている。意識して体を動かす時間を作り、それを増やしていくよう対策しないと、体力は衰える一方だ。
少しの違いを積み重ねることが、年月が経つと大きな違いとなり、体に大きな影響を及ぼすことになる。「中年になったら、意識して運動をする時間をつくることが大切です。若い頃から対策することで、歳をとってから深刻な病気を発症しない体をつくることができます」と、セガン氏は指摘する。
運動を習慣として行うだけでなく、筋力を向上させるレジスタンス運動も必要だという。運動は消費エネルギーを増やすとともに、筋肉量を増やして基礎代謝を高める効果もある。特に閉経後の女性は、筋肉量を増やす運動を意識して行うことが必要だという。
立ったり歩いたり姿勢を維持したりといった日常の動作の保つのに必要な筋肉は、重力に対して立位の姿勢を維持する働きをすることから「抗重力筋」や「姿勢維持筋」と呼ばれる。座ったままの時間が長いと、この抗重力筋が衰えてしまうと、研究者は指摘している。
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抗重力筋は、日常生活の中で身体活動を積極的に行う、歩くなどの軽い運動を続け、筋肉を鍛える運動をとり入れることで、何歳になってからでも強く発達させることができる。
「運動を行うことで、閉経にともなう体へのさまざまな悪影響を減らすことができます。座ったまま過ごす時間をなるべく減らすことが大切です」と、セガン氏は強調する。
セガン氏は、運動不足が気になっている女性に向けて、次のことをアドバイスしている。
・オフィスで働いているのなら、ときどき意識して立ち上がり、あたりを歩き回ってみる。
・子育てが終了していたり、退職して時間に余裕があるのなら、なるべくソファーに横になる時間を減らし、体を動かすようにする。
・テレビのコマーシャルタイムには、立ち上がって軽く体を動かす。
・インターネットや読書の時間を減らし、運動の時間にあてて、なるべく安静に過ごす時間を減らす。
Study: Prolonged sitting jeopardizes older women's health(コーネル大学 2014年1月10日)
[ Terahata ]