国立循環器病研究センターは、循環器病を予防するため、塩分を控えてうまみを引き出す「おいしい減塩食」の普及を目指している。
このほど、特産品を使った減塩食レシピを発掘する「国循のご当地かるしおレシピプロジェクト」を企画し、「S-1g(エス・ワン・グランプリ=Saltマイナス1グラム)大会」を開催した。
「かるしお」は、塩を軽く使ってうまみを引き出す、国立循環器病研究センターが提唱する減塩の新しい考え方。
同センターの入院患者に出される通常の食事は、1日の塩分摂取量が合計6g未満(1食2g未満)となる減塩食だが、京都の割烹などで修行した調理師長が京料理の手法を取り入れて開発した独自メニューは、しっかり味があっておいしいと好評だという。
塩を軽く使ってうまみを引き出す「かるしお」
国立循環器病研究センターは、「かるしお」メニューを紹介する書籍「国循の美味しい!かるしおレシピ」(セブン&アイ出版)を監修し、2012年の発行後5ヵ月で25万部を超える大ヒットになった。
今回の大会は、減塩食ブームを加速させ、地域ぐるみで食生活の改善に取り組んでもらおうと企画された。
「おいしいこと」、「塩分控えめで、栄養バランスがとれていること」、「地域ぐるみの循環器病予防や栄養指導などへの展開が期待できること」、「地域の特産品を使用していること」などを基準に募集したところ、昨年10月までに全国から355点の応募があり、24チームのレシピが選定された。
相愛大学(大阪市住之江区)で開催された大会では、書類選考を通過した24チームが、会場のキッチンで実際に調理をし、レシピを披露。管理栄養士などが試食をして審査した。その後、公開プレゼンテーションも行われた。
料理にしょうゆをかけず、小皿に入れてつけて食べる
グランプリ(賞金100万円)は、岩手久慈保健所チームの「−塩加減も『アマちゃん』で!−久慈地域★かるしおdeアマノミクス定食」。人気連続テレビ小説の舞台となった久慈地域は、脳卒中死亡率が全国でも高い。保健所は食生活改善推進員とともに、市町村や県栄養士会と連携しながら「塩かげんもあまちゃんで!」をキャッチフレーズに減塩運動を展開している。
応募メニューは被災者栄養教室の普及献立で、久慈地域の食材を活用し、低塩とは思えないおいしさで、手軽に作れると好評を得た。
焼き豆腐ステーキの他、▽特産のまめぶ、▽かぼちゃと煮豆のミルク煮、▽押し麦とサツマイモのご飯、▽ほうれん草と水菜のなめたけ和え、▽果物という内容で、総カロリーは580kcalに抑えてある。おいしさに加え、「しょうゆをかけずに小皿に入れてつける」などの減塩を食事指導に取り組んでいることなどが評価された。
その他、金賞(賞金50万円)は青森市西部学校給食共同調理場チームの「八戸いかのさわやかサラダ」、銀賞は望月理恵さんの「しずおかかるしお定食」がそれぞれ受賞。そのほか、3チームが「だし・うまみ賞」を受賞した。
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次は...予防のための減塩 塩を減らしカロリーも控えめに
だし・うまみ賞を受賞した宇都宮東病院糖尿病センターのチームは、甘みの強い栃木産のトマトを使った「トマ玉丼」などを出品。「トマトは味がしっかりしているので塩を使わなくても食べられるし、加熱することでさらに甘みが増す。下処理を済ませば、10分で作り終わるスピードメニュー」と話し、安くて手に入りやすい食材で簡単に作ることができる点にこだわったと説明した。
同センターでは、糖尿病食を基本とした健康食を提供するレストランを併設。実践型の栄養指導の場として活用しているという。今回受賞したレシピを、同レストランでも提供する予定。
予防のための減塩 塩を減らしカロリーも控えめに
「塩分控えめで健康的だけども味はいまひとつという“従来型減塩食”に代わり、塩を減らすことにより素材のうま味を引き出し、カロリーも控えめだけどもおいしいという“かるしおレシピ”の考え方が予想以上に脚光を浴びていることがわかりました」と、国立循環器病研究センターの橋本信夫理事長は話す。
高血圧治療ガイドラインでは、高血圧の人に対しては、6g未満を勧めているが、血圧が正常な人にとっても1日6g未満を心がけることが勧められる。ほとんどの日本人は必要量をはるかに超える食塩を摂取している。
塩分は血圧と密接な関係がある。塩分を摂りすぎると、血液中のナトリウムの濃度が高くなる。ナトリウム濃度が高くなると、それが、中枢神経に働いてのどが渇き、水分を摂取する。すると血管に流れる血液量が増え、血圧が高くなる。
つまり、塩分をとりすぎると体内の塩分と水分の量を調整するために血液量が増え、高血圧になるというわけだ。
かるしおレシピでは、八方だしや、素材のきざみ方などを工夫し、しっかりした味を実現している。“国循の減塩調理”の基本とあわせ、循環器病の予防に向けた減塩の重要性を紹介している。
「減塩に対する正しい認識を広め、自治体、食品業界などが協力して減塩を進め、日本人の生活習慣を改善していかなければならない」と、橋本理事長はまとめた。
各地の特産品を活用した美味しい減塩食を発掘するレシピコンテスト(国立循環器病研究センター)
減塩食について(国立循環器病研究センター)
[ Terahata ]