ビフィズス菌や乳酸菌などの腸内細菌は、健康長寿と関連がある。腸内細菌の遺伝子を調べることで、2型糖尿病のリスクが高い人々を選別することができる可能性があると、スウェーデンのヨーテボリ大学の研究者が発表した。この研究は科学誌「Nature」2013年6月号に発表された。
糖尿病の人の腸内は善玉菌が少ない傾向
ヒトの大腸内には、およそ100兆個、500〜1,000種類もの腸内細菌がすみついている。この数はヒトの細胞数よりも多い。この菌のかたまりを腸内細菌叢といい、花畑のように見えることから「腸内フローラ」とも呼ばれている。
腸内フローラはヒトの健康と病気に密接に関わっており、腸疾患、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、動脈硬化症などのさまざまな疾病の発症に関係すると考えられている。
2型糖尿病は、遺伝因子と環境因子の組み合わせによって発症すると考えられているが、近年は、腸内細菌のバランスの乱れが何らかの影響を与えている可能性も指摘されている。
腸内細菌は、食べ物が消化吸収された後の残りカスをエサに増殖するため、どんなものを食べるかが腸内環境を整える上でとても重要になる。
研究チームは、欧州の平均年齢70歳の女性145人(糖尿病患者、耐糖能異常を示す患者、健康な被験者)から得られた便のサンプルを用いて、DNA情報をコンピューターにより解析するメタゲノム解析手法を用い解析した。
その結果、2型糖尿病の女性では、独特な腸内フローラの特徴がみられることが分かった。ブドウ糖と脂肪の代謝で重要な役割を果たす酪酸を産生する腸内細菌の数が、健康な女性に比べ減少していた。
研究チームは、「腸内フローラと2型糖尿病の関連については不明な点が多いが、腸内細菌のバランスをメタゲノム解析手法により解析することで、2型糖尿病の危険性を予測する新しいモデルをつくれる可能性がある」と指摘している。肥満指数(BMI)やウエスト周囲径を測定するよりも精度の高い方法になるという。
腸内細菌は、有益な働きをする善玉菌(有用菌)、有害な働きをする悪玉菌(有害菌)に分けられる。善玉菌が悪玉菌の働きを抑え優勢に働いていると、腸内バランスが健康的に保たれるが、2型糖尿病患者では悪玉菌が強く、善玉菌の量が少ない傾向があるという報告もある。
腸内環境は、不健康な食生活や運動不足、ストレスやなどの生活環境や加齢によって悪化する。腸内環境の健康が保つためには、「肉や卵などのタンパク質食品を食べ過ぎない」、「野菜を食べ、食物繊維が不足しないようにする」、「発酵食品(ヨーグルト、納豆、漬け物など)を食べる」といった工夫が役立つという。
An altered gut microbiota can predict diabetes(ヨーテボリ大学 2013年5月30日)
[ Terahata ]