1日5,000歩のウォーキングを毎日続ければ、医療保険の負担を軽減します――米国の1万2,000人以上を対象とした実証実験で、ウォーキングに医療費削減の効果があることが期待されている。
この研究は、ミシガン州の医療保険会社「ブルー ケア ネットワーク」の加入者1万2,102人を対象に行っている、ミシガン州立大学とスタンフォード大学の研究チームによる実証実験だ。
肥満超大国の米国では、肥満を原因とした生活習慣病が増えており、医療費の急増が深刻な社会問題になっている。いくつかの健康保険会社は、痩せるために何の努力もしていない肥満の被保険者に対し、健康保険料を値上げするというプログラムを採用している。今回の研究では、やり方次第では運動量の増加に貢献することがあきらかになった。
研究チームは、2型糖尿病や高血圧、脂質異常症の発症リスクの高い過体重や肥満の人を対象に、1日に5,000歩のウォーキングを毎日続ければ、医療保険を負担金を軽減するという条件で実証実験を開始した。
保険に加入している1万2,102人うち、6,548人がウォーキングプロジェクトに参加。参加者には、通信機能付き端末に接続できる歩数計を配布し、インターネットで記録を送信してもらった。
すると1年間に97%が1日5,000歩のウォーキングを実行し、44%(2,885人)はウォーキングの歩数を1日7,500歩に増やした。1日に5,000歩のウォーキングは、距離に換算すると約4,000メートルに相当する。
ウォーキングは全身を使う有酸素運動で、特別な道具もいらず基本的にはどこでも行える。ウォーキングには、▽脂肪を燃焼させて体重を減らす、▽下肢の筋力低下を防ぐ、▽心肺機能を高める、▽ストレスを解消する、▽骨を強くするなどの、さまざまな効果がある。中高年に特に勧められる運動のひとつだ。
実証研究は現在も継続中だが、ウォーキングを続けている人の3分の2は、プログラムについて「運動の意欲を引き出してくれる」と好意的に評価しているという。目標を遂行すると医療保険の自己負担額が20%免除するという条件が付いており、医療費の削減効果はこれを上回る見込みだという。
米国疾病管理センターによると、肥満が関連する疾患の医療費は年間約14兆円(1400億ドル)に上る。ウォーキングなどの運動を行うことで、医療費のかなりの額を節減できると考えられている。
「参加者数は当初の予想を上回り、ウォーキングの継続率も高い比率で推移しています。ウォーキングのメリットを目に見えるかたちで提示することが、参加者のやる気を引き出し、継続率も高いことが示されました」と、研究者は述べている。
5,000 steps a day to avoid higher health insurance costs? When money talks, people walk(ミシガン州立大学 2013年5月8日)
[ Terahata ]