夕方から夜にかけて食欲が増し、甘いものや塩辛い高カロリーの食品を食べたくなるのはなぜだろう。その原因は概日リズム(体内時計)にあった――米オレゴン健康科学大学とハーバード大学による共同研究で、概日リズムは食欲とエネルギー蓄積に深く関わることがあきらかになった。生活を概日リズムに合わせれば、効果的なダイエットを期待できるという。
夜に高カロリー食品を食べたくなるのは体内時計のせい
人間には1日周期でリズムを刻む「概日リズム(体内時計)」が備わっており、意識しなくても日中は体が活動状態に、夜間は休息状態に切り替わる。
夕方から夜に摂取したエネルギーは、他の時間帯に比べて体に蓄積されやすい。食べた後に体を動かすことが比較的少ないからだ。さらに、体のブドウ糖を代謝する能力を示す「耐糖能」もこの時間帯に低下する。
肥満を防ぐためには、夕方から夜に高カロリーの食べ物をなるべく食べないようして、エネルギーを体に貯め込めないことが必要だ。しかし困ったことに、体内時計はその時間帯に食欲を増進させている。
「多くの人は、夕方から夜にかけて空腹感が強まる傾向があります。夜に高カロリーの食品を食べてしまう人は、肥満になりやすいのです。このことは最近の肥満の増加にも影響しています」と、オレゴン健康科学大学のスティーブン シア氏(環境生理学)は話す。
研究では、非肥満者12人を対象に13日間にわたる実験を行った。実験期間中は薄暗い実験室で過ごし、食事や睡眠といった行動をすべてスケジュール通りに行ってもらい、概日リズムと食欲や食事摂取量などの関係を調べた。
すると、食欲が最も低下するのは朝8時、最も増えるのは夜8時だということが分かり、概日リズムが食欲に影響していることが示された。また、甘いものや炭水化物の多いもの、塩辛いものを食べたくなるのもこのリズムに同期していることが分かった。
私たちの祖先は長い間、食料不足の環境を生きてきた。いつ食料が手に入るか分からず、飢餓は身近な脅威だった。そのような条件では、限られた食料から効率良くエネルギーを体に貯蔵する仕組みが必要となる。食料が十分にある現代には、飢餓に備え長い時間につくられた体の仕組みが、逆に肥満を引き起こす原因になっている。
「体のエネルギーや栄養を処理する働きは1日の時間帯によって変わります。朝食後に比べ、夕食後に費やすエネルギーは低下しています。加えて、夜は耐糖能が低下し、体はエネルギーを消費しにくくなっています」(シア氏)。
さらには、人工的な照明が行き届いており、夜間も明るいままだ。このことは睡眠時間の減少につながっている。夜遅くまで起きていると、空腹を感じる時間が長くなり、高カロリーの食品を食べてしまいがちになる。質の悪い睡眠は、食欲に関連するホルモンの分泌を高め、肥満の原因になる。摂取カロリーの増加と不十分な睡眠が重なると、体重コントロールに悪影響があらわれる。
「睡眠という絶食時間帯の前に高カロリーの食事摂取を促すために、概日リズムが機能している可能性があります。私たちは概日リズムによって、夜の食事をたっぷりと、朝の食事を省略するように自然にコントロールされています。摂取した食事エネルギーを効率的に体に蓄えるこの仕組みは、人類の進化の過程においては重要なものでしたが、近年の肥満の蔓延の一因になっている可能性は否めません」と、シア氏は示唆している。
夜は照明を暗くし早く就寝し、十分な睡眠をとること。加えて、ダイエットに成功したければ、高カロリーの食品を夜に食べず、朝になるまで我慢した方がよい。体が摂取したカロリーを消費しやすい時間帯を知っていれば、食事の選択が適正になり、肥満を予防できるという。
Study explains what triggers those late-night snack cravings(オレゴン健康科学大学 2013年4月29日)
[ Terahata ]