適切な摂取エネルギー量や、食習慣や生活習慣を考えながら、患者1人ひとりに最適化した食事指導を行う管理栄養士は、健康的な食事の専門家といえる。米国栄養士会は、糖尿病の食事指導のポイントを公開している。
糖尿病は“長い旅” 続けることが肝心
「食事療法は、2型糖尿病の治療の基本です。食事療法を実行することで、血糖コントロールは改善します。栄養士は、患者さんが何をいつ、どれだけ食べればよいかを理解する手助けをし、糖尿病の治療が良好に進められるよう、患者さんと共同作業をします」と、メリーランド大学医療センターの登録栄養士で、糖尿病療養指導士(CDE)の資格をもつアンジェラ ギンさんは話す。
「インスリンの働きを考えながら食事をとることが、血糖コントロールに大きく影響しています。多くの糖尿病患者さんを指導した経験をもつ管理栄養士は、そのことをよく理解しています。米国では、糖尿病の治療を開始した患者さんの全てに、管理栄養士による指導が適用される制度はありませんが、理想的には全ての患者さんに栄養指導は必要でしょう」とギンさんは説明する。
食事の摂取エネルギーの目標を設定し、必要な栄養素を過不足なくとり、食事のタイミングまで考えて調整することで、血糖コントロールは良くなり、体重増加も抑えられ、血圧値やコレステロール値も改善する。
「米国にはさまざまな民族がいて、生活スタイルも多様です。食事を中心とした生活スタイルは、1人ひとり異なります。その人のスタイルを尊重しながら、血糖コントロールが不良であれば、小さいことから改善していくことを考えます。無理をして食事全体を変えようとしても長続きはしませんからね」。
「糖尿病をもっていても、適切な治療を続けていれば、健康な人と同じように長生きできます。糖尿病の罹患期間は長期に及び、食事指導も1回で終わることなく、何度も繰り返されます。患者さんと長い旅をともにしているようなものです。栄養士などの医療スタッフを、糖尿病治療という旅のパートナーと考えてください」。
次は...米国栄養士会がアドバイスする食事療法のコツ
「食事指導の頻度は患者によって異なりますが、糖尿病と診断されたばかりの患者さんであれば、食事指導を毎月行います。そうでなければ3〜6ヵ月ごとに1回ぐらいの頻度で行っています。食事療法がうまくいっており、血糖コントロールが良好であれば、1年に1回で十分です」と、管理栄養士のアンジェラ ギンさんは話す。
米国栄養士会が推奨する食事法は次の通り――
低GIの食品を選びましょう
同じエネルギーの食品であっても、炭水化物の構成などによって、血糖の上昇度は異なります。高炭水化物で消化・吸収の早い食品は、食後の血糖値が上昇しやすいので注意しましょう。
食品の血糖の上昇度はGI(グリセミック インデックス)であらわされます。低GIの食品は、全粒粉を使ったパンやパスタ、精白されてない米、キャベツなどの野菜、キノコ類、ナッツ類などがあります。
食物繊維をとりましょう
野菜や果物など、食物繊維を豊富に含む食品を増やしましょう。1日に食物繊維を20〜25gとると、血糖コントロールが改善し、血中脂質レベルも低下します。野菜と果物を1日2.5皿以上食べましょう。野菜など食物繊維の多い食品は低カロリーのものが多く、空腹感をまぎらわすこともできます。
食塩を減らしましょう
糖尿病合併症の発症や進展を防止するためには、血圧コントロールも重要です。食塩の過剰摂取は、血圧上昇による血管障害を引き起こします。塩辛く味付けすると食欲が増すので、薄味を心がけましょう。
冷凍食品や加工食品は食塩や脂質の含有量が多いものがあります。フードラベルを見て、成分や内容を確認しましょう。
米国では食塩摂取量を3.8g/日に制限することが勧められていますが、米国人の平均摂取量は6g/日を超えています。
アルコールに注意
糖尿病のある人はアルコールに注意する必要があります。スルホニル尿素薬を服用している人では、低血糖のリスクが高くなります。
糖尿病合併症や肝疾患のある人には、アルコールは勧められません。アルコールを食欲を増し、自制心を保てなくなるおそれがあります。飲酒量を自分で制限できない場合は、医師に相談しましょう。
食事の間隔を一定にしましょう
食事回数は1日3回が基本です。食事の間隔を一定にして、できるだけ規則正しく食事をとり、欠食しないことが大切です。早朝の高血精を避けるため、夜9時以降の食事は控えましょう。
食事では野菜を先に食べることで、食後に血糖値が上がりにくくなり、体重も減少します。早食いは、肥満をもたらすおそれがあります。ゆっくりと食べましょう。
健康食品やサプリメント
市販されている健康食品やサプリメントの中には、効果に関する客観的エビデンスが乏しく、製品の管理が不十分なものもあります。利用する場合は、信用のできる商品であるかを確かめ、サプリメントを利用していることを医師に伝えましょう。
eat right. Academy of Nutrition and Dietetics(米国栄養士会)
[ Terahata ]