3月11日〜17日は「世界減塩週間」だった。塩分のとりすぎが原因となり死亡する数は世界で年間230万人に上るというショッキングな調査結果が発表された。心臓病や脳卒中など、塩分のとりすぎが原因となる高血圧が関連する病気で死亡する割合は、全死亡の15%に上るという。
世界の99%の国で「食塩のとりすぎ」 推奨量は1日3.8g
調査結果は、世界50ヵ国の303の学術団体から488人の研究者が参加した国際的な研究であきらかになったもので、ニューオーリンズ州マリオットで3月に開催された米国心臓学会(AHA)の科学セッションで発表された。研究チームは、1990〜2010年に247の地域で心臓病の関連を調べた107件の研究を解析した。
塩は人類にとって馴染みの深い食品で、多くの食品に調味料として用いられている。冷蔵庫が普及する前は、食品の保存料として使われていた。
「ヒトの体の血液や体液には、一定の濃度の塩分が含まれます。塩分は生命を維持するために必要ですが、必要最低量はわずかなものです」と、ハーバード大学公衆衛生大学院のDariush Mozaffarian氏(心血管病疫学)は指摘する。
調査では、成人の1日の食塩摂取量の世界平均は約10gであることが判明した。これは、世界保健機関(WHO)が推奨する量の2倍で、米国心臓学会が推奨する3.8gの3倍に近い。
また、調査の対象となった187ヵ国中の181ヵ国で、食塩摂取量はWHOの推奨量を超えていた。99%の国が塩分をとりすぎており、推奨量を下回っていたのはケニアなど数ヵ国だった。
血圧値と食塩摂取量や食塩排泄量との関連を解析したところ、年齢とともに血圧値が上昇しない地域では、1日の食塩摂取量が約3〜5gにとどまっていた。
「塩分の過剰摂取を防ぐ対策を施すことで、全世界で数百万人の命を救うことができます」と、Mozaffarian氏は強調する。
「糖質の過剰摂取が肥満の増加と関連があると指摘されており、公衆衛生上の問題になっていますが、塩分についてはより深刻だといえます。塩分はより多くの食品に含まれているからです」。
日本人は1日10gの食塩をとっている
日本人の1日の食塩摂取量の平均は、最新の調査によると男性10.9g、女性9.4gだった。食塩摂取量の多い人ほど高血圧になりやすい傾向がある。日本人に脳卒中や心臓病、腎臓病が多いのも食塩摂取量が多いためとみられている。
日本高血圧学会は、高血圧の予防のために、血圧が正常な人にも1日6g未満の食塩制限を推奨している。特に糖尿病や慢性腎臓病の人には、心疾患などの循環器病や腎臓病の予防のためにも、1日6g未満の減塩を推奨している。
日本人は、塩分に対する嗜好が強いといわれる。塩分は、加工食品やレストランでの外食、市販の弁当などの食事にも多く含まれている。塩にあふれた現在の環境で減塩の努力することは簡単ではない。
食塩、みそ、しょうゆなどの調味料を減らしても、塩分はパンや麺類、バター、ハムやかまぼこなどの加工食品、インスタント食品などにも含まれている。減塩に成功するためには、味付けや調理法を工夫することが必要だ。
Eating too much salt led to nearly 2.3 million heart-related deaths worldwide in 2010(米国心臓学会 2013年3月21日)
Sodium intake for adults and children(世界保健機関 2013年1月)
日本高血圧学会
[ Terahata ]