腎臓病は、生活習慣の改善(禁煙、減塩、肥満の改善など)や薬物療法により、進行を防ぐことができる病気だが、現状では腎臓病患者は増加傾向にある。
世界腎臓デー 各地で啓発イベントを開催
3月の第2木曜日の「世界腎臓デー」は、増え続ける腎臓病を防ぐため2006年に定められた。この日を中心に、腎臓病の治療と対策を啓発するイベントが各地で展開される。そして、腎臓病の早期発見と対策のために「慢性腎臓病(CKD)」という新しい病気の概念もうまれた。
「慢性腎臓病(CKD)」は、腎臓の働きが健康な人の60%以下に低下するか、あるいはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態をいう。現在、日本には約1,330万人のCKD患者がいるとされる。これは、成人の約8人に1人にあたる数だ。
CKDで腎機能が低下してしまうと、それをもとの状態に戻すのは困難だ。腎臓の機能が10%以下にまで低下すると、人工透析や腎移植を受けなければ生きられなくなる。さらにCKDは、透析になるだけではなく、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患の重大な危険因子になる。腎臓を守ることは、心臓や脳を守ることにつながる。
腎臓病の発症・進展には、生活習慣が多く関わっている。CKDを検査で早い段階で発見し、治療を開始し腎機能の低下を抑えることが大切だ。
基本となるのは原因に対する治療で、高血圧症や糖尿病の人は食事療法や運動療法とあわせて、必要に応じて薬物療法を行い、血圧や血糖値を適正にコントロールすることが腎臓病の予防・改善につながる。
CKD啓発ビデオを公開 CKD啓発動画研究会
CKDは年々増加しているものの認知度は低い。自治医大学腎臓内科の安藤康宏教授らは、2011年に横浜と宇都宮で街頭アンケート調査を実施した。得られたのは「メタボ」という言葉の認知度が90%前後と高かったのに対し、「CKD」という言葉の認知度は4%というショッキングな結果だった。
そこで、安藤教授らがよびかけ、腎臓専門医らと2011年に「CKD啓発動画研究会」を設立、早期発見などを訴える動画をつくりインターネット上で配信をはじめた。パソコンやスマートフォンで手軽に視聴できる。
画面をクリックすると再生がはじまります
CKD啓発ビデオ「Bang Bang CKD!」(CKDをやっつけろ!)
「あなたもCKD?」(くちびる編)
慢性腎臓病を防ぐために 自分で検査値をチェック
CKDは、重度になるまで自覚症状はほとんどない。貧血、疲労感、むくみなどの症状があらわたときには、病気がかなり進行している可能性がある。早期発見し治療を開始するために、尿中のタンパク質の濃度を調べる尿検査と、血液中のクレアチニンを調べる血液検査を定期的に受けることが必要だ。
クレアチニンとは血液中の老廃物のひとつで、通常であれば腎臓でろ過され、ほとんどが尿中に排出される。しかし、腎機能が低下していると、尿中に排出されずに血液中に蓄積される。この血液中のクレアチニンが「血清クレアチニン値」だ。
CKDの診断の指標となる検査値が「GFR値(糸球体ろ過量)」で、1分間に腎臓の糸球体をろ過してできる原尿の量を示す。90以上が正常。50未満になると腎臓機能が低下していると診断され、専門医の治療が必要となる。
GFR値を正確に測定するには厳密な検査が必要だが、定期健康診断の血液検査の項目でもある血清クレアチニン値がわかれば、推定GFR値を計算することができる。
検査結果の項目に推定GFR値が書かれていない場合は、日本慢性腎臓病対策協議会のホームページに自動で換算できるページが設けられている。検査結果をもとに血清クレアチニン値、年齢、性別を入力すると、推定GFR値を自分で知ることができる。
糖尿病の人は微量アルブミン尿検査で早期発見
CKDを悪化させる原因として高血糖、高血圧、脂質異常などがある。高血圧や糖尿病などの治療を受けている人は、医療機関を受診して、かかりつけ医の指導を受けながらきちんと治療をしておくことが大切だ。
糖尿病の治療を受けている人は医療機関で、より精度の高い検査も受けられるので、主治医や医療スタッフに聞いてみよう。
腎症を発見するためには、微量アルブミン検査が有効だ。この検査は、微量の蛋白(アルブミン)を、感度のよい方法で尿から調べる検査方法。検査を受ける人にとっては、一般の尿検査の方法と変わらない。
一般に糖尿病腎症は血糖コントロールが悪いと、糖尿病の発病から10年以上たつと発症するといわれているが、2型糖尿病の人では、いつ頃発病したのかを正確に知るのは難しい場合がある。一般的に、検査で陽性と診断された人は、腎機能が低下していないか血液検査をあわせて行って、少なくとも年1回、微量アルブミン尿検査を受けるのがよいとされている。
日本慢性腎臓病対策協議会(J-CKDI)
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[ Terahata ]