年をとるにつれ足の筋肉は減少し、代わりに脂肪が増え、歩行速度が遅くなる。筋力が衰えるのを抑えるために、脚の脂肪を増やさない対策をすることが重要だ。
足の筋力は年をとるにつれ衰えていく
筋力は20〜30歳代をピークに、ふだんの活動量が少ない人ほど低下していく。筋力の低下は特に下半身に起こりやすい。筋力が低下してくると、疲れやすくなったり、長い時間歩くことがつらくなる。
歩行は、高齢者の自立した生活に欠かせないもっとも基本的な動作だ。高齢者が自分の脚によって歩行する、つまり年をとっても自分の力で移動することが、寝たきりや閉じこもりの防止につながる。
「高齢者の歩行能力が、もっともよくわかる指標は歩行速度です。歩行速度が大きい人ほど運動能力が高いと考えられますが、年齢を重ねるにともなって歩行速度は低下していきます」と、ウェイク フォレスト大学のクリスティン ビーバー博士(老年医学)は話す。
ビーバー博士ら研究チームは、米国立老化研究所の前向きコホート研究のデータを用いて、平均年齢74.6歳の男女2,306人のデータを得た。脂肪量と脂肪の少ない筋肉量の変化がどのように歩行速度に影響を与えるのかを調べた。
一定の距離を歩行するのにかかる時間をはかり、4年間にわたり毎年調査を行った。さらに身体組成をコンピューター断層撮影(CT)で評価した。結果として、太腿の筋細胞外脂肪が増加し、大腿筋が減少すると、歩行速度が遅くなることがわかった。
足の筋肉を鍛える運動が必要
高齢者の歩行動作は、加齢に伴って変化する。例えば、▽歩行速度の低下、▽歩幅(一歩の長さ)の減少、▽歩調(一定時間に進んだ歩数)の減少などが起こる。
足の筋肉が減少し、脂肪が増加するのを防ぐためには、強度のある筋肉を鍛える運動が必要となる。筋肉を鍛える運動として勧められるのは、スクワット(大腿と腰の筋肉)、ヒップエクステンション(大腿と臀部の筋肉)、椅子での膝上げ(腹筋)だ。
- 「ひざを上げ・歩幅は大きめ」
特に高齢者は、無意識のうちにすり足で歩きがちなため、つまずいてケガや骨折を招きやすくなる。足の筋肉を鍛えるために、ひざを上げて、歩幅をやや大きめにするように意識して歩くことが大事。
- 「ふくらはぎの筋力トレーニング」
(1)いすの後ろに立って両手でいすの背もたれをもち、右脚を上げる。(2)そのままさらに左脚のかかとを上げ、2秒保って元に戻す。(3)10回繰り返したら反対側も同様に行う。
- 「座ったまま行うスクワット」
(1)いすに浅く腰かけて背筋を伸ばし、両手を太ももの上に置く。(2)姿勢を崩さないようにしてお尻をいすから少し上げ、10〜15秒間保ったら、転倒に注意してゆっくりと元に戻す。これを繰り返す。
- 「前後方向のバランス能力を高める」
(1)壁などの安定したものにつかまって立ち、軽く足を開いて背筋を伸ばす。(2)両足のかかとを上げてからゆっくりと下げる。次に両足のつま先を上げてゆっくりと元に戻す。これを繰り返す。
- 「太股の筋力トレーニング」
(1)肩幅程度に脚を開いて立ち、手を胸の前で組む。(2)膝はつま先より前に出ないように、角度は90度くらいになるようにして、3秒ほどかけてゆっくり腰を落とし、3秒ほどかけて元に戻す。
Thigh Fat May be to Blame for Older Adults Who Slow Down(ウェイク フォレスト大学バプテストの医療センター 2013年2月19日)
関連情報
健康づくりに役立つ運動(日本健康運動研究所)
[ Terahata ]