渋み、苦み、旨みなどの独特な味わいをもつ緑茶には、さまざまな生理活性のある天然物として注目を集めている「EGCG(エピガロカテキンガレート)」が含まれる。EGCGをパンやご飯などの主食と同時に摂取すると、食後高血糖を抑えられる効果があることが確かめられた。EGCGはアルツハイマー病の予防効果もあると期待されている。
緑茶成分が食後高血糖を改善
米国のペンシルヴァニア州立大学が行った研究で、マウスにEGCGとコーンスターチ(トウモロコシから作るデンプン質)をエサとして与えたところ、普通のエサを与えたマウスと比較して、血糖値の上昇が有意に少ないという結果が得られた。
口(唾液に含まれる)や膵臓で作られる「α-アミラーゼ」という酵素には、デンプンをマルトース(麦芽糖)とブドウ糖に分解する作用がある。研究では、EGCGがα-アミラーゼの活性を34%減少させることがあきらかになった。
つまり、EGCGはこの酵素の作用を阻害することで、デンプンがブドウ糖に分解されるのを抑制し、食後の血糖値の上昇を抑えている可能性があるという。マウスに与えたEGCGの量は、人間に換算すると緑茶一杯半に相当する量だった。
研究者によると、EGCGはデンプン質(パンやご飯などの主食)と同時に摂取するのがもっとも効果的だという。緑茶とデンプンが同時に消化される必要があるので、例えば、白飯やパンを食べた後で、1杯の緑茶を飲んだのでは、食後の血糖上昇は抑えられないだろうと述べている。
研究グループでは今後、EGCGの効果をヒトを対象に検証する予定だ。
アルツハイマー病の発症を抑える効果も
緑茶成分のEGCGに、アルツハイマー病の発症を抑える作用があるという研究も発表された。
英国のリーズ大学の研究チームは、緑茶から抽出したEGCGで処理することで、アルツハイマー病に特有のアミロイド斑の蓄積を阻害することに成功した。
アルツハイマー病は、認知症全体の約半分を占める疾患で、一般には65歳以降に記憶障害があらわれ、進行すると見当識障害や理解判断力の低下があらわれる。
アミロイドと呼ばれるタンパク質の蓄積がアルツハイマー病の原因のひとつと考えられている。アミロイドは凝集性が高く、細胞の外に分泌されて繊維状の凝集体となり老人斑を形成する。神経細胞にダメージを与え、ついには神経細胞を死に至らしめると考えられている。
研究チームは、試験管内で作ったアミロイド球をヒトと動物の脳細胞に混ぜる実験を行った。そこに、緑茶から抽出したEGCGを加えたところ、アミロイド球が神経細胞に害を与えなくなった。EGCGがアミロイド球の形状を変え、プリオンに結合するのを妨げ、神経細胞の機能を撹乱しなくなるのではないかと推測している。
「英国では50万人もの人々がアルツハイマー病に苦しんでおり、この疾患を止めることの出来る治療法が求められています。今回の研究はまだ初期段階にありますが、新しい効果的な治療法の重要な手がかりとなります」と、リーズ大学のナイジェル フーパー氏教授(生物科学)は述べている。
Drinking green tea with starchy food may help lower blood sugar spikes(ペンシルヴァニア州立大学 2012年11月12日)
Green tea and red wine extracts disrupt Alzheimer’s(リーズ大学 2013年2月4日)
[ Terahata ]