糖尿病は初期の段階では自覚症状が乏しいために、健康診断を受けずにいると、早期に発見できず治療が遅れることがある。実際に、自覚症状などにほとんど気付かなかった人が、健康診断や人間ドックを受診した際に、血糖値やHbA1cが基準値より高かったり問診されることで、糖尿病が発見される例は多い。
5割が健康診断などで糖尿病を指摘
厚生労働省の調査で、糖尿病の外来患者が受診し症状をはじめて医師に診てもらったときに、約4割は受診の時点で「自覚症状がなかった」ことが分かった。
調査は、全国500病院を対象に2011年10月に実施した「受療行動調査」の結果のうち、糖尿病以外も含めた病名が分かる外来患者3万1,795人の回答を分析したもの。
同省によると、糖尿病と診断された外来患者のうち、40.0%が「自覚症状がなかった」と回答、「自覚症状があった」は40.9%だった。
自覚症状がないのに受診した理由(複数回答)は「健康診断や人間ドックで(詳しい検査を受けるよう)指摘された」が最多で、49.5%だった。次いで「他の医療機関で受診を勧められた」(19.5%)、「(明確な自覚症状はなかったが)病気ではないかと不安に思った」(8.6%)が続いた。
厚労省の担当者は「糖尿病治療の基本は早期発見。自主的に健康診断を受け、異常が認められたら診察と治療につなげることが重要です」と述べている。
受診しても治療しない放置群は4割
健康日本21推進フォーラムが2011年6月に実施した別の調査では、健康診断で「要治療」と判定されたにもかかわらず、受診しない、受診しても治療しない“放置群”は39.0%に達することがあきらかになった。調査は、過去1年間に受診した健診で、血糖値が高く「要治療」と判定された男女500人を対象に行ったもの。
それによると、健診で血糖値が基準値よりも高く、「要治療」と判定された後、医療機関を「受診した」人は77.2%だった。性別で見ると、女性の受診率が若干高く、男性は4人に1人(26.0%)が受診していなかった。また、年代別では30歳代の未受診率が高く、41.0%に達した。
医療機関を受診した人に、糖尿病の治療を始めたかを聞いたところ、「治療を始めたが、現在はしていない」、「まだ治療を始めていないが、いずれ始めようと思っている」、「治療を始めるつもりはない」という非受療者が2割を占め、未受診者と合わせると、約4割が放置している現状があきらかになった。
なぜ糖尿病は早期発見・治療が重要になるかというと、糖尿病が引き起こす網膜症や糖尿病性腎症といった細小血管症や心筋梗塞などの大血管障害などの糖尿病合併症は、早期から血糖コントロールすれば予防できることがあきらかになっているからだ。
糖尿病の大規模臨床試験である「DCCT」や「UPKDS」では、早期からの血糖コントロール開始の重要さが確かめられた。早期の治療の効果は20年後、30年後まで影響する。早期から血糖コントロールを開始することで合併症を予防できる可能性が高まることが示唆されている。
HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)
HbA1cという血液成分を測る検査では、過去1〜2ヵ月の血液中のブドウ糖の平均的な状態を知ることができる。HbA1cは赤血球のヘモグロビンに血液中のブドウ糖が結合したもので、ヘモグロビン全体に対する割合であらわす。ブドウ糖が多いほどヘモグロビンとたくさん結びつくため、HbA1cの数値も高くなる。
糖尿病を早期に診断し、早期に治療を始めるためには、HbA1cを定期的に測る習慣が大切となる。HbA1cの検査は、地域や職場の健康診断、人間ドックなどで行われる。
平成23年受療行動調査(確定数)の概況(厚生労働省)
健康日本21推進フォーラム
関連情報
糖尿病の大規模臨床研究(糖尿病NET)
[ Terahata ]