魚には不飽和脂肪酸であるn-3(オメガ3)系脂肪酸が豊富に含まれており、魚を食べる頻度が高いと冠動脈心疾患のリスクが低下することが、さまざまな研究で報告されている。魚を食べる習慣は、心疾患だけでなく、脳卒中の発症も低下させることが80万人を対象にした大規模な研究であきらかになった。
食事ガイドラインでは、特にサバやイワシのような青魚を週2回以上食べることや、高脂肪の食品を避け野菜と果物を十分に摂取することが推奨されている。
魚を週に2回以上食べると脳卒中リスクが低下
英国のケンブリッジ大学のラジブ・チャウドリー博士とオランダのエラスムス医療センターのオスカー・フランコ博士が率いる国際研究チームは、魚の摂取と脳卒中との関連を調べた26件の前向きコホート研究と12件の無作為化対象試験をメタ解析した。
脳卒中には、致死的もしくは非致死的な虚血性脳卒中、出血性脳卒中、脳血管障害、一過性虚血性脳卒中が含まれる。
対象とした38件の研究には、15ヵ国80万人近くの被験者が含まれており、心血管系疾患をもつ患者も含まれる(二次予防研究)。同様に持病をもたないリスクの低い人も含まれる(一次予防研究)。バイアスを最小限にするため、研究の質の差が考慮された。
魚とオメガ3系脂肪酸の摂取量は、食事質問票や、血中のオメガ3脂肪酸マーカー、魚油サプリメントの使用記録から評価した。研究期間中に計3万4,817例の脳卒中が報告された。
複数のリスク因子を調整したところ、週に2回から4回、魚を食べていた人では、週に1回以下しか食べていない人に比べ、脳卒中のリスクが6%低くなり、週に5回以上魚を食べていた人では12%リスクが低くなるという結果になった。
一方、オメガ3系脂肪酸の血中レベルと魚油サプリメントはリスクの減少に有意な関連がみられなかった。
「魚をより多く食べることが、健康的な食事につながる。血管の健康を増進し、医療費の削減などの社会経済にも良い効果がもたらされる可能性がある」と研究者は述べている。
「魚を食べることが血管の健康に良い影響を与える理由はいくつかあげられる。魚に含まれるビタミン、必須アミノ酸といった良質な栄養素との相互作用の影響のほか、魚を多く食べることで、血管の健康に有害な赤肉などの食品の摂取量が減る可能性が考えられる」としている。
青魚の方が白身魚よりも脳卒中の相対リスクが低いのは、調理法が違うためかもしれない。欧米では白身魚はバターで焼いたり油で揚げたりすることが多い。
今回の研究は、全ての人にとって魚の摂取は健康増進のために好ましく、特に心疾患のある人やその危険性の高い人に魚油の摂取を促す現行の食事ガイドラインを裏付ける結果になった。また、研究者は栄養ガイドラインは「食べ物を基準」につくられるべきだという見解を示している。
関連論説によると、週に魚を1〜2回食べると虚血性心疾患や脳卒中のリスクを減らせることを患者にアドバイスするのは根拠のあることだが、魚油サプリメントの効果は確認できなかった。しかし、糖尿病のようなリスク因子をもつ患者には、そうしたサプリメントは有益である可能性があるとしている。
Couple of weekly portions of oily fish can help ward off stroke(BMJ 2012年10月30日)
[ Terahata ]