ウォーキングなどの運動を習慣として行うと、体力が増し、心臓の血管は丈夫になる。筋肉や骨も強くなり、結果として糖尿病や高血圧症とその合併症を予防できるようになる。運動をするとストレス・ホルモンも減少し、夜はよく眠れるようになるという報告もある。
運動の習慣化により、年齢がいくつであっても、メタボリックシンドロームのような慢性疾患による脅威を減らす効果を期待できることが、21〜98歳のデンマーク人1万人以上を10年以上にわたり追跡して調査した研究であきらかになった。
興味深いことにウォーキングは速歩で行った方が効果があり、通常の軽めのウォーキングではあまり効果を期待できないという。
速歩ウォーキングでメタボが半分に減少
速足のウォーキングやジョギングを毎日続けると、メタボリックシンドロームのリスクを50%も低減できるが、毎日軽く1時間歩いただけでは改善効果を期待できないことが、コペンハーゲンのビスペビャー大学病院のイーヴァ プレスコット博士らによる研究であきらかになった。
糖尿病や心疾患、脳卒中のリスクを高めるメタボリックシンドロームを予防するために、余暇時間に運動をすることが必要となる。しかし、ただ漫然と運動すればよいというものではなく、強度を高めた運動でないと効果を得られないようだ。
プレスコット博士らは、21〜98歳のデンマーク人成人1万135人を対象に、1991〜1994年に最初の評価を行い、10年間の追跡調査を行った。
研究開始時に、男性の27%、女性の21%でメタボがみられた。メタボは運動習慣のある人では少ない傾向があり、あまり運動しない被験者では女性の3分の1近く、男性の約37%、運動する被験者では女性の10%、男性の約14%にみられた。また、研究開始時に発症していなかった人の15%が、終了時までにメタボを発症した。
10年間の研究により、リスク軽減に有用なのは運動の強度であることが確かめられた。ウォーキングを続けた人のうち、速く速度の早い人やジョギングを行った人ではメタボになる危険性が低下していた(OR 0.51, 95% CI 0.33 to 0.80)。一方で、ゆっくりとしたウォーキングを毎日1時間続けた人では、メタボの割合は逆に増えていた(OR 1.22, 95% CI 0.91 to 1.65)。
「毎日の余暇時間をいかに過ごすかによって、メタボリックシンドロームのなりやすさに差が出る。なるべく速歩のウォーキングやジョギングなどを行い、運動の強度を適度に維持することが、メタボ対策の面からは重要だ」とプレスコット博士は述べている。
Intensity versus duration of physical activity: implications for the metabolic syndrome. A prospective cohort study(BMJ Open 2012年10月8日)
[ Terahata ]