「1日に1個のリンゴは医者を遠ざける」ということわざは本当かもしれない。米オハイオ大学の研究によると、約1ヵ月間、毎日リンゴを1個食べると、動脈硬化の原因となる酸化LDLが大幅に減少するという。リンゴの抗酸化物質が作用しており、その効果はサプリメントや緑茶、トマトなどを上回るという。
「LDL(悪玉)コレステロールがフリーラジカルにより酸化されてできた酸化LDLは、血管壁を傷つけ、健康な血管が本来もっている血管拡張作用を損なう。さらに、酸化LDLが血管壁に沈着すると、アテローム性動脈硬化を引き起こされ、心血管疾患の原因となる」とオハイオ大学農業研究開発センターのロバート ディシルベストロ教授(栄養学)は話す。
「リンゴを1日に1個食べることを4週間続けると、酸化LDLが大きく減少した。この違いは、冠動脈疾患をもっている人と健康な人を比べたときと同程度だった」としている。
ディシルベストロ教授は、これまでにもクルクミンなどの香辛料や緑茶、トマトの抽出物などさまざまな抗酸化物質を用いて酸化LDLの低下作用を研究しているが、「リンゴの効果はこれらを上回っている」と強調している。
研究の対象となった50人の被験者は、(1)40〜60歳で喫煙習慣がない、(2)リンゴを食べる頻度が月2回未満で、(3)ポリフェノールを含むサプリメントを服用していない――という条件を満たしていた。
被験者を3群に分け、4週間毎日、次のものを摂取してもらった。「リンゴ群:大きめの赤または黄リンゴ」、「サプリ群:リンゴから抽出したポリフェノール(194mg:リンゴ1個相当)をカプセルにしたサプリメント」、「プラセボ群:ポリフェノールを含まないプラセボ・カプセル」。
その結果、リンゴ群では酸化LDLが40%も減少した。サプリ群でも減少はみられたがリンゴ群ほどの効果はみられなかった。プラセボ群には変化がなかった。
「酸化LDLを減らす有効成分がポリフェノールであることは分かっていた。しかし、ポリフェノールだけを抽出したサプリメントを服用してもらったところ、リンゴほどの効果は得られなかった。リンゴにはポリフェノールの吸収を促す他の活性成分が含まれているようだ」とディシルベストロ教授は話す。
リンゴは唾液中の抗酸化物質にも影響を与え、口腔衛生に役立つ可能性もあるという。
Study: An Apple a Day Lowers Level of Blood Chemical Linked to Hardening of the Arteries(オハイオ大学 2012年10月2日)
[ Terahata ]