ニュース
2026年07月17日
じゃがいもの「調理法」が鍵 米研究から見えた糖尿病リスクと主食の選び方
2型糖尿病の予防や日々の食生活を考えるうえで「炭水化物をどう摂るか」は大切なテーマだ。主食やおかずとして身近な食べ物である「じゃがいも」は、でんぷんを多く含むため、血糖値や2型糖尿病リスクとの関係が気になる人も多いはず。
そこでひとつの指標となるのが、2025年、米ハーバード大学などの研究グループが米国の3つの大規模なコホートデータをもとに、医学誌『The BMJ』で発表した研究結果。じゃがいもの摂取量や調理法が2型糖尿病の発症リスクにどのように関連するのか。その分析データから、日々の食生活に活かせる前向きなヒントをお伝えする。
20万人を長期にわたり、食生活の変化まで捉えて調査
今回紹介する報告は、米国の医療従事者205,107人を対象とした、最長36年に及ぶ3つの大規模な追跡調査をまとめたものである。追跡期間の中央値が23~27年という長期にわたる調査の中で、22,299人が新たに2型糖尿病と診断された。
この研究の特徴は、数年ごとに食事内容のアンケートを繰り返し行い、食生活の変化まで捉えて分析に反映している点にある。年齢や運動量、体重(BMI)、食事内容などの要因を統計的に考慮したうえで、じゃがいもの摂取量や調理法と2型糖尿病発症リスクとの関連を詳しく分析した。
フライドポテトは2型糖尿病リスク増 油で揚げない調理では明確な関連なし
分析の結果、じゃがいもを食べる総量が多いほど2型糖尿病の発症リスクはわずかに高くなる傾向があったが、その関連は主に「フライドポテト」の摂取によるものと考えられた。
・フライドポテト:摂取量が週に3皿分相当(1皿分相当=論文上の1サービング、約113〜170g)増えるごとに、2型糖尿病の発症率は20%高くなると推定された。・焼く・茹でる・マッシュポテト:摂取量の多さと2型糖尿病発症リスクに明確な関連は見られなかった。
じゃがいもはでんぷんを多く含み、高GI・高GL(※)の食品であるため、この「油で揚げなければリスクが明確に高まらない」という結果は注目に値する。
13の前向きコホート研究(計約58万7千人)をまとめたメタアナリシスでも、「油で揚げていないじゃがいも」では、2型糖尿病リスクの明確な上昇は認められなかった。
一方、2型糖尿病発症リスクとの関連が推定された「フライドポテト」は、調理で脂肪(油)や塩分が加わることに加え、高温の油で揚げる過程でAGEsなどの物質が生じることがリスク上昇の一因として考えられている。
※いずれも食後の血糖値に与える影響を示す指標。「GI(グリセミック・インデックス)」は、炭水化物を含む食品を食べた後、血糖値がどの程度上がりやすいかを示す指標。GL(グリセミック・ロード)は、GIに1食あたりに含まれる炭水化物量を加味した指標で、実際に食べる量を踏まえて血糖値への影響をみるもの。高GI・高GL食品とは、食後の血糖値を上げやすく、1食あたりの量を含めても血糖値への影響が大きい食品を指す。
「全粒穀物」などへの置き換えでリスクが低下
研究では、日常の食事で「週に3皿分相当のじゃがいもを全粒穀物(全粒粉のパスタ、パンなど)や白米など別の食品に置き換えた場合、2型糖尿病の発症リスクがどう変わるか」の推定も行っている。
特にリスク低下との関連がみられたのが、食物繊維などを豊富に含む全粒穀物への置き換えである。1週間あたりのじゃがいも摂取量を3皿分相当減らし、その分を全粒穀物に置き換えた場合、以下のようにリスクが下がると見積もられた。
・じゃがいも全体を全粒穀物に置き換える:リスクが8%低下する。・焼く・茹でる・マッシュポテトを全粒穀物に置き換える:リスクが4%低下する。
・フライドポテトを全粒穀物に置き換える:リスクが19%低下する。
また、フライドポテトの代わりに「非でんぷん性野菜」や「豆類」を選んだ場合も、リスクの低下と関連していた。
なお、今回の分析では、じゃがいもを全粒穀物のひとつである「玄米」に置き換えても、全粒穀物全体でみられたような明確なリスク低下は示されなかった。これは、米国人集団において玄米の摂取量が比較的少なかったことや、対象集団でよく食べられていた全粒穀物、たとえば全粒小麦などに比べて、玄米の食物繊維量が少なかったことが背景にある可能性がある。
じゃがいもから白米への置き換えには注意が必要 かえってリスク上昇も
一方で、白米への置き換えには注意が必要である。今回の分析では、日常の食事のうち「週に3皿分相当」のじゃがいも全体、または焼く・茹でる・マッシュといった油で揚げないじゃがいもを「白米」に置き換えた場合、かえって2型糖尿病の発症リスクが高くなるという推定結果も示された。
白米を食べた後に比べて、じゃがいもを食べた後の方が食後のインスリンレベルが低かったとする別の臨床データもあり、じゃがいもを避ける代わりに白米を食べることは、2型糖尿病発症リスクの観点では望ましい置き換えではないと推定される。
制限するのではなく「工夫を楽しむ」意識で
今回の研究は、「じゃがいもを食べてはいけない」と、じゃがいもを食生活から排除することを示すものではなく、習慣としてのじゃがいもの食べ方、特にフライドポテトのような揚げ調理の頻度に目を向ける大切さを物語っている。分析データから読み取れるのは、次のような工夫である。
1. フライドポテトは頻度を抑える:週に何度も食べる習慣を避ける。2. 油で揚げない調理法を選ぶ:じゃがいもを食べる際は「茹でる」「焼く」を中心に。
3. 主食は全粒穀物の選択肢を増やす:白米だけに偏らず、全粒穀物を取り入れる。
全粒穀物には、全粒粉のパンやパスタ、オートミール、大麦、もち麦・押し麦などがある。2型糖尿病の予防のためには、たとえば毎食主食に白米を食べている人であれば、週のうち1日は麦ごはんにする、パンにするなら全粒粉入りのものを選んでみる、といったことから始めてみるのもいいだろう。「つらい制限」ではなく「工夫を楽しむ」意識で、ぜひ前向きな食生活を。
■参考
記事の内容(HbA1c表記や医師の所属など)は掲載日時点のものです。 本サイトに掲載されている記事・写真・図表の無断転載を禁じます。 治療や療養についてはかかりつけの医師や医療スタッフにご相談ください。
2型糖尿病の関連記事
- じゃがいもの「調理法」が鍵 米研究から見えた糖尿病リスクと主食の選び方
- 薬は影響する⁉ GLP-1受容体作動薬の使用者に生じる嗅覚/味覚障害
- 中年期の筋トレ習慣が糖尿病リスク低下につながる
- 熱中症対策の落とし穴、ペットボトル症候群にご用心 理想の水分補給とは
- 生活習慣の改善で複数の病気を抱えるリスクが低下
- 間欠的断食は糖尿病に有効か? 2型患者と予備群で検証
- 子供の2型糖尿病、有病率は想定を上回る可能性~全米小児健康調査
- 糖尿病患者の感染症リスクに警鐘
- 糖尿病患者のBMI、腎機能に影響するのは平均値より変動幅 ~日本人の患者6,700人を対象に検討~
- 2型糖尿病治療薬「マンジャロ」の適正使用を推進 日本イーライリリーが不適切使用や違法転売に注意喚起
