糖尿病セミナー

31. 痛風・高尿酸血症と糖尿病

2014年6月 改訂

尿酸値が高ければ糖尿病備群でも要注意

 高尿酸血症と糖尿病は併発しやすいのですが、実際には、糖尿病のコントロールが悪くて血糖値が高いと、ふつう尿酸値は少し下がります。このため、激しい痛風発作があり、なおかつ血糖値も著しく高いという患者さんはそれほど多くはありません。最近、痛風になりやすい遺伝子と糖尿病になりやすい遺伝子がたくさんわかってきましたが、それらは互いに異なります。
 このような理由で痛風発作は、糖尿病の人よりもむしろ、糖尿病になる前段階の耐糖障害の時期に併発することが多いのです。耐障害のときには、糖尿病特有の合併症(三大合併症)は少ないものの動脈硬化は進行しやすく、高尿酸血症と重なるとさらにその進行が早まります。
 尿酸値が高いと指摘されたら、たとえ糖尿病ではなく糖尿病備群だとしても、尿酸値や血糖値の積極的な管理が大切です。

食事と運動で尿酸と血糖をコントロール

 糖尿病と高尿酸血症の患者さんに共通することで一番目立つのは、肥満している人が多いことです。肥満糖尿病の人が減量すると血糖値が下がることはよくありますが、それと同じように、太り気味で尿酸値が高い人が減量すると、尿酸値が低下してきます。もし、尿酸値や血糖値が高く、肥満しているのであれば、治療ではまず、減量することが基本になります。

食事は第一に、カロリーオフ

 肥満解消の基礎は食事です。尿酸値を低くする食事の基本は、その人の体格や消費活動量にあったカロリーで、バランスよく栄養を摂ることです。これは糖尿病の食事療法と全く同じことです。医師や栄養士に相談しながら、からだに良い食生活を送ってください。
 なお、減量を急ぐあまり、絶食するなど極端に摂取カロリーを減らしすぎると、体内でエネルギー源として脂肪が利用される結果、ケトン体が発生します(ケトーシス)。血液中のケトン体濃度が高くなると尿酸は排泄されにくくなり、尿酸値が逆に上昇してしまいます。また、急な減量で細胞が壊れ、核酸からプリン体が放出されることからも尿酸値が上がります。

プリン体を摂りすぎない

食品中のプリン体含有量
 以前は尿酸値が高いと、プリン体を多く含む食品を食べないことが一番大切だと思われていたのですが、最近は摂取カロリー制限が第一で、プリン体摂取制限はそれほど厳しくいわれなくなりました。プリン体は、体内で作られる量のほうが、食べ物から直接摂り入れる量よりもずっと多いためです。
 とはいっても、プリン体を多く含む食品を好んで食べるのはよくありません。動物の内臓や魚の卵などは、控えめにしましょう。肉料理の場合プリン体は肉汁に溜まりますので、肉汁は飲まずに残しましょう。

水分をたっぷり摂って

 水分を多く摂ると尿の量が増え、尿とともに尿酸が排泄されやすくなります。腎機がかなり低下していたり心臓病などがない限り、1日尿量2リットル以上を目安に飲んでください。ただし、飲んでよいのは水かお茶です。

アルコールは極力控える

 尿を増やすのが目的ならアルコールを飲んでもよいのではないかと思われるかもしれませんが、それは大きな間違い。アルコールには尿酸の産生を増やす作用があり、また、尿酸の排泄を悪くする血液中の乳酸値も上昇させてしまいます。
 飲酒は高尿酸血症の主要原因です。とくにビールはプリン体を多く含んでいるので、一番よくありません。もちろん糖尿病があれば、飲酒自体、主治医の許可が必要です。

野菜類をちゃんと食べる

 野菜を多く食べると尿がアルカリ性になり、尿中の尿酸が溶けやすくなって、尿路結石の形成を防ぎます。野菜類は糖尿病の治療にもよいので、積極的に献立に加えていきましょう。

きつすぎない運動を継続する

 運動は肥満解消になり、尿酸コントロールには重要です。ただし息が切れるほどきつい無酸素運動では、エネルギーを出す ATP(アデノシン三リン酸)が再生されず尿酸になってしまうので、尿酸値が上がります。運動療法もやはり糖尿病の場合と同じで、毎日少しずつ、適度なレベルで続けることが大切です。

それでも尿酸値が高ければ薬が必要です

 食事や運動に気をつけても尿酸値が分に下がらず痛風が起きる場合は、薬で治療します。また、痛風はなくても尿酸値が9mg/dL以上なら、痛風と合併症の防のために薬物治療を始めます。糖尿病・耐障害、腎障害、尿路結石、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、虚血性心疾患などがある場合には、8mg/dL以上から薬物治療がすすめられます。
 尿酸値を下げる薬は、尿酸の産生を抑えるタイプと排泄を促進するタイプの2種類があり、患者さんに合わせて処方されます。尿酸コントロールの目標は、尿酸が血液に溶解する限界(7mg/dL)を下回った状態に保ち続けることで、そのために6mg/dL以下が目安となります。
※ 4.6〜6.6mg/dLにコントロールすると、最も痛風になりにくいという成績があります。

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