糖尿病セミナー
26. 食事療法のコツ(3)
腎症のある人の食事
2016年12月 改訂
監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生
編集
東邦大学名誉教授
藤沢御所見病院糖尿病科 磯貝 庄 先生
栄養指導
藤沢御所見病院栄養管理室
相馬由希子先生・藤澤聖子先生
初版栄養指導
東邦大学医学部付属大森病院栄養部
本間清貴先生・森本修三先生
*このテキストは、「糖尿病腎症の食品交換表 第3版」(編著者:一般社団法人日本糖尿病学会、発行所:株式会社文光堂、2016年発行)に基づき、一部内容を引用して作成しています。日本糖尿病学会編・著「糖尿病腎症の食品交換表」に関する記載・記述については、一般社団法人日本糖尿病学会の引用許可を得ています。
転用などを行う場合は必ず、該当する部分のデータあるいはプリントアウトを添付するなどして、同学会の引用許可を得てください。
腎臓をいたわる食事療法を始めます
糖尿病腎症は、糖尿病の三大合併症のひとつで、腎臓の機能が少しずつ低下する病気です。腎臓は、血液中の老廃物をろ過し、尿として排泄する臓器です。腎症が進行すると、腎臓がほとんど働かない腎不全になり、器械で血液をろ過する、人工血液透析療法が必要になります。糖尿病腎症の治療では、その進行の程度(病期)にあわせた食事・運動療法が必要になります。薬物療法も同様です。
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※腎症についての説明は、このコーナーの「糖尿病による腎臓の病気」のページをご覧ください。
食事療法の進め方が変わってきます
腎症の食事療法は、次の表のように、それまでとは内容が変わってきます。
糖尿病の食事療法と糖尿病腎症の食事療法の比較
たんぱく質を制限します
一番の相違点は、たんぱく質の摂取を制限することです。たんぱく質は、炭水化物や脂質と並び、必要不可欠な栄養素ですが、なぜその摂取が制限されるのでしょうか?体内の余分なたんぱく質は、尿素などの老廃物となり、腎臓でろ過されて尿中に排泄されます。腎臓の機能が低下している人がたんぱく質を摂り過ぎると、老廃物を排泄するための腎臓の負担が大きくなり、そのことが腎症の進行を早めてしまうのです。
腎症の治療は、たんぱく質の摂取制限などにより、腎臓の負担を軽くして、残っている腎機能をできるだけ長く保ち、腎不全への進行を防ぐことが目的です。
炭水化物・脂質を増やします
単にたんぱく質の摂取を減らしただけでは、指示エネルギー量を満たすことができなくなります。そこで、たんぱく質を減らした分は、炭水化物や脂質の比率を増やして補います。たんぱく質は、血液や筋肉を作り出すなど、栄養素としての役割があります。一方、ヒトのからだはエネルギーの補給を最優先させますので、炭水化物や脂質によるエネルギーの補給が十分でないと、たんぱく質が本来の目的に使われずに、エネルギー源として利用されてしまいます。
それを防ぐため、必要な炭水化物・脂質は十分に摂らなければいけません。炭水化物と脂質を増やすことで、たんぱく質は栄養素として効率的に活用され、腎臓に余計な負担をかけずにすむようになります。
炭水化物を増やすことで血糖コントロールが乱れるようなら、薬物療法など他の方法でコントロールします。
たんぱく質の種類にも配慮を
牛肉・豚肉・鶏肉・マグロ(赤身)などの動物性たんぱく質は、アラニン、アルギニン、グリシンなど腎臓内の血流を増やすアミノ酸を多く含むため、腎臓により大きな負担をかけます。そこで腎臓に負担をかけることの少ない大豆製品などの植物性たんぱく質や、鶏卵、牛乳、チーズなどの動物性たんぱく質を増やすことがすすめられます。
もともと動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の比は6:4ぐらいにするのがよいとされていますが、腎症の食事療法ではこのバランスを逆にして4:6とすることも考慮します。ただし、たんぱく源が偏ると必須アミノ酸(体内で合成できず、摂取したたんぱく質から得なければならない)が不足することもあるので注意が必要です。
牛肉・豚肉・鶏肉・マグロ(赤身)などの動物性たんぱく質は、アラニン、アルギニン、グリシンなど腎臓内の血流を増やすアミノ酸を多く含むため、腎臓により大きな負担をかけます。そこで腎臓に負担をかけることの少ない大豆製品などの植物性たんぱく質や、鶏卵、牛乳、チーズなどの動物性たんぱく質を増やすことがすすめられます。
もともと動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の比は6:4ぐらいにするのがよいとされていますが、腎症の食事療法ではこのバランスを逆にして4:6とすることも考慮します。ただし、たんぱく源が偏ると必須アミノ酸(体内で合成できず、摂取したたんぱく質から得なければならない)が不足することもあるので注意が必要です。
塩分を制限し血圧をコントロールします
腎症が起きるとからだに塩分が溜まりやすくなり、その結果、血圧が上昇します。高血圧は、腎症の進行を加速させる重大な原因のひとつです。このため、腎症の食事療法では、食塩の摂取も制限します。カリウム摂取にも注意が必要です
腎症が進行すると、カリウムが尿中へ排泄されにくく、血液内のカリウム濃度が高くなります。カリウムが多過ぎると、頻脈〈ひんみゃく〉や心不全が起きやすくなりますので、やはり摂り過ぎに注意します。コンテンツのトップへ戻る ▶
- 01. 糖尿病とは「基礎編」
- 02. 食事療法のコツ(1) 基礎
- 03. 運動療法のコツ(1) 基礎
- 04. 高齢者の糖尿病
- 05. インスリン療法(2型糖尿病)
- 06. 血糖自己測定とは
- 06_1. 生活の中にどう生かす血糖自己測定 『生活エンジョイ物語』より
- 07. 肥満と糖尿病
- 08. 小児の糖尿病(1) 基礎
- 09. 薬物療法(経口薬)
- 10. 糖尿病生活Q&A
- 11. 糖尿病用語辞典(より簡潔に)
- 12. 病気になった時の対策 シックデイ・ルール
- 13. 結婚から、妊娠・出産
- 14. 糖尿病による腎臓の病気
- 15. 糖尿病による失明・網膜症
- 15_1. 眼科医からみた失明しないためのアドバイス 『生活エンジョイ物語』より
- 16. 糖尿病と脳梗塞・心筋梗塞
- 17. 足の手入れ
- 18. 糖尿病による神経障害
- 18_1. 糖尿病からの危険信号神経障害 『生活エンジョイ物語』より
- 19. 糖尿病の検査
- 20. 低血糖
- 21. 食事療法のコツ(2) 外食
- 22. 糖尿病の人の性
- 23. 口の中の健康
- 24. 動脈硬化と糖尿病 メタボリック シンドローム(代謝症候群)
- 25. 糖尿病と感染症
- 26. 食事療法のコツ(3) 腎症のある人の食事
- 27. 糖尿病と高血圧
- 28. 小児の糖尿病(2) 日常生活Q&A
- 29. 運動療法のコツ(2) 合併症のある人の運動
- 30. 骨を丈夫に保つには
- 31. 痛風・高尿酸血症と糖尿病
- 32. 糖尿病予備群
- 33. 小児2型糖尿病
- 34. 糖尿病とストレス うつとの関連、QOLの障害