アンケート調査を実施中 10月31日まで
1型糖尿病の根治を目指す認定NPO法人「日本IDDMネットワーク」(井上龍夫代表)は、「バイオ人工膵島移植」についてアンケート調査を実施している。1型糖尿病の根治を現実のものにするために、多くの参加を呼びかけている。
「バイオ人工膵島移植」が1型糖尿病の根治の近道
1型糖尿病は、インスリンを産生するβ細胞が免疫細胞によって攻撃・破壊されることで発症する疾患。β細胞は膵臓の膵島にある。膵島移植は膵島を分離して移植する治療法で、1型糖尿病患者をインスリン治療から解放する唯一の根治療法だ。
しかし、膵島移植には大きな課題がある。そのひとつは膵島を提供するドナーの不足だ。膵島移植が効果的な治療であることは実証されているが、深刻なドナー不足のため、日本での実施数は伸び悩んでいる。
そこでこの課題を一気に解決する新たな治療法の開発が進行している。それが、異種移植による「バイオ人工膵島移植」の開発だ。
「バイオ人工膵島移植」は、ヒト移植用に無菌状態で飼育されたブタの膵島細胞をカプセルに閉じ込め、患者の腹腔内に移植する治療法。移植した膵島がインスリンを分泌する。1型糖尿病を根治させるための新たな選択肢になる。
「バイオ人工膵島移植」であれば、膵島を大量に安価に入手でき、膵島を特殊なカプセルに封入することで免疫細胞の攻撃を回避できる。多くの患者が膵島移植を受けられ、免疫抑制剤の必要もないと考えられている。
1型糖尿病を「根治」 患者と家族を生涯の負担から解放
研究は、国立国際医療研究センターや福岡大学などで行われている。ヒトを対象とした臨床試験が1日も早く開始されるのを目指し、日本IDDMネットワークは「バイオ人工膵島移植プロジェクト」を展開。「バイオ人工膵島移植」を研究・開発している大学・研究機関の研究費を助成し支援している。
このプロジェクトではこれまで、国立国際医療研究センター、福岡大学、京都府立大学に、総額1億5,000万円の研究助成を行ってきた。財源となったのは、1型糖尿病の患者や家族、支援者からの「1型糖尿病研究基金」への寄付と、佐賀県庁へのふるさと納税だ。
日本IDDMネットワークは、1型糖尿病の社会的な認知度の向上と理解を促し、一刻も早い「根治」の実現により患者と家族を生涯の負担から解放することを目的に活動しているNPO法人。
これまでもiPS細胞からβ細胞を作り出すなど、先進的な研究に取り組む研究者や団体へ研究費の助成を行っている。「バイオ人工膵島移植」は、もっとも早く実現が可能な先端研究と考えている。
人を対象とした臨床研究も計画中
こうした研究助成を受け、明治大学や京都府立大などのチームは、ヒトへの移植用のブタを作製するのに成功。
動物の臓器や細胞を人に移植する「異種移植」に関する国の指針では、隔離した清潔な環境で育て、約40種類のウイルスの検査を行い、人への感染を防ぐなど安全性を確保することが求められている。研究では「感染症を排除した医療用ブタの供給体制整備」の条件をクリアした。日本IDDMネットワークは、「無菌室を備えた細胞加工施設の整備」にも助成している。
研究プロジェクトを率いる国立国際医療研究センター研究所膵島移植プロジェクトの霜田雅之氏によると、バイオ人工膵島移植の研究は進歩しており、糖尿病マウスを用いた実験では、カプセル化した膵島を移植して血糖降下作用を確認した。人を対象とした臨床研究も3〜5年以内に始めたい意向だ。
同NPO法人は2014年度より佐賀県庁への「日本IDDMネットワーク指定ふるさと納税」に取り組み、2016年度には1億1,000万円の寄付の実績を得た。先進研究の推進や治療法の開発のために「日本の寄付文化を変えた」と大きく注目されている。
日本IDDMネットワークが総額1億5000万円の研究助成を行った「バイオ人工膵島移植プロジェクト」について詳しく解説。
1型糖尿病の根治治療が1日も早く実現するよう、研究のサポートをする募金を呼びかけている。
1型糖尿病研究基金で寄付呼びかけている研究の一覧を見ることができる。なお、認定NPO法人である日本IDDMネットワークへの寄付は、税制優遇の対象となる。
[ Terahata ]