日差しの強い夏の訪れに合わせて、紫外線の浴びすぎによる健康への影響についての関心が高まっている。紫外線の浴びすぎは、日焼け、シワ、シミなどの原因となる。
紫外線には良い影響もある。紫外線と上手に付き合う方法をご紹介する。
体への影響力の強い紫外線
太陽からはさまざまな波長の光が放出されている。このうち、地上に達する290nm〜400nmの波長域が紫外線で、波長域が290nm〜320nmの紫外線が「UVB」、320nm〜400nmの紫外線が「UVA」と呼ばれている。
波長が短いほど体に対する影響が強いが、波長が長いほど皮膚の深くに入りこむという性質もある。
UVAは皮膚の奥、真皮層にまで届き、大きなシワやシミの原因になる。一方、UVBは表皮に日焼けを起こし、シミにつながる。
UVBは体に強い影響力のある紫外線だ。海水浴などでの真っ赤な日焼けの場合、UVBの影響が大きい。
UVBはほとんどが大気中のオゾンに吸収され、地上にはごく一部しか到達しない。しかし、1980年代にオゾン層の破壊が明らかになってから、皮膚がんなどの有害性が注目されるようになった。
かつては健康のシンボルにようだった日焼けのイメージは一転し、また、皮膚に対する美容上の観点から、多くの人は紫外線を避けるようになった。
ビタミンD生成のために紫外線が必要
紫外線をある程度浴びることは、健康を維持するために必要であることにも注意する必要がある。紫外線を浴びることで、体内でビタミンDが生成されるからだ。
ビタミンDには、食物からのカルシウム吸収を促し、血液中のカルシウム濃度を一定の濃度に保つ働きがあり、骨格を健康に維持するのに役立つ。骨量を保ち、骨粗鬆症を防ぐためにビタミンDは必須だ。
最近の研究ではビタミンDには、肝臓がん、肺がん、乳がん、前立腺がんなど、さまざまながんに対する予防効果があることもわかってきた。
厚生労働省の調査によると、食品からとるビタミンDの必要量の目安は5.5µg程度。それに対して、1日に必要なビタミンDの量は15µg以上とされている。足りない10µgのビタミンDは、太陽光線を浴びて体内で生成する必要がある。
紫外線の量は季節や場所、時間帯によって変動し、皮膚のタイプによっても変わるが、1日に必要な日光照射時間は、夏であれば15〜30分程度だ。
ビタミンDの不足を防ぐ工夫
顔と両手だけでなく、両腕、足などの部分に太陽光を当てると、照射面積は2倍になり、必要なビタミンD量に対する照射時間は半分になる。
ビタミンDは6種類あり、そのうち体に必要なのはビタミンD
2とビタミンD
3だ。多くの魚類には、ビタミンD
3が豊富に含まれている。魚を食べることで、ビタミンDを十分に体内に取り入れることができる。
魚類を十分に摂取しておらず、必要以上に紫外線を避けていると、ビタミンD不足による弊害が生じかねない。母乳で育てられている小児、外出を好まない高齢者、さらには紫外線を極端に避けている女性などはとくに注意が必要となる。
紫外線と上手に付き合い、ビタミンDの不足が起こらないように工夫をしよう。
紫外線に対策するために必要なこと
紫外線の浴び過ぎにも注意が必要だ。紫外線を浴び過ぎると、皮膚を乾燥させてシワやシミの原因になるだけでなく、細胞のDNAに傷をつけることがある。
細胞にはそれを修復する機能があるが、繰り返し傷つけられていると、遺伝子の突然変異が起こりやすくなる。その部分がんの発生に関わる遺伝子であると、皮膚がんが起こりやすくなる。
紫外線に対策するために必要なのは「紫外線の強さを意識する」こと。紫外線が強くなるのは5月から8月にかけてだ。また、緯度が低いほど紫外線量は多くなる。紫外線の多い日にはいっそう気をつけるようにしたい。
国立環境研究所地球環境研究センターのサイトでは、「特に皮膚が炎症を起こす最少の時間を示し、それ以上の日光照射は避けたほうが良い」という目安が公開されている。
皮膚のタイプで紫外線の影響は異なる
紫外線の影響は、皮膚のタイプによっても異なる。そのため「自分の肌タイプを知ること」も紫外線対策のひとつとなる。皮膚のタイプはメラニンの色素の量によって決められる。
紫外線を浴びるとすぐに赤くなるが、その後、あまり肌に色がつかないのはスキンタイプII型で、紫外線をブロックする「メラニン色素の量が少ないタイプ」だ。適度に赤くなり、皮膚の色が徐々に黒くなるのはスキンタイプIII型。比較的色の濃い人はスキンタイプIV型。日本人にはIII型が多い。
紫外線を浴びるとすぐに赤くなる人は注意が必要だ。一時に大量の紫外線を浴びると日焼け(サンバーン)を起こしてしまう。また、少量でも長年にわたって浴び続ければ皮膚の老化が起こりやすくなる。
紫外線に打ち勝つ4つの方法
日焼けしてからローションなどで肌の手入れをすると、ひりひりとした日焼けの痛みを抑えるなどの効果を得られる。
しかし、皮膚の老化を防ぐなどの長期的な予防効果は少ない。長期的な健康への悪影響予防のためには、紫外線の浴びすぎを防止することが重要だ。
紫外線の影響は、地域や個人によって異なるが、紫外線の影響が強いと考えられる場合には、状況に応じて、次のような対策を行うことが効果的だ。
1. 不必要な日光浴を避ける
太陽の下、屋外でウォーキングなどの運動を楽しむのは、心身のリフレッシュにとても有意義だが、小麦色の肌を求めて海岸で身体を焼くというような、不必要な日光浴は避けた方が良い。
2. 日陰を利用する
外出したときなどには、日陰を利用するのも良い。しかし、紫外線は太陽からの直接のものだけではなく、空気中で散乱したものや、地面や建物から反射したものもある。
直接日光のあたらない日陰であっても紫外線を浴びていることは忘れないようにしたい。
3. 日傘を使う、帽子をかぶる
日傘、広いつばが全周にある帽子、長袖、長ズボンなどにより、皮膚に到達する紫外線を減らすことができる。
ただし、日傘や帽子も、太陽からの直接の紫外線は防げるが、大気中で散乱している紫外線まで防ぐことはできない。
4. 日焼け止めを上手に使う
顔などを衣類などで覆うことのできなければ、日焼け止めを使うのが効果的だ。
日焼け止めはPA分類とSPF値の表示がある。PAは主としてUVAを防ぐ指標で、SPFは主としてUVBを防ぐ指標となる。PAとSPFを紫外線量やシーンに応じて使い分けよう。
以前は塗ると白くなる製品が多かったが、最近では改良が進み、使いやすいものが増えている。
日焼け止めはしっかり・たっぷり・まんべんなく塗ることが大事だ。また早めの塗り直しもしよう。
紫外線情報分布図(気象庁)
ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報(地球環境研究センター)
有害紫外線モリタリングネットワーク(国立環境研究所)
皮膚科Q&A(日本皮膚科学会)
[ Terahata ]