ウォーキングなどの運動は毎日行うのが理想的だが、それが無理なら、週末にまとめて行うだけでも健康増進の効果を得られる。ただし毎日行うと、メンタルヘルスの効果まで得られるという研究も発表された。
ウォーキングの時間をとれない? 心配ご無用
いくら健康に良いとを理解していていも、現代人は忙しく、運動習慣のない人がいきなりウォーキングなどの運動の時間をつくるのは大変だ。現状の生活スタイルを変えるのもなかなか難しい。「運動を始めてみたが、三日坊主で終わってしまった」という人も多いのではないだろうか。
平日にウォーキングをする時間をなかなかとれない人でも、運動を週末にまとめて行えば、健康増進の効果を期待できるという研究が、米国医師会雑誌「JAMA」に発表された。
土日の2日間の週末に、推奨されている運動量をこなせば、死亡リスクや心血管疾患リスク、がんリスクなどが低下するという。
ウォーキングなどの運動の効果は毎日続けている人がもっとも高かったが、土曜日や日曜日にまとめて行うだけでも、かなりの効果を見込めるという。運動はいつ行っても、まったく運動しない場合に比べ、大きな恩恵をもたらすことが明らかになった。
週末だけの運動でも健康増進の効果を得られる
シドニー大学などの研究チームは、イングランドとスコットランドに在住している6万3,591人の成人を対象に、1994~2012年に調査を行った。
研究チームは、週末にまとめて推奨されている運動量をこなしている人々を「ウィークエンド運動家」と呼称した。合計で150分間の中強度の運動あるいは75分間の高強度の運動を1~2回のセッションで達成することが推奨された。
調査期間中に、全体で8,802件の死亡がみられて、心血管死は2,780件、がん死は2,526件だった。
解析した結果、まったく運動をしていない人に比べ、「ウィークエンド運動家」は、総死亡リスクが30%、心血管疾患死リスクは40%、がん死リスクは18%、それぞれ低下することが明らかになった。
一方で、「1週間かけてまんべんなく運動する人」では、総死亡リスク35%、心疾患のリスクは41%、がん関連のリスクは21%、それぞれ低下した。
しっかり運動量をこなすことが必要
「週末の日曜日と土曜日のみウォーキングなどをしただけでも、運動を毎日行った場合に及ばないまでも、かなりの健康増進の効果を得られることが明らかになりました」と、シドニー大学公衆衛生大学院健康科学部のエマニュエル スタマタキス氏は言う。
一方で、週末ごとに激しい運動を行うのもなかなか大変だ。運動の推奨量を達成できていな場合はどうなるだろう?
「週に2日以上は運動するが推奨量未満」の人では、心疾患のリスクが37%、がん関連のリスクが14%、それぞれ低下するにとどまった。やはり運動はしっかりと推奨量をこなすことが重要だ。
ウォーキングを毎日行うとメンタルヘルスも向上
運動は身体的な健康増進をもたらすだけでなく、メンタル面でも恩恵を得られる。運動を毎日続けると、メンタルヘルスが向上し、職場の雰囲気も良くなり、家庭円満にもつながるという研究も発表された。
米国のノーザンイリノイ大学の研究チームによると、仕事と生活のバランスを改善するために、毎日の運動が役に立つという。
1日に1万歩以上のウォーキングをし、2,100kcal以上を消費している人は、睡眠の質が向上し、職場でのトラブルが少なく、家庭も円満である傾向がみられた。
米国心臓学会(AHA)は、1日に8,000~10,000歩のウォーキングをすることを推奨している。「運動を毎日続けると、睡眠が改善し、職場や家庭での有害な行動を抑制できるようになる」と、研究者は述べている。
ただし、運動によるメンタルヘルスの効果は、週2日程度行っただけでは得られにくく、毎日行うことが必要だという。
最大のリスクは、まったく運動を行わないこと
運動習慣のない人が、ウォーキングなどを始めるときは、慣れてきたらなるべく毎日続けると、体と心の健康を得られるようになる。
それが無理な人は、まずは「ウィークエンド運動家」から始め、週末だけでも運動に取り組んでみてはいかがだろう。運動不足の解消と気持ちのリフレッシュにつながる。
「健康にとって最大のリスクとなるのは、まったく運動を行わないことです。週単位で運動をしやすい時間帯をみつけて、とにかく運動を始めることをお勧めします。続ければ必ず結果が付いてきます」と、スタマタキス氏はアドバイスしている。
'Weekend Warriors' share health benefits(シドニー大学 2017年1月10日)
Work troubles, sleeplessness turning you into a jerk?(ノーザンイリノイ大学 2017年2月2日)
Association of "Weekend Warrior" and Other Leisure Time Physical Activity Patterns With Risks for All-Cause, Cardiovascular Disease, and Cancer Mortality(JAMA Internal Medicin 2017年1月9日)
[ Terahata ]