日中は30℃、夜間でも25℃を超えることが珍しくなくなった日本の夏。ウォーキングなどの運動をしている人にとって、夏はしのぎにくい時季だ。暑い夏に安全に運動をするために守りたいポイントをまとめた。
暑さ対策をすれば運動を続けられる
「夏に増える熱中症はひどい場合は生命に関わる疾患です。しかし、運動は継続することが大切です。十分な暑さ対策をしていれば、必要以上におそれる必要はありません」と、米国のロヨラ大学保健システムスポーツ医学部のピエトロ トニノ教授は言う。
トニノ教授は暑い夏に安全に運動するために、次のことをアドバイスしている――
吸湿性や通気性の良いものを着る
熱中症を予防するための服装のポイントは、(1)体の熱をスムーズに放射させる機能のあるもの、(2)外気からの熱の吸収を抑えるもの。
暑い時には服装は軽装にし、吸湿性や通気性の良い素材を使ったものを使用する。屋外で直射日光がある場合には、色の濃いものを身に付けるのを避けて、帽子を着用しよう。
運動する時間帯に注意
日中の暑い時間は避け、朝や夕方の涼しい時間帯を利用すると効果的だ。木陰で休憩を挟みながらウォーキングなどの運動を行うと安全だ。特に運動中の心拍数がいつもより高い場合には注意が必要となる。
暑いときは水分補給が欠かせない
汗は体から熱を奪い、体温が上昇しすぎるのを防いでくれる。しかし、失われた水分を補わないと脱水になり、体温調節能力や運動能力が低下する。そのため暑いときにはこまめに水分を補給が必要となる。
汗からは水分と同時に塩分も失われる。塩分が不足すると熱疲労からの回復が遅れる。0.1〜0.2%程度の塩水を補給すると良い。
水分の取りかたとしては、基本的には出た分を補うことが良いが、実際に運動中にその量を完全に補うことは難しい。
まず運動をする20〜30分前ぐらいにコップ1杯程度の水分を補給し、あとは、運動中も頻繁にコップ半分ぐらいの水分を補給する。血圧の高い人や心臓に問題のある人では15分に1回くらい水分補給を行う。
運動の前後に体重をはかる
運動前後に体重をはかることで、失われた水分量を知ることができる。水分補給量の目安として、運動による体重減少が2%を超えないように注意する。運動の前後に、また毎朝起床時に体重をはかる習慣を身に付け、体調管理に役立てよう。
スポーツドリンクに注意
水分補給にスポーツドリンクを利用する人が多いが、エネルギー補給の目的で糖質を含んでいるものが多いので、減量や血糖コントロールを目的としたウォーキングなどでは減量効果が減じてしまう。
スポーツドリンクの特徴は、発汗などで失われるナトリウム、カリウムなどの電解質を含んでおり、吸収を早めるために体液に近付けた浸透圧にしてあること。必要な場合は、糖質を含まない低カロリーのものを利用する方法もある。
暑いときは無理な運動をしない
気温が高いときほど、また同じ気温でも湿度が高いときほど、熱中症の危険性は高くなる。また、運動強度が高いほど熱の産生が多くなり、やはり熱中症の危険性は高くなる。
暑いときに無理な運動をしても効果は上がらない。環境条件に応じて運動強度を調節し、休憩を適宜とり、適切な水分補給を心がけることが重要だ。
薬を飲んでいる人は要注意
利尿剤やSGLT2阻害薬など尿の量が増える薬を飲んでいる人は熱中症になりやすい傾向がある。このような薬を飲んでいる人は、暑い中で運動をする前に医師に相談しよう。
体を熱さに慣れさせる
高温多湿の環境での体温調節能力に、暑さへの慣れ(暑熱順化)が関係する。急に暑くなったときは運動を軽減し、暑さになれるまでの数日間は、短時間の軽い運動から徐々に増やしていくようにしよう。
体調不良は事故のもと
体調が悪いと体温調節機能も低下し、熱中症につながりやすい。疲労、睡眠不足、発熱、かぜ、下痢など、体調の悪いときには無理に運動をしないことだ。
体力の低い人や、糖尿病の人、暑さに慣れていない人、熱中症を起こしたことのある人などは、暑さに弱いので注意が必要だ。
肥満を解消して暑さに強くする
肥満の人は標準体重の人に比べて、同じ運動量でも熱の産生量が多い。体脂肪が増えすぎると、熱が外へ逃げるのをブロックするので、体温が上昇する原因となる。
血圧が上がりやすい、血糖値が上がりやすいといった体質は変えられないが、肥満は改善が可能だ。肥満を解消することは、健康維持のためにも重要となる。
Beat the Heat: Exercise Safety on Hot Summer Days(ロヨラ大学 2015年5月28日)
[ Terahata ]