早食いの人は肥満になりやすく、逆に良く噛んで食べる人は満腹感を得やすい。「ゆっくり食べると、食事の満足感が向上し、たくさん食べた気持ちになれる」という研究が発表された。
母は正しかった ゆっくり食べると満腹感を得やすい
英国のブリストル大学の研究チームが、食べるスピードと、その後の満腹感について実験を行った。ゆっくり食べた人は、食べ終わった後で満腹感を得やすく、よりたくさん食べた気持ちになれることが判明した。
「子供の頃にお母さんから、“健康のために、もっとゆっくり食べなさい”と言われた経験はありませんか? この格言は正しかったことが証明されました」と、ブリストル大学栄養・行動学部のダニエール フェリディ氏は言う。
逆に、食べるスピードが速い人は、より多くのカロリーを摂取し、体重が増えやすいことが過去の研究でも確かめられている。
ゆっくり食べるとたくさん食べた気持ちになれる
実験には40人のボランティアが参加。参加者に英国の大手スーパーマーケット・チェーンで売られているトマト・スープを飲んでもらった。
研究チームは、どれだけの量を食べたかを視覚的に判断できないように、トマトスープをチューブで口の中に流し込んだ。
1つ目のグループには、トマトスープを2秒で11.8mLを食べ、4秒の休憩を挟むという速いペースで、2つ目のグループには、1秒で5.4mLを食べ、10秒の休憩を挟むという遅いペースで食事をしてもらった。
そして、トマトスープを食べ終えた直後と2時間後に、空腹感を尋ねた。その結果、ゆっくり食べたグループの方が、早食いのグループより満腹感を感じていることが明らかになった。
参加者には食べたトマトスープの量が知らされせていなかった。「自分がどれだけの量のトマトスープを飲んだと思うか?」という質問に対し、ゆっくりペースでトマトスープを飲んだグループは、早いペースで飲んだグループよりも平均108mL多く回答した。
なぜゆっくり食べると満腹感を得やすくなるのか
「ゆっくり噛むことによって、レプチンの血中濃度が上昇することがら影響しています」と、ハーバード大学のアン マクドナルド氏は説明している。
「レプチン」という生理活性物質は、脳に作用して食欲に影響するの働きをする。レプチンは脂肪組織で作られ、食欲の抑制とエネルギー代謝の調節に関わっている。
レプチンは、インスリンの刺激を受けて作り出され、視床下部にある満腹中枢に作用して食欲を抑える。また、交感神経を活性化させて脂肪を燃やし、エネルギーの消費を促すことで肥満を抑制する働きもある。
食事をすると血糖値が高まり、それによって刺激を受けた脂肪細胞からレプチンが分泌される。レプチンは、血流にのって脳の視床下部にあるレプチン受容体へ届き、満腹中枢を刺激する。
食事に20〜30分の時間をかけると効果的
つまり、ゆっくり食べて、レプチンをうまく働かせれば、満腹感を得やすくなり、食べる量を減らしてエネルギーが取り込まれるのを抑制できる。さらに体のエネルギー消費を増やし、エネルギーの過剰な蓄積を防ぐことも可能になる。
レプチンが視床下部に伝わるのは食事をはじめてからおよそ20〜30分後以降なので、食べるのが早いとレプチンが十分に伝わらない。
過去の研究で、ボランティアにカスタードクリームとチョコレートの2種類のクッキーを好きなだけ食べてもらう実験を行ったところ、「味見のテストです」と伝えて、良く味わって食べてもらうと、食べる量が減るという結果を得られた。
「食欲を抑え、食べ過ぎを防ぐために、とにかく食事に時間をかけ、良く味わい、良く噛んで食べると効果的です」と、マクドナルド氏は指摘している。
New NBU publication: Ferriday et al. "Effects of eating rate on satiety: A role for episodic memory?" in Physiology and Behavior(ブリストル大学 2015年7月17日)
Why eating slowly may help you feel full faster(ハーバード大学 2010年10月19日)
[ Terahata ]