高齢者が30分の運動を週に6日行うと、運動の強度が軽いか激しいかに関係なく、死亡リスクが40%低下するという調査結果を、ノルウェーの研究チームが発表した。
1日30分の運動が死亡リスクを下げる 禁煙と同等の効果
高齢者が定期的に運動を行うと、強度にかかわらず1日30分ほどの運動で、健康面で禁煙と同じくらい有益な効果がもたらされることが、80歳以上の高齢者を対象とした大規模研究で明らかになった。
「高齢者が適度に運動をすると、日常で体を動かさないでいるのに比べ、多くのものを得られます」と、ノルウェースポーツ科学大学のインガル ホルメ教授は言う。
研究チームは、ノルウェーで実施されている大規模研究「オスロ研究」に参加した1923~1932年生まれの約2万6,000人を対象に、1972~1973年に健康診断を行い、生活スタイルと運動についての調査に協力してくれる1万5,000人の参加者を募った。
参加者を対象に、体格指数(BMI)、コレステロール値、血圧などを測定し、喫煙の有無を調査した。また、参加者に毎週の余暇時間の身体活動レベルの調査に回答してもらった。
2000年の再調査の際には対象者1万2,700人が存命しており、うち5,700人に対して調査が続行された。12年間に渡り継時的に観察を行った結果、2011年には存命中の対象者は3,600人以下に減少した。
参加者を身体活動レベルにより、座位(テレビを見る/読書)、軽度(散歩/自転車などの活動を週に4時間以上)、適度(適度な運動、スポーツ、ガーデニングなどの活動を週に4時間以上)、活動的(強度の高い運動やスポーツを週に数時間)に区分けた。
運動習慣のある高齢者では死亡リスクが40%低下
研究者らは、調査対象者が70歳代から80歳代にさしかかった2000~2011年に行った運動の効果に着目した。
「運動の強度に関わらず、30分の運動を週6日行うことで、死亡率が40%減少することが示されました」と、ホルメ教授は言う。
解析した結果、運動や身体活動を続けていたグループでは、心血管疾患などのさまざまな病気による死亡のリスクがら低下していることが判明した。
軽い運動を週に1時間以下しか行っていない人では死亡リスクは低下していなかったが、週に1時間以上の運動をしていた人では死亡リスクは32~56%低下していた。
適度な運動や活動的な運動を行っていた男性では、座ったまま過ごす時間が長い男性に比べ、平均して5年長生きであった。加齢による心臓病や脳卒中による死亡リスクの上昇を考慮しても、この傾向は明らかだった。
全体的にみると、週に6日、30分の軽度から活発な運動を行うことで、さまざまな病気による死亡リスクは40%低下することが明らかになった。
高齢者の運動には注意も必要
「運動はさまざまな便益をもたらします。年齢が上昇するにつれ、運動が心肺能力を高め、筋肉量の低下を防ぐのに貢献します。体のバランス能力の維持に役立ち、転倒のリスクを減らします」と、ホルメ教授は説明する。
運動は社会的な相互作用にも有益に働き、うつ病のリスクを下げ、メンタルヘルスの面でも重要な利益をもたらすことは、過去の研究でも確かめられている。
一方、高齢者の運動には注意が伴うことも指摘している。「心筋梗塞や慢性腎臓病などを起こしたことがある」「血圧が高い」「体力が低下している」「バランスが悪くふらつくことがある」「ふだんから運動をしていない」という高齢者は、まずは日常的に歩くことを続けることから始めると、安全に運動を続けられるとアドバイスしている。
「座ったままテレビを見る時間を減らして、楽しみながら続けられる運動を見つけるべきです。1日の決まった時間に運動したり、仲間ともに運動したり、運動の記録をとり家族や友人たちとゴールを競うのも効果です」と、ホルメ教授は指摘している。
Increases in physical activity is as important as smoking cessation for reduction in total mortality in elderly men: 12?years of follow-up of the Oslo II study(British Journal of Sports Medicine 2015年5月14日)
[ Terahata ]