ウォーキングなどの運動習慣のある人は、運動習慣のない人に比べて、高血圧を発症するリスクが低くなることが、平均年齢53歳の約5万7,000人の米国人を対象とした調査で明らかになった。
毎日のウォーキングが血圧を下げる
上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または、下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上であると、高血圧と判定される(家庭血圧では基準はこの数値よりも5mmHg低くなる)。
「ウォーキングなどの運動を毎日続けて、エネルギー消費量をより高める工夫をすると、高血圧のリスクを減らすことができます」と、米ミシガン州のウェイン州立大学のムアーズ アルマッラー氏は言う。
調査は、米国のミシガン州で実施された大規模研究「ヘンリー フォード運動試験」に参加した、運動をする習慣をもつ平均年齢53歳の男女5万7,284人を対象に行われた。
「メッツ」(METs)は運動強度の単位で、安静時(横になったり座って楽にしている状態)を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したもの。
ウォーキングをメッツで示すと、時速6kmで歩くと5メッツ、時速7kmで歩くと7メッツ、時速8kmで歩くと8メッツになる。
参加者は平均して、ピーク時に9メッツに達する運動を習慣として行っていた。調査は4.4年(中央値)続けられ、参加者の61%に相当する3万5,175人が高血圧と判定された。
血圧を下げるための運動として勧められるのは、脈がふだんより少し速くなるくらいの速さで歩く、「少しきつめのウォーキング」だ。6メッツの運動がこれに相当する。
調査では、6メッツの運動を続けていた人は、高血圧の発症率が30%減少したことが明らかになった。
「運動習慣のある人は、運動習慣のない人に比べ、血圧を下がられることが確かめられました。高血圧になりやすい体質の人でも、ウォーキングなどの運動を毎日続けることで、高血圧のリスクを減らすことができます」と、アルマッラー氏は言う。
運動強度を高めると高血圧リスクはより低下
この研究で注目されるのは、12メッツの運動を続けていた人では、高血圧の発症率が50%減少していたことだ。運動はウォーキングに加えて、水泳や自転車こぎ、ウェイトトレーニングなど、さまざまな種類を組み合わせるとより効果的であることが示唆された。
適度な運動には、血管の内皮機能を改善し、血圧を上げる交感神経の働きを弱め、腎臓から塩分を排出しやすくする効果がある。また、血糖や血中脂質の値が改善し、心臓や肺の働きもよくなる。
過去の研究では、1回30分の運動を週2回以上行ったり、1日8,000歩程度のウォーキングを3ヵ月行っただけでも、血圧が低下することが確かめられている。
米国心臓学会によると、米国の成人の3人に1人は高血圧だという。高血圧は心臓病、脳卒中、腎臓病などの深刻な病気の原因になり、これらが相乗して医療費の増加を引き起こす。
なお、運動を実施する上での注意点として、「メディカルチェックを受けて心疾患や心不全などの心臓病の危険性がないことを確認し、個人の基礎体力・年齢・体重・健康状態などをふまえて運動量を設定する必要があります」と、アルマッラー氏は付け加えている。
High fitness level reduces chance of developing hypertension(米国心臓学会 2014年12月17日)
Physical Fitness and Hypertension in a Population at Risk for Cardiovascular Disease: The Henry Ford ExercIse Testing (FIT) Project(米国心臓学会 2014年12月17日)
[ Terahata ]