「自分はまだ若い」と感じている人や、「年をとることを良いことだ」と肯定的に考えている人は、健康に長生きする傾向がある。「病は気から」というが、加齢に対し前向きの気持ちをもつことが、より健康的な生活をおくるための秘訣となることが浮き彫りになった。
「自分はまただ若い」と感じている人は長生きする
「自分はまただ若い」と感じている人は、健康に長生きする傾向があることが、英国のユニヴァーシティ カレッジ ロンドンの研究で判明した。
研究チームは、50歳以上の男女6,489人を対象に調査を行った。「自分を何歳くらいに感じているか」という質問をし、その後8年間にわたり参加者の健康状態を追跡して調査した。
その結果、「自分はまだ若い」と感じていることが、健康状態や環境の変化、生活能力などにさまざまに影響することが判明した。
参加者の生活年齢(実年齢)の平均は65.8歳だったが、自己評価して感じている年齢(評価年齢)の平均は56.8歳だった。
評価年齢が実年齢よりも3年以上若いと感じていた人は69.6%、評価年齢と実年齢がほぼ同じと感じていていた人は25.6%、実年齢よりも老けていると感じていた人は4.8%だった。
8年後に「自分は若い」と実感していた人の死亡率は25%低下していたことが明らかになった。一方で、「年をとった」と実感している高齢者では、死亡率は上昇していた。
死亡率は、実年齢よりも老けていると感じていた人では24.6%だったのに対し、実感年齢が若いと感じていた人では14.3%、ほぼ同じに感じていていた人では18.5%だった。
がん、心臓病、糖尿病、脳卒中、関節炎など、加齢に伴い発症が増える病気との関連を調べたところ、がん以外は「自分は若い」と感じている人の方が状態が良いことが判明した
「“自分は何歳だと感じているか”という評価は、悩み、病気、生活の活力、社会的活動などさまざまな要因に影響します」と、同大学公衆衛生学部のアンドリュー ステプトー氏は言う。
「標準体重の維持」「医師のアドバイスを聞き生活スタイルを改善する」といった健康習慣に加えて、人生をコントロールできているという感覚をもち、「いつまでも自分を若々しく感じられるようにする」ことが健康寿命を延ばすのに効果的であると指摘している。
年を重ねることを肯定的に考えている人は健康的
年齢を重ねることに対して、ポジティブなイメージとネガティブなイメージがある。年齢を重ねることを肯定的に考えている人は、実際に年をとっても健康的でいられる可能性が高いことが、米国のイエール大学の研究で明らかなった。
この研究は、オハイオ州に在住している338人の男性と322人の女性が参加して行われている。参加者の平均年齢は1975年時点で50歳で、その後に最長で23年間、健康状態を追跡して調査した。
参加者に行った質問は、「あなたが年をとるにつれ、自己評価は変わると感じますか」「年をとると、あなたの価値は上がると思いますか、それとも下がると思いますか」といったものだった。
年齢を重ねることについて肯定的に考えている人の寿命は、否定的に考えている人に比べ、7.6年長いことが明らかになった。
一方、高血圧や高コレステロールの有無で寿命を比べたところ、それぞれ約4年の差が出た。年をとることを前向きに考えることが、血圧値や高コレステロールを上回る影響力をもつことが示された。
「年をとることをポジティブに考えることは、高血圧や高コレステロールの治療と同等に、寿命を延ばすためにプラスに働く可能性があります」と、イエール大学公衆衛生学部のベッカ レヴィー氏は言う。
前向きな考え方に加えて、健康的な食事をとる、運動を習慣として行う、たばこを吸わないといった、健康的な習慣が加われば、健康寿命は際立って延びていくという。
「今回の研究で得られたメッセージは2つあります。ひとつは、加齢について肯定的なイメージをもっていると平均寿命が長くなる傾向があること、もうひとつは、身体・メンタルの両面での改善を支援する介入をすれば寿命を延ばせる可能性があることです」と、レヴィー氏は言う。
今後は高齢化を肯定的にとらえることを社会全体で容認し、高齢者の健康を高める対策を行う対策が必要になると指摘している。高齢者の自己管理の能力を高めれば、健康寿命を延ばせる可能性がある。
Feeling Younger Than Actual Age Meant Lower Death Rate for Older People(JAMA Internal Medicine 2014年11月15日)
Thinking Positively About Aging Extends Life More than Exercise and Not Smoking(イエール大学 2002年7月29日)
[ Terahata ]