日本糖尿病学会は18日、糖尿病の食事療法に関する提言を発表した。この中で、同学会は「運動療法とともに積極的な食事療法を指導すべきであり、総エネルギー摂取量の制限を最優先とする」として、従来のカロリー制限食を支持する立場をあらためて強調した。
糖質制限食は「現時点では根拠が不足している」
炭水化物の摂取量を減らす「糖質制限食(低炭水化物食)」は、欧米での研究では、短期的には減量や血糖コントロールの改善につながるとして、減量や生活習慣病の食事療法のひとつとして注目されている。しかし、効果や安全性については賛否が分かれている。
日本糖尿病学会が発表した提言は、2012年8月に設置した「食事療法に関する委員会」(委員長:宇都宮一典・慈恵医大教授)が、国内外の論文を検証し作成したもの。
同学会はその中で、「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量をはかることは、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない」とした。
「欧米の研究においては対象となるBMI(体格指数)は30〜35以上のことが多く、肥満度の異なる日本人の糖尿病の病態に立脚した適正な炭水化物摂取量については、十分なエビデンスが揃っているとはいえない」と強調した。
今回の提言をまとめるにあたり、同学会が重要視したのは、「日本人の脂質の過剰摂取」だ。日本人の総エネルギー摂取量は、1960年代に比べて次第に減少しており、2010年の調査では平均1,840kcalとなっている。一方、脂質の摂取量は増加し、2010年の調査では炭水化物と脂質のエネルギー比率はそれぞれ59.4%、25.9%だった。
こうした脂質栄養の過剰摂取が日本人の肥満や2型糖尿病の増加に大きく関与しており、糖尿病の予防の観点からも大きな課題となっている。
提言では、「インスリンの作用は糖代謝のみならず、脂質とタンパク質代謝など多岐に及んでおり、これらは相互に密接な連関をもっている」として、「各栄養素の意義はエネルギー代謝に関する包括的な視野に立って評価すべきであり、個々の栄養素に限定して論じることはできない」と注意を促している。
そうした上で、「糖尿病における三大栄養素の推奨摂取比率は、一般的には、炭水化物は全エネルギーの50〜60%(150g/日以上)、タンパク質は20%以下を目安とし、残りを脂質とする」ことを原則として、「腎障害や脂質異常症の有無に留意して、タンパク質、脂質の摂取量を勘案し、大きな齟齬がなければ、患者の嗜好性や病態に応じて炭水化物の摂取比率が50%エネルギーを下回ることもありうる」とまとめた。
また、脂質摂取量については、糖尿病は心血管疾患の大きな危険因子であることから、「脂質摂取比率の上限は可能な限り25%エネルギーとするが、n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量を増やし、トランス脂肪酸の摂取を抑えるなど、脂肪酸構成にも十分な配慮が必要であり、その場合の総脂質摂取量については検討を要する」とした。
食事療法については、「患者の病態・嗜好性に応じて、医師・管理栄養士などの医療従事者が患者とともに考え、有効かつ安全に実践されていることを常にモニターしていく必要がある。その中から、新しいエビデンスを構築していかなければならない」とし、同学会が積極的に調査・研究の対象とすべき課題に位置付けた。
一般社団法人日本糖尿病学会
[ Terahata ]