歯周病は、歯の周囲の歯を支えている土台の部分がむしばまれる病気。中高年世代の半数以上は歯周病で、歯を失う原因になっている。その歯周病と糖尿病は密接なつながりがあることが、最近の研究で分かってきた。
生活者のための国際医療フォーラム
「人類の病」糖尿病と歯周病-連携医療の現状と未来-
フォーラムの模様はNHK教育テレビで放送される予定。
放送日時 | 2009年6月7日(日)18:00-19:00 |
番組名 | NHK教育テレビ「日曜フォーラム」 |
タイトル | 「糖尿病と歯周病を克服する」〜医科と歯科の連携〜(予定) |
NHKオンライン
4月18日にサンスター歯科保健振興財団と米国のジョリスン糖尿病センターの共同主催による国際医療フォーラムが、国連大学ウ・タント国際会議場で開催された。日米の糖尿病と歯科医療の専門家が研究報告や意見交換を行った。
歯周病は糖尿病合併症
歯周病は糖尿病の「第六の合併症」として注目されている。日本糖尿病学会は「糖尿病治療ガイド2008-2009」で、歯周病を「重大な合併症の一つ」としている。
血糖コントロールが悪いと歯周病に悪影響を及ぼし、歯周病があると血糖コントロールに悪影響を及ぼすという悪循環におちいる。歯の健康は全身の健康維持に欠かせず、医師と歯科医師が連携したチーム医療が重要だという。
徳島大学大学院の永田俊彦氏は「糖尿病があると免疫力や治癒力が低下し、歯周病が悪化しやすい。糖尿病の人では糖尿病でない人に比べ、歯周病が2倍以上みられる」と指摘。永田教授は積極的に医科病棟におもむき、糖尿病患者と家族に歯周病のレクチャーとオーラルケアの指導を行っている。
「糖尿病の治療をしているのに血糖コントロールがなかなか良くならない」という人は、歯周病に原因があるのかもしれない。歯周病を治療することで歯周組織の炎症が改善すると、インスリンが働きやすい状態になり血糖コントロールが改善する可能性があ
る。
サンスター歯科保健振興財団付属千里歯科診療所の梶原定江氏は、HbA
1cが9.4%で血糖コントロールが「不可」だった男性が、糖尿病専門医と連携して歯周病を治療した結果、半年後に7.4%に改善した症例を報告。その男性は糖尿病の治療と歯周病のケアを続け、現在は6.1%前後になったという。
糖尿病も歯周病も自己管理が大切
歯周病が進んで歯を失うと、よく噛むことができなくなる。脂肪や糖分が多くやわらかい食物を選び、食物繊維の多い噛みにくい食品を避ける傾向が強まる。ニューヨーク州立大バファロー校のロバート・J・ジェンコ氏は、「歯周病で血糖コントロールが難しくなる」と話す。調査では、歯周病を合併している患者ではHbA
1c値が高くなり、心疾患や腎症など他の合併症のリスクも高くなることが示された。
歯周病の治療は進歩しており、治療や予防ができるようになっている。ジェンコ氏は「糖尿病の人は年1、2回は歯科医師に歯の状態を診てもらうことが大切」と強調。口腔衛生を良好に保つことは効果的で、歯科医院で正しいブラッシング指導を受け、フロスや歯間ブラシなどを用いプラークを取り除くことで、口腔の細菌を減らすことができるという。
歯周病は40歳〜60歳代から発症が増え、初期の段階では自覚症状に乏しい点が2型糖尿病と共通しており、ともに「サイレントキラー」といわれる。自覚の低さから医療機関での検査や治療が遅れ、病気を進行させてしまう例も多い。
日本糖尿病学会理事長で東京大学大学院教授の門脇孝氏は、「糖尿病は早期発見、早期治療を行えば合併症にならずにすむ。医療は進歩しており、合併症が起こっていても、定期的に通院し適切な治療を続ければ症状の進行を抑えられる。治療が遅すぎるということはない」とアドバイスした。
「“一病息災”という言葉があり、持病のある人は無病の人よりもかえって健康に注意するようになるという意味がある。糖尿病や糖尿病の予備群であることを指摘されたら、自分の健康に気を配るようにし、それに歯周病も加えてほしい」としてい
る。
フォーラムの模様は6月7日にNHK教育テレビで放送される予定。役に立つ情報が多く紹介されているので、関心のある方はぜひご覧になってはいかがだろ
う。
サンスター歯科保健振興財団
Mouth & Body PLAZA
関連情報
糖尿病と口の中の健康(糖尿病NET)
[ Terahata ]