日本高血圧学会(島本和明理事長)は16日、高血圧の標準的な治療方法を示す「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」を公表した。5年ぶりの改訂となる。4月から日本医師会と共同で全国の医師への普及活動を始める。
日本の高血圧人口は4000万人とみられる。脳卒中や心筋梗塞といった病気の発症を抑制するためにも、適切な高血圧の治療が重要となる。「JSH2009」では、血圧がやや高めだが高血圧の基準に達しない「正常高値」の人でも、糖尿病など他の危険因子があれば心血管の発症リスクが高くなることから、高血圧患者と同様の治療が必要とした。今回の改訂により高血圧の治療対象は事実上広がることになる。
血圧分類は、軽症・中等症・重症の表現から「I度」「II度」「III度」と変更し、「正常高値血圧」を追加した。危険因子を層別化し、糖尿病、CKD(慢性腎臓病)、メタボリックシンドロームといった病態を因子に並べた。
正常高値血圧の人でもメタボリックシンドロームや喫煙など危険因子が1〜2個ある人は「中等リスク」と位置付け。糖尿病、CKD、心筋梗塞の患者や、危険因子が3個以上ある人は「高リスク」として、ただちに降圧薬で治療するよう推奨している。
目標血圧は、若年と中年者(15〜64歳)では収縮期血圧・拡張期血圧がそれぞれ130/85mmHg未満だが、糖尿病やCKD、心筋梗塞の患者では130/80mmHg未満と厳しい目標にした。高齢者では140/90mmHgを最終目標とした緩徐な降圧を目標とした。
「白衣高血圧」やストレスによる「職場高血圧」、診察室ではかった血圧が降圧目標に達していても家庭血圧が高い「仮面高血圧」なども指摘。家庭血圧計が普及していることから、家庭血圧を規則的に測ることが重要としている。家庭血圧の目標値は収縮期血圧・拡張期血圧とも5mmHgずつ低く設定。朝食前と就寝前の1日2回測り、1週間の平均値で判断する。
降圧薬の選択は、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、β遮断薬の5種類を主要な第一選択薬とし、降圧不十分な際にはその併用療法を推奨。特に、脳血管障害や心疾患、CKD、糖尿病、メタボリックシンドロームを合併している患者では、降圧薬の積極的な選択と降圧目標について示した。
[ Terahata ]