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菓子や清涼飲料など、おやつとして飲食することの多い食品は、一般的に糖が多く使われています。そして糖尿病という病気は、血液中の糖の利用が滞りがちになる病気です。ですから糖尿病の方がお菓子を食べると、その都度、血液中の糖が増えていき、血糖値が高くなってしまいます。糖の入った清涼飲料水の飲み過ぎが原因で、「ペットボトル症候群」と呼ばれる、血糖値が極めて高い危険な状態になってしまうことさえあります。
このような血糖値への直接的な影響のほかに、おやつは一般にカロリーが高いということも問題です。おやつを食べてばかりいるとカロリオーバーになりやすくなる、つまり、太りやすくなるということです。太り過ぎは、血糖値を高くする最も重要な原因の一つですし、動脈硬化も進みやすくなります。
食事のあとは血糖値が一時的に高くなります。しかし血糖はからだのエネルギー源として消費されるので、食後、時間が経過するとともに血糖値は低くなり、食前の値に戻ります。
しかし、夕食を遅い時間に食べると、血糖値がまだ高い時間帯に床につくことになります。すると睡眠中は血糖があまり消費されないので、高血糖状態が続いてしまいます。結果的に、翌朝の血糖値も高くなります。よってこのような生活習慣を改めないと、結局、昼も夜も慢性的な高血糖になってしまいます。
また、食事のあと、その時点で消費されず余った血糖の一部は、からだの脂肪として蓄えられます。そのため、寝る前に食べる生活習慣は、太りやすい生活習慣でもあります。太るとインスリン(血糖値を下げるホルモン)の働きが悪くなり、それも血糖値を上げたり、動脈硬化を促すように働いたりしてしまいます。
食べるスペードが速いと、食べ過ぎて太りやすく、また、食後に血糖値や中性脂肪値がより上昇しやすいことがわかっています。
食べ過ぎてしまう理由の一つとして、おなかがいっぱいになっても、それを脳で「満腹になった」と感じるまでに、少しタイムラグがあることが考えられています。食べるスピードが速すぎると、そのタイムラグの間に余計に食べてしまうというわけです。食べ過ぎで太ってしまうと、そのことで血糖値がより高くなりやすくなってしまいます。
また、食べるスピードが速いと、食後、消化吸収に働くホルモン(インクレチン)の分泌が間に合わなくなりそのために血糖値が高くなりやすくなることもわかってきました。
反対に、よく噛んで食べると食べ過ぎをしにくく、また食後の血糖値や中性脂肪値の上昇も抑えられることがわかっています。
ごはんなどの炭水化物の食品は、からだの中で消化吸収されると、最終的にその多くがブドウ糖になり、血液の中に入っていきます。つまり、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)を上げるように働きます。また、炭水化物をとり過ぎて血糖が余分になると、それは脂肪に変えて蓄えられます。その結果、太りやすくなります。太ると血糖値が高くなりやすくなります。
ですから、炭水化物を摂り過ぎている場合、それを控えることは血糖値を上がりにくくするのに役立つと言えます。
一方で、注意すべきこともあります。
第一に、インスリン注射をされていたりインスリン分泌を促す飲み薬を服用されている場合に、自己判断で炭水化物の摂取量を抑えすぎると、低血糖になる危険があります。
第二に、炭水化物を減らして他の栄養素を過剰にとることで、合併症(例えば動脈硬化や腎症)の発症や進行を早めてしまう可能性が心配されます。
第三に、炭水化物の摂取量を減らした影響で摂取カロリー量全体が不足すると、やせ過ぎたりして別の健康問題を引き起こしかねません。高齢の方はこの点により注意が必要です。
第四に、食物繊維が不足してしまう可能性があります。食物繊維は血糖や血清脂質の上昇を抑えたり、便通を良くしたり、腸内環境を整えたりと、さまざまな作用があることが、近年明らかになってきました。その食物繊維は炭水化物の多い食品にも含まれており、炭水化物の摂取量を減らことで、食物繊維がもたらす多くのメリットも得られなくなってしまうのです。
血糖コントロールのために炭水化物の摂取量を減らす方法を試してみたいと思ったら、こういった点を理解したうえで、まずは主治医に相談してからにしましょう。
玄米とは、精製していない糠の付いたお米です。雑穀米は白米に、稗や粟、麦などの雑穀を混ぜたもののことです。どちらも白米より食物繊維が豊富です。
食物繊維を多く含むと消化吸収に時間がかかり、食後の血糖値の上昇が抑えられます。また、血糖値の上昇が抑えられるということは、血糖を処理するインスリンの必要量も少なくて済むということで、それは肥満や糖尿病、動脈硬化の進行予防につながると考えられます。
なお、玄米や雑穀米もカロリーそのものは白米と大差なく、「低カロリー食品」というわけではありませんので、食べ過ぎればやはり肥満につながります。
運動は、さまざまな作用を通して、血糖値に良い影響を与えてくれます。いろいろ種類がある運動の中でもウォーキングをはじめとする有酸素運動(息を止めて力を一気にふり絞るようなことをせず、時間をかけて行う運動)は安全性も高く、無理なく始められるお勧めの運動です。
運動による血糖への効果を具体的に挙げると、まず、わかりやすいものとして、運動のエネルギー源として血糖が消費され、血糖値を下げるように働くことがあります。これの効果は、運動をしている最中と運動直後に現れる、運動の短期的効果です。
また、運動を継続していると、血糖値を下げる「インスリン」の効き目が良くなって、その効果は運動中や運動直後だけでなくしばらく続きます。これは運動の中期的な効果と言えます。
さらに運動の継続によってからだの新陳代謝が良くなり、血糖値が上がりにくい体質になります。もちろん、体重のコントロールにも役立ちます。これらは運動の長期的な効果と言えます。
加えて最近では、運動が認知症や一部のがんの予防にも効果的であることがわかり、注目されています。
なお、インスリン注射をされている方やインスリン分泌を促す飲み薬を服用されている場合は、運動により低血糖になりやすくなる可能性があることに注意してください。
一つ前のクイズで、「いろいろ種類がある運動の中でもウォーキングをはじめとする有酸素運動がお勧め」と述べましたが、筋力トレーニングも実は大切です。
筋肉は、からだの中で血糖を消費する最大の組織と言えます。ですから、トレーニングによって筋肉を増やすと、血糖を消費しやすいからだになるということです。
また、血糖値への好影響以外にも、骨を丈夫にしたり、転倒しにくくなったりと、さまざまな効果があります。糖尿病があると骨粗鬆症になりやすく、また、合併症の神経障害などのために転倒・骨折のリスクも高くなります。近年、高齢の糖尿病患者さんが増えていることから、このような問題がより深刻化してきています。これらを防ぐためにも、筋力トレーニングが勧められます。
気を付けたいポイントとしては、筋力トレーニングをしている最中に血圧が高くなりがちなことが挙げられます。息を止めて力んだりしないように注意しましょう。
肥満は万病のもと。血糖値もやはり、太ると高くなりやすくなります。
特に内臓脂肪型肥満と呼ばれる、おなかがぽっこりと出っ張っている体型の肥満が良くありません。内臓脂肪からは、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの働きを邪魔したり、動脈硬化を速めたりする物質がたくさん分泌されるからです。
肥満糖尿病の治療の基本は、まず減量です。少しだけ(体重3kg、ウエストサイズ3cm程度)減量するだけで、血糖値がぐっと下がることがあります。肥満を解消せずに薬(インスリン分泌を促す飲み薬やインスリン注射)で血糖値を下げようとすると、さらに太ってしまうことがあります。
一つ前のクイズが「太る」でその答えは「×」でした。「やせる」は「太る」の反対ですから答は簡単、「○」です。
太っている方がやせると、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの働きが回復して、血糖値が上がりにくくなります。その結果、血糖コントロールのための薬を減らしたり、薬が必要なくなったりすることもあります。
ただ、太っていない標準体重の方の場合、太らないよう注意するのは良いことですが、積極的にやせる必要性はありません。やせ過ぎることもまた、筋力の低下や低栄養などの健康問題を引き起こすことがあるからです。特にやせすぎている高齢の方では、むしろ少し体重を増やすようにしたほうが良いと考えられるケースもあります。
食事療法についても、「糖尿病の場合、なにがなんでも食べる量を減らさなければいけない」と勘違いされやすいのですが、そうではなく、その人に必要なエネルギー(カロリー)を“過不足なく”摂ることが大切なのです。
なお、糖尿病を放置していると、減量を目指しているわけではないのにやせてくることがあります。これは、インスリンの働きがゼロに近づいてきて、血液中のブドウ糖を利用できなくなっている結果、生じるものです。速やかに治療を開始しなければいけない危険な状態です。
「血糖値が気になる方へ」などの効果をうたった特定保健用食品(トクホ)がいろいろ販売されています。それらは、血糖値の上昇を抑える作用が科学的に証明され、消費者庁(以前は厚生労働省)が個別に審査した上で、そのような効果を広告や商品の表示などに使用して良いと認められた食品です。よって、それらのトクホは血糖値に対していくらかの良い効果を発揮すると言えます。
トクホのほかに、機能性表示食品という商品もあり、「血糖値の上昇を穏やかにする」といった作用の表示が認められています。これらは、その表示に関する科学的根拠があり、各商品を販売している企業がその根拠を公開しています。ただしトクホと異なり、国による商品ごとの個別審査はしていません。
なお、トクホや機能性表示食品、あるいはその他のいわゆる“健康食品”と呼ばれる科学的根拠に乏しい商品を試す際には、必ず主治医に相談なさってからにしてください。合併症がある場合には避けなければいけないものもありますし(例えば進行した腎症がある場合は、青汁などのカリウムが多いものは良くありません)、飲み薬との相性が良くないものもあるからです。
『10月8日は、糖をはかる日』について
『10月8日は、糖をはかる日』は、2016年糖尿病治療研究会により制定されました。2021年6月糖尿病治療研究会の解散により、一般社団法人日本生活習慣病予防協会が『10月8日は、糖をはかる日』を継承することになりました。
<糖尿病治療研究会40年の歩み>