糖尿病セミナー
3. 運動療法のコツ(1) [基礎]
1997年5月 改訂
効果はこう計ります
効果の判定は、自覚症状とメディカルチェックの両方で判断します。自覚症状では、体調がよくなったり、動くことが楽になったという感覚がもてる時は、運動療法の効果が出てきたとみてよいでしょう(「患者さんの自覚症状からみた運動療法の効果」の項参照)。そういう場合には、血糖や尿糖、体重などにも、何らかのよい変化が出ているはずです。逆に疲労感が残ったり、きつさや苦しさを感じたり、膝や足の一時的な筋肉の痛みなどがある場合は、不適切な部分があるはずですから、運動の中身を再検討してください。また、自分のした運動で、どの程度のエネルギー量が消費できたかを、算出する方法(右図)もありますから、それを参考にするのもよいでしょう。
運動のやり過ぎや、合併症を知らずに運動を続けていて、病気を悪化させたりすることがないように、月に1度は主治医のチェックを受け、効果の判定とアドバイスを欠かさず受けましょう。
運動療法で消費したエネルギー量の算出のしかた
下図から、その運動の1分間のエネルギー消費量をさがし、体重と持続時間をかければ、あなたが消費したエネルギー量が出せます。 1分間のエネルギー消費量 (kcal)
×
あなたの体重 (kg)
×
持続時間(分)
↓↓
あなた消費したエネルギー消費量 (kcal)
例:体重 60kg の人が散歩を30分した場合は、 0.0464×60×30=83.52kcal となります。
運動種目別のエネルギー消費量(単位1分間)
エネルギー消費量:kcal/kg/分 日本体育協会スポーツ科学委員会資料より引用
患者さんの自覚症状からみた運動療法の効果
1日1時間、週4回、中程度の運動を行っている2型糖尿病
178人の改善状況――太田西ノ内病院糖尿病センター調査
体調がよくなった
動くことが苦にならなくなった
足腰が強くなった
血糖が落ちついている
体重が減った
食事がおいしくなった
生活に張りがでてきた
その他
61.1%
57.9%
48.4%
41.1%
35.8%
31.6%
21.1%
6.4%
178人の改善状況――太田西ノ内病院糖尿病センター調査
Q.1型糖尿病の運動には、どんな注意が必要ですか?
A.1型糖尿病は、インスリンの絶対量が足りないため、外からインスリンを補給して人為的に調整しています。ですから、運動という要素が加わると、体内のエネルギーの生産と消費の関係がさらに複雑になって、バランスがとりにくく、かえって、激しい低血糖や高血糖の原因になってしまうことがあります。従って、基本的には、治療としての運動の効果は、あまりないともいえます。ですから、強い運動の時は、血糖測定器を使って血糖の状態を、運動前、中、後とモニターし、運動の影響の傾向をよくつかんでおくことが大切です。そして、血糖測定の内容次第で、運動前のインスリン量を減らすとか、補食するなどして低血糖を予防したり、また、高血糖の時は、運動自体を中止するなど、きめ細かな注意が必要です。また、運動の影響は翌日まで残るので、その点も考慮に入れて対応してください。
ただ、お子さんの場合は、1型糖尿病だからといって、あまり運動を制限すると、心身の健全な発達を妨げることになります。体育やクラブ活動などにも、できるだけ参加させることが大切ですが、先に述べた運動時の注意のほか、血糖値や体の状態など、運動の影響のデータをある程度そろえた段階で、主治医と相談しながら、運動やコントロールのやり方を変えていくなど、細かいフォローが必要です。
1型糖尿病の運動は、治療が目的というより、むしろ、糖尿病であっても、健康な人と同じようにいろいろなことを楽しむ手段と、とらえるべきでしょう。
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- 02. 食事療法のコツ(1) 基礎
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- 07. 肥満と糖尿病
- 08. 小児の糖尿病(1) 基礎
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