活動報告
1型糖尿病患者の人生を変える「チームコネクタD」の活動について(FUVIDAレポート)
南米エクアドルで小児糖尿病患者さんを支援するFundacion Vivir con Diabetes(FUVIDA)(代表:アラセリー・バスルト・カルデロン氏)より、最近の活動についてのレポートが届きましたので、ご紹介します。
国際糖尿病支援基金は、この活動の趣旨に賛同し、2008年より南米エクアドルのFUVIDAを支援しています。
1型糖尿病患者の人生を変える「チームコネクタD」の活動について
・ベッツィ・ロドリゲス氏(プエルトリコ出身の糖尿病の指導者)
参加者
・アラセリー バスルト カルデロン氏 (エクアドル・FUVIDA代表)
・パンクレアス(膵臓)ママ達 ※1型糖尿病を持つ子どもの母親たちのことを指します。
・糖尿病の療養指導者及び協力者
問題点と課題
現在、多くのコミュニティーでは、若者達が成長するうえで必要な支援が欠如しており、「差別」「不平等」などでリーダーシップを学ぶ機会が少ないなどの障壁に直面しています。
これらの状況で、多くの若者の才能が見出されることなく消えてしまっています。もし彼らに自分の可能性を見つける機会、大きなチャンスを与えることが出来るのなら、どの様に成長できるかを考えてみたことはあるでしょうか。心から寄り添い将来の道標となるがあれば、彼らの将来を輝かせることが出来るのではないかと考えています。
チームコネクタDの解決策
これらの経緯を経て誕生したのが「チームコネクタD」(以下コネクタDと略す)です。1型糖尿病の子供たちを育てる母親でもある私達自身の闘い、糖尿病に対する取り組み、そして若者への深い想いからインスピレーションを受け、私たちが信頼して創り上げたプログラムです。南米エクアドルで1型糖尿病患者を支援するFUVIDA代表のアラセリー バスルト カルデロン氏は、これらの取り組みにより、多くの功績を経験した勇敢な人物です。
アラセリー氏とともに糖尿病の子供たち、若年者の成長をサポートできるようにこのようなプログラムの立ち上げを決意しました。このコミュニティーの若者達が積極的なリーダーに変わり成長する事を確信しています。
生み出された結果
- 16人以上の若者達がリーダーシップへと成長する訓練教育を受け、協力的に働き逆境を超え大きな成長を遂げる事が出来ました。
- 若者主導のプロジェクトが進行中です。彼らの才能が開花した瞬間と言えるでしょう。
- 参加者のうち98%は、自身の社会における役割の存在、自己肯定感と自信が高まったという嬉しい報告も受けています。
- 糖尿病の若者達、母親達そして指導者達がともにひとつの目標に向かって歩み続けています。
コネクタDのおかげで自分自身の考え方、アイデアにも変化をもたらし、自分は一人で闘っているのではない。という確信を得る素晴らしい結果となりました。
そしてコネクタDは若者達により今迄公に語られてこなかった実話、辛い経験にも触れさせてくれました。糖尿病との闘い、治療にかかる負担、特に経済的な部分において非常に苦しい現状が語られました。中には生命を絶つこと、自死が頭をよぎった事があったと話してくれました。
このプログラムに参加した若者の多くは、FUVIDAに巡り会えた事に心より感謝し、両親の負担になりたくない。自分の力で生活できるようになりたい。と願っています。コネクトDは彼らが抱える重荷を下ろせる場にもなりました。それは私達の重要な役割でもあり、今後も引き続き取り組まなくてはならない大きな問題です。
私たちの信念
・自立
若者達一人一人の内部に眠っているリーダーシップの力を目覚めさせる事
・愛と支え
多く人々の支えとなる愛情は未来の大きな助けとなり、計画の実現を現実に変える力を持っています。
・勇気
糖尿病という診断に直面しても私たちが寄り添い支えてきた思いが、今は他の人々を励ます源になります。
・コミュニティー
一人の行動は素早いという利点がありますが、コミュニティーでの活動は情報量も多く問題点や改良点に焦点を合わせ深く掘り下げ見つめ直す事で、解決に至る目的地まで、互いに協力し合い辿り着く事が出来るのです。
コネクタDは単なるプログラムではなく、人々の心の原動力によって培われてきた希望のシンボルとなっています。個々の経験の積み重ねにより、良い方向へと導かれます。結果として今迄行き届いていなかった部分に希望の明かりをともす事が出来ました。それは今回の活動の結果が明らかな証拠として爪痕を残しています。私たち膵臓ママにとっては糖尿病を持つ子供たちの精神的な痛みや苦しみを深く知る事が出来知識を深める素晴らしい経験となりました。
このプログラムを通して互いに学び合い、若者たちが今後の更なる向上を約束し合い希望に満ちた将来を築く機会を与えて下さった事に感謝をしています。
今後もこのプログラムに参加してくれる糖尿病の若者たちをあたたかく迎え入れ、ともに学び、支えあえ、幸福に満ちた未来を築くことを約束します。
翻訳協力:
永吉早苗様
関連サイト
Fundación Vivir con Diabetes: FUVIDA
2023年南米「エクアドル」FUVIDAからのレポート
FUVIDAの活動にご賛同いただき、御参加いただける方は、下記口座(郵便局)までお振込み頂きますようお願い申し上げます。
御協力頂きました方は、支援者としてこのホームページ上の「支援者名」のコーナーでお名前を発表させて頂きますが、本名での発表をご希望でない方は、振替用紙(郵便局)の通信欄にご希望のお名前をご記入ください。
口座番号:00160−3−82542
加入者名:国際糖尿病支援基金口
※通信欄へ「FUVIDA支援」とお書き頂きますようお願い致します。
2025年ドリームトラスト(インド)からディーワーリーのご挨拶
インドの糖尿病患者さんを支援するドリームトラストから国際糖尿病支援基金へ、 Diwari(ディーワーリー)をお祝いするグリーティングカードが届きました。
インドのドリームトラストより、ディーワーリーのご挨拶を申し上げます。
ディーワーリーとは、ヒンドゥー教最大の祭典で、インドでは最も重要な祝日の1つです。
別名「光の祭典」と呼ばれ、街のいたるところがライトアップされ煌びやかな光まばゆい飾りが特徴です。ディーワーリーが行われるのは5日間で、2025年は10月20日より行われます。この間、インドの人々は祈りを捧げ、家族で集まりご馳走をたべ、花火を楽しむなどして過ごします。
ドリームトラストの支援を受けている1型糖尿病患者さんからのディーワーリーに込められたメッセージをご紹介します。
参考資料
あなたの暖かさ、愛、そして、このディワリの光が末永く続きますように
ディーワーリーの光を携えて、最も暗い日には、この光の明るさを思い出して(前向きに)
糖尿病のあるディーワーリー:勇気の光
今ここにディーワーリーがある 光は明るく、家々は輝き、心は軽やかに感じる
でも、日々、数字に支配される人もいる。血糖値であり、休養が必要な人たちが
1型糖尿病を抱えて生きる。でも、勇気を出すことで人生は変わる
炭水化物を計測し、食事を考え、聴いたり考えたり感じるということを学んでいる
ペン型インスリンは毎日付き合う友達。体調を整え、回復に繋げてくれる
甘いものが誘惑し、お食事も美味しそうに見えるかもしれないけど
ちゃんとコントロールすることを選ばなければならないとわかっている
踊ったり、笑ったり、新しい服を着たり。ランプに光を灯し、まっすぐ一列に おもてなしの食べ物が目に入っても食べることはせず ミータイ(インドの伝統的な砂糖菓子)よりも楽しいことはある。本当に
友達に教えてあげるの そして広めるの より良く生きて行くことを聞いてもらうの
糖尿病が私たちの輝きを止めることはできない
暗闇にあるディヤ(灯明皿)のように輝いているから
ディーワーリーのお祭りで、力強く、微笑みながら、背筋を伸ばして立ち上がれ
みんなが持っているものだから
今晩、輝く光の全てが、愛と力と共に生きて行くことを教えてくれている
関連サイト
2025年 国際糖尿病支援基金が支援するドリームトラストの患者さんの近況について
2人の若き1型糖尿病患者さんのサクセスストーリー(インド・ドリームトラスト)
2024年ドリームトラスト(インド)からディーワーリーのご挨拶
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口座番号:00160−3−82542
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2025年11月活動報告
寄付金収入(2件)12万円2025年8月活動報告
寄付金収入(6件)13万6,876円2025年7月活動報告
寄付金収入(1件)4万円2人の若き1型糖尿病患者さんのサクセスストーリー(インド・ドリームトラスト)

ドリームトラスト(インド)より、現地の糖尿病患者さんの近況報告が届きました。
糖尿病があっても悲観的にならず、素晴らしい成長と成功を遂げた2人の1型糖尿病患者さんのお話をご紹介します。
国際糖尿病支援基金は、インドの糖尿病患者さんを支援するドリームトラストの活動に賛同し、支援をしています。
アジンキャ(23歳)

アジンキャは、11歳で1型糖尿病患者と診断されましたが、人生に対し、後ろ向きになることはありませんでした。
コンピューターサイエンスの学士号を無事に取得し、マハーシュトラ州・オーランガバードにある政府系銀行「マハーシュトラ・グラミン銀行」での就職が決まりました。
倍率の高いペーパーテストと面接試験に備えて懸命に勉強し、見事合格を勝ち取ったのです。
就職が難しいと言われる金融機関に無事に就職ができたことを、皆さんにご報告できるなんて、本当にワクワクします。
アジンキャは、コーコー(南アジアの古代から行われている"鬼ごっこ"のようなアウトドアスポーツ)のマハーシュトラ州の大会に出場できるレベルのプレーヤーでもあり、文武に渡って優れた人なのです。
アマン(21歳)
アマンさんは、14歳で1型糖尿病と診断されました。
高校卒業後は、警察官か軍隊に入隊することを目標としていました。
数時間身体を鍛え続けたおかげで、軍学校の入学試験に合格しました。身体検査、面接試験にも合格し、国民義勇兵に選抜されました。
たゆまぬ懸命な努力が実を結んだことは、この上なく誇らしいことです。
ドリームトラスト一同、アジンキャ、アマン共に、輝かしい未来で活躍することを祈念しています。輝きが失われませんように!
関連サイト
2024年 国際糖尿病支援基金が支援するドリームトラストの患者さんの近況について
2023年ドリームトラスト(インド)からの近況報告
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加入者名:国際糖尿病支援基金口
2025年ミャンマー地震に対する糖尿病患者さんへの支援について(IFLレポート)

2025年3月28日に東南アジア地域(ミャンマー連邦共和国・タイ王国)で大規模な地震が発生し、被災された方々並びにご遺族の方々への哀悼の意を表するとともに、被災された方々へのお見舞いを申し上げます。
途上国の糖尿病患者さんを支援するインスリン・フォー・ライフ(IFL)は、ミャンマーの糖尿病患者さんへの支援を開始しました。
タイでは直後から、様々なメディアによって建物倒壊を始めとする大きな被害が報道されていました。
政情が不安定な隣国ミャンマーでも、大きな被害が出ていることが想定されていたものの、世界的な大手メディアでさえもなかなか情報がつかめず、発生から2週間以上経過後、被災地以外の人々が忘れ去られようとしている頃に、ようやくメディアを通じた情報が規制をすり抜けるような形で流れ始め、各国政府レベルでの救援活動が開始された状態でした。
日中の気温が摂氏40度を超えると言われ、また制約が多い中での救援活動が強いられる中、犠牲者が更に増えてしまうことが心配でした。
そのような中で、当基金の提携先であるIFLオーストラリアから、4月16日に首都ネピドーにある総合病院宛に送ったインスリンを始めとする支援物資が4月22日に無事に届いたという報告が写真と共にありました。
写真に写る医療スタッフの方々が男性・女性共に、ミャンマーの民族衣装であるロンジー(巻きスカート)を纏っている姿に民族の誇りと前向きな力強さを感じます。
政情の安定と復興を祈念して!

国際糖尿病支援基金
会長 森田繰織
関連記事
インスリン・フォー・ライフ(IFL)グローバル/最近の活動と取組みについて(アリシア・ジェンキンス代表
インスリン・フォー・ライフ(IFL)(オーストラリア)
国際糖尿病支援基金
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口座番号:00160−3−82542
加入者名:国際糖尿病支援基金口
ガザ地区に暮らす1型糖尿病の子どもたちの今
~4人に3人がインスリン療法に支障を来している~

今般のパレスチナ・イスラエル戦争は、2023年10月7日に始まり、既に2年半が経過しました。最近になってようやく停戦合意というニュースが流れてきたと思ったら、数日後に再び大規模な戦禍が発生するといったことが繰り返されています。パレスチナ・イスラエルの人々の安寧な暮らしは、残念なことに、まだしばらく先のことなのかもしれません。

戦争は、弱者に、より過酷です。
年齢でいえば成人よりも子どもや高齢者、性別でいえば男性よりも女性にとって過酷であり、疾患のある人はそうでない人より過酷な状況に直面します。糖尿病のある人もそうであり、日々の治療が命に直結する1型糖尿病の患者さん、とくにお子さんは、より強い影響を受けるであろうことが想像に難くありません。
現在進行中のパレスチナ・イスラエル戦争におけるその実態が、世界保健機関の東地中海地域事務局(WHO EMRO)発行の医学専門誌に掲載されました。その要旨を紹介します。
論文タイトル:
Exploratory study of the impact of war on management of type 1 diabetes mellitus among children in Gaza
ガザの1型糖尿病の子どもたちの疾患管理における戦争の影響に関する探索的研究
Eastern Mediterranean health journal. 2025 Mar 3;31(2):109-115.
doi: 10.26719/2025.31.2.109.
戦時下のガザで1,000人の1糖尿病患者さんが生きている
この論文は、ガザ地区に暮らす未成年1型糖尿病の人たちに対して、戦争の影響をオンラインアンケートで調査し、その結果を解析して報告したものです。まず、研究の背景情報の一部を抜粋してみます。ガザ地区の過酷さが伝わってきます。
例えば、国連人道問題調整事務所の最近の報告書では、2023年10月7日以降、4万1,020人のパレスチナ人が死亡し、9万4,900人以上が負傷したと推定され、36の病院のうち19カ所が閉鎖され、17カ所が部分的に機能しているにとどまっているとのことです。また、生後6~23カ月の子ども、および女性の96%以上が栄養所要量を満たしておらず、約35万人の慢性疾患患者が必要な治療を受けられず、その中には7万1,000人の糖尿病患者、1,000人以上の1型糖尿病患者が存在しているとされています。
改めて述べるまでもなく、1型糖尿病は日々の治療が生存のために必須であり、医療へのアクセスの制限は、高血糖、ケトアシドーシスなどの急性合併症、ときにはそれらによる命の危機に直面します。また、そのような状況が長引くほど、慢性合併症のリスクが上昇してきます。医療のアクセス制限とは、具体的にはインスリンの入手や血糖測定が困難になることであり、より広くとらえれば食料の入手困難や運動を行えないことも含まれます。
ガザで暮らす未成年1型糖尿病患者に連絡をとり、研究参加に同意した人に調査
この研究では、ガザ地区の未成年1型糖尿病患者の疾患管理に対する戦争の影響を把握する手法として、オンラインアンケートが企画されました。調査対象は、2023年10月に、戦時下のガザに住んでいた18歳以下のすべての1型糖尿病患者さん、130人以上です。そのうちアンケートに回答し研究参加に同意した29人の患者さんや保護者の回答が、解析対象とされました。
アンケートの質問項目は、2人の研究者(うち1人はガザ出身)が作成し、5人の専門家(栄養学専門3人、家庭医1人、糖尿病教育専門家1人)が内容を検証。パイロット研究として3人の患者さんを対象に調査を行って妥当性を確認後に、本調査に用いられました。主な内容は、年齢や性別などの社会人口統計学的データ、避難関連データ(避難場所・期間など)、糖尿病関連データ(診断年齢、罹病期間、治療内容、HbA1c、治療を受けている場所、戦争勃発後に経験した急性合併症など)といったものでした。
開戦前の糖尿病治療と、開戦後の生活の変化
戦争が始まる前の治療状況
まず、解析対象となった29人の患者さんの特徴をみてみます。性別は男子51.7%、診断時年齢は6.0±3.7歳で、1型糖尿病診断以降のケトアシドーシス発生回数は1.4±0.5回でした。 開戦前に、患者さんの79.3%はプライマリケア医で経過観察され、受診頻度は月1回超が10.3%、月1回が72.4%、3カ月に1回が3.4%で、必要なときだけ受診していた患者さんが3.4%でした。血糖自己測定の回数は1日1回超が75.9%、1日1回が10.3%であり、13.8%は自己測定をしていませんでした。
戦時下の生活状況
戦時下での生活場所は、テントが34.5%と多くを占め、次いで家族・友人との共同生活31%、自宅27.6%、学校・その他へ避難施設6.9%でした。
戦時中の収入源は、政府からの給付が31%、民間企業が24.1%、海外からの支援が20.7%、収入なしが17.2%などでした。
戦時下の食料困難などによって成長期にもかかわらず体重が減少
41.4%の患者さんは、「戦争によって糖尿病治療に適した食料が入手困難になった」と回答しました。家族単位では、全体の79.3%の世帯が食料の入手困難に悩まされ、96.6%が食品の種類が十分でないと答えています。
一方、運動については、子どもの86.2%が身体活動量減少を報告しています。その理由として、17.2%が戦争の恐怖、10.3%は避難場所に十分なスペースがないこと、10.3%は食料の不足を挙げています。
なお、この調査は前述のように18歳以下という成長期の子どもたちを対象に行われたにもかかわらず、全体の58.6%は「開戦後に体重が減少した」と回答しています。開戦前からの体重減少幅は2.6±2.7kgと推定されました。
戦時下の1型糖尿病治療
4人に3人が薬剤の変更を要し、4人に1人はインスリンを減量
では、戦争が始まってから糖尿病治療がどのように変化したかをみていきましょう。
ほぼ8割(79.3%)の患者さんは、「戦時下で適切な糖尿病治療を受けることができない」と述べています。それでも、戦時下で何らかの医療を受けた少数の患者さんでは、その10.3%が糖尿病の急性合併症のための入院でした。また、3.4%の患者さんは電話での医療相談のみを受けることができ、6.9%は薬を受け取っただけでした。
全体で4人に3人以上(75.9%)が、糖尿病用薬を開戦前と同じようには入手できておらず、治療法の変更を要していました。そして、約4人に1人(24.1%)は、インスリン使用量を減らすという対応を要していました。
戦時下の血糖コントロールの悪化、急性合併症リスクの実態
開戦後、58.6%の患者さんが血糖自己測定を行えていないことも明らかにされました。また、同じく58.6%の患者さんが、血糖試験紙を入手できないと回答し、27.6%は試験紙の価格上昇を指摘して、3.4%はそれら双方を指摘しました。
このほかにも、1人を除くすべて(96.6%)の患者さんが開戦後に糖尿病関連急性合併症を経験し、34.5%が高血糖、3.4%が低血糖、62.1%がそれら双方を経験していたことがわかりました。これら急性合併症の69%は医療処置が必要と判断される状態でしたが、医療施設にたどり着くことができたのは60%にとどまっていました。
戦争は、1型糖尿病患者の生命を脅かす結果をもたらし得る
著者らは、本研究の限界として、解析対象者数が少ないこと、自己申告に基づく解析であることなどを挙げ、解釈上の留意点としています。そのうえで、以下のように結論をまとめています。
「ガザの1型糖尿病の子どもたちは今、適切な糖尿病治療を受けることができず、食料不安を経験し、医薬品が不足していて、血糖コントロールが不十分な状況にある。戦争は、1型糖尿病の患者の生命を脅かす結果をもたらす可能性がある。我々の研究結果は、紛争のために医療へのアクセスが制限されている人々、とくに1型糖尿病患者の疾患の管理を優先する必要性を強調するものである」。
現在、パレスチナ・イスラエル戦争だけでなく、ロシア・ウクライナ戦争も長引いています。戦時下で、今もミサイル攻撃の恐怖に怯え、かつ糖尿病を十分に治療できないことの恐怖に苛まれている患者さんたちを思うと、1日も早くこの災禍が終結することを願わずにいられません。
編集:国際糖尿病支援基金
2025年フィリピンの糖尿病検査プログラムの実施について(IFLレポート)

途上国の糖尿病患者さんを支援するインスリン・フォー・ライフ(IFL)では、2025年3月7日から10日の4日間、フィリピン共和国・オーロラ州バレル市にて糖尿病啓発プログラムを主宰しました。
国際糖尿病支援基金はこの活動に賛同し、インスリン・フォー・ライフ(IFL)の活動を通じて、フィリピンの糖尿病患者さんを支援をしています。
Insulin for Lifeオーストラリア
Neil Donelan
ニール・ドナラン
現地の医師や看護師がボランティアの協力のもと、毎日200名以上の現地の方々が無料で血糖測定などの検査を受けました。
検査の結果、参加者の多くが血糖と血圧で高い数値を示しました。今すぐにインスリン治療が必要な方には、医療従事者の指導のもとインスリンが渡されました。
今年はこの後に2回、現地で糖尿病啓発プログラムを実施する予定のため、IFLはボランティアスタッフへ本プログラムに必要なインスリン、血糖測定器、テストチップを支援しました。
血糖値が高い参加者へ、食生活全般や運動習慣といった生活全般を変えて行くことの必要性を説いても、インスリンさえ注射すれば血糖値が下がるとの思いが強く、「文化の壁」を超える難しを感じています。


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2024年フィリピンネグロス島の糖尿病キャンプに参加して(IFLレポート)
フィリピンの糖尿病患者さんへの支援について
インスリン・フォー・ライフ(IFL)(オーストラリア)
国際糖尿病支援基金
御協力頂きました方は、支援者としてこのホームページ上の「支援者名」のコーナーでお名前を発表させて頂きますが、本名での発表をご希望でない方は、振替用紙(郵便局)の通信欄にご希望のお名前をご記入ください。
口座番号:00160−3−82542
加入者名:国際糖尿病支援基金口
2025年3月活動報告
寄付金収入(5件)23万9,650円SMBGとCGMのメリット・デメリット(糖尿病ネットワークアンケート(252件))
糖尿病患者の災害対策(糖尿病ネットワークアンケート(449件))
院内の血糖測定におけるPOCT機器の利用について(糖尿病ネットワークアンケート(92件))
