米国でコントロール管理についてのガイドラインが改訂された。糖尿病患者のコレステロール管理をより重要視している。
糖尿病を血糖・血圧・脂質の全体でコントロールしようという動向は、日本を含む世界的なものだ。
動脈硬化になると心臓への負担が増す
脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質の量が異常になった状態のことで、動脈硬化と密接なつながりがある。
動脈硬化を起こした血管では、血管壁の内側にプラークと呼ばれるふくらみができる。ここにはコレステロールがたまっていて、プラークが大きくなると、血液の通り道が狭くなってしまう。
プラークが破れると、そこに血液のかたまりができ、血管が詰まってしまう場合がある。これが冠動脈で起きれば心筋梗塞になり、脳の動脈なら脳梗塞になる。
血管内にコレステロールが蓄積した状態は、いわば詰まった水まき用のホースのようなものだ。ホースの内壁にべとべとした汚れが蓄積すると、それまでと同じ量の水を流すために、より圧力をかける必要がある。これは心臓がもっと働かなくてはならないことを意味する。
糖尿病の人はコレステロールの管理も重要
脂質異常症かどうかは、血液検査の結果で診断される。チェック項目は、悪玉のLDLコレステロール、善玉のHDLコレステロール、中性脂肪のそれぞれの値だ。
糖尿病は心血管疾患のリスクを高めるが、脂質異常症を合併するとリスクはさらに高まる。脂質異常症を治療することで、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを減らすことができることが多くの研究で確かめられている。
糖尿病のある人の脂質のコントロール目標は、悪玉のLDLコレステロールの値は120mg/dL未満、善玉のHDLコレステロールの値は40mg/dL以上、中性脂肪値は空腹時採血で150mg/dL未満となっている。
関連情報
食事や運動で脂質をコントロール それでも不十分なら薬物療法
脂質異常症の治療の基本は生活スタイルの改善だ。食事療法・運動療法によって、糖代謝と脂質代謝を改善できる。食事と運動には、血糖・血圧を下げる効果もあるので、必ず行うべきことだ。
逆に、動物性脂肪の摂り過ぎや、運動不足、肥満などが重なると、さらにLDLコレステロール値が上がってしまう。また、喫煙も動脈硬化を進行させる。
食事や運動で脂質のコントロール目標を達成できない場合は薬物療法が行われる。もっともよく使われているのは、コレステロールの合成を抑えるスタチン系薬だ。スタチンには、肝臓でのコレステロールの合成や血管壁にたまったコレステロールを減らす作用がある。
糖尿病で心筋梗塞や狭心症などのリスクが高いと、早めに薬物療法が行われることがある。また、LDLコレステロールの管理目標はより厳しくなる。
コレステロール値を下げる治療も「個別治療」に
米国で、コレステロール管理の新しいガイドラインが発表された。改訂のポイントは、▼コレステロール値の管理が難しい高リスク患者に対しては、スタチン系薬に加えてエゼチミブなどのコレステロール低下薬の併用も考慮すること、▼CTによる動脈硬化の評価など精緻な心疾患リスク評価を行うことなど。
また、家族歴、慢性腎臓病、メタボリックシンドロームなどを、動脈硬化のリスクを増強する因子として定め、食事や運動、血圧、コレステロールなどが互いに関連し合うことを指摘。糖尿病の管理に「全体的アプローチ」が必要としている。
糖尿病を、血糖・血圧・脂質の全体でコントロールして治療しようという動向は世界的なものだ。「糖尿病とともに生きる人は、血糖値のみに目が向きがちですが、血糖だけでなくコレステロールの管理も重要であることに注意を向けて欲しい。血圧コントロールや、肥満・メタボを改善することも重要です」と、米国心臓学会(AHA)は述べている。
医師には、コレステロール値の上昇がもたらすリスク因子について患者とよく話し合い、その患者のリスクに応じた「個別治療」を行うことを求めている。喫煙習慣、高血圧、HbA1cなどに加え、家族歴、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病、慢性的な炎症性疾患、早期閉経、妊娠高血圧症候群などについても確認し、患者1人ひとりに合わせた個別治療につなげることを推奨している。
Have diabetes? Make sure to manage cholesterol, too(米国心臓学会 2018年11月19日)
2018 AHA/ACC/AACVPR/AAPA/ABC/ACPM/ADA/AGS/APhA/ASPC/NLA/PCNA Guideline on the Management of Blood Cholesterol: Executive Summary(米国心臓学会 2018年11月10日)
[ Terahata ]