「糖尿病腎症の重症化」を予防するため、山梨県は県医師会、県糖尿病対策推進会議などと連携協定を結んだ。
同県では糖尿病からの新規透析導入患者が多い。県と3団体は10月に「山梨県糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定した。
山梨県が県医師会、県糖尿病対策推進会議などと連携協定
山梨県は新たに人工透析に移行する患者のうち、糖尿病腎症を原因とする割合が非常に高いという。2015年度は人口10万人当たりの患者数が17.6人(全国平均12.9人)で、全国ワースト2位だった。
そこで同県は2018年11月に、県医師会、県糖尿病対策推進会議、県CKD(慢性腎臓病)予防推進対策協議会と、糖尿病腎症重症化予防に係る連携協定を締結した。
県民に、健診を毎年受診してもらい、糖尿病や糖尿病腎症を早期発見し、診断された際には適切な治療や保健指導により血糖値をコントロールし、深刻な合併症を防ぐことを目的としている。
糖尿病や腎臓病が放置されると、自覚症状が乏しいまま病状は進行し、深刻な合併症につながる。人工透析は週3回、1日4〜5時間を要するなど大きな負担となり、患者やその家族の生活への影響は深刻だ。
また、人工透析には1人月額約40万円、年間約500万円の医療費がかかり、日本では患者の経済的な負担が軽減されるように公的な医療費助成制度が確立されているが、透析治療の医療費は年間1兆円を超えており、医療経済や地域経済などに与える損失は大きい。
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「山梨県糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定
県と3団体は10月に「山梨県糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定。今後はこれを推進していく。
具体的には、血糖値が高いのに受診しない人や糖尿病の治療を中断した人、治療中で腎症重症化のおそれがある人などを医療機関が抽出。適切に受診勧奨することで医療に結びつけるとともに、糖尿病性腎症で通院する患者のうち、重症化するリスクの高い人に対して、国民健康保険などの保険者とかかりつけ医などが連携して保健指導を行い、人工透析への移行を防止する。
保険者は、健診データやレセプトデータなどを用いて、糖尿病の疾病構造や健康問題などを分析し、地域の課題に応じた対策を立案する。医師会は、保険者とかかりつけ医との連携体制の構築を支援し、かかりつけ医と専門医との連携も強化する。
医療機関未受診者の基準は、過去の健診で、空腹時血糖 126mg/dL(随時血糖 200mg/dL)以上、またはHbA1c6.5%以上の人のうち、タンパク尿を認める人またはeGFRが60mL/分/1.73㎡未満の人(特定健診などで血清クレアチニンを測定している場合)
ただし、eGFRについては、山梨県CKD病診連携基準を参考に、40歳未満の人は60mL/分/1.73㎡未満、40歳以上70歳未満の人は50mL/分/1.73㎡未満、70歳以上の人は40mL/分/1.73㎡未満を用いる。
糖尿病の治療を中断している人の基準は、糖尿病により医療機関受診中の患人のうち、最終の受診日から6ヵ月経過しても糖尿病の受診歴がないこと。
糖尿病腎症が重症化するリスクの高い人の基準は、医療機関に通院中の患者のうち、保険者がレセプト・健診データから糖尿病腎症の病期が第2期、第3期および第4期とみられる人のうち、保健指導への参加について本人とかかりつけ医の同意があった人。
「山梨県CKD病診連携システム」とは、慢性腎臓病重症化予防のために、かかりつけ医と腎臓専門医との病診連携を強化するために構築されたシステム。県は山梨県医師会および県が行う研修を受講したかかりつけ医を「CKD病診連携医」として登録している。
あらゆる年代の人々が糖尿病のリスクを周知することが必要
山梨県では、とくに30〜40歳代で野菜の摂取量が少なく、男性の80%、女性の67%が塩分を摂り過ぎている。運動習慣のある人の割合は、20〜59歳の男性で25%、女性で13%と少ない。肥満の割合は60歳男性で3割を超え、やせの割合は20歳代女性で4人に1人に上る。「若年から生活習慣病の予防を行うことが重要」と、県福祉保健部健康増進課では述べている。
県糖尿病対策推進会議は「県民が糖尿病を発症することによるリスクを十分に理解し、年齢に関わらず、子どもや若い人も含めたあらゆる年代の人々が、日々の適切な食生活や運動習慣により発症を抑えることが求められている」と述べている。
山梨県糖尿病性腎症重症化予防プログラム(山梨県)
糖尿病性腎症重症化予防(山梨県)
[ Terahata ]