健康食品を摂取すると、体質によっては重篤な肝障害を起こす場合があるとして、国民生活センターが注意を呼びかけている。
肝臓の機能が障害される「薬物性肝障害」
薬の副作用のひとつに、肝臓の機能が障害される「薬物性肝障害」があり、健康食品でも発症することがある。健康食品などによる事故に遭い医療機関を受診するケースも出ている。
国民生活センターは、医師から事故情報について直接得ることで、事故の再発・拡大の防止に役立てるため、「医師からの事故情報受付窓口」(ドクターメール箱)を開設している。
ドクターメール箱には、2014年8月~2017年7月20日までに179件の情報が寄せられており、そのうち9件は「健康食品」の摂取による「薬物性肝障害」と診断された情報だった。
患者は全て40歳代以上で、50歳代が半数以上を占めた。全ての事例が経過観察も含めて1ヵ月以上医療機関を受診しており、3件は入院治療を受けていた。
医療機関で診療を受けない消費者もいるので、実際にはもっと多くの人が被害に遭っている可能性がある。
「健康食品」に肝障害の副作用が
主な事例は以下の通り――
(1)トクホの青汁を通販で購入、毎日飲んだところ、腹部に不快感があった。さらに13日後から寒気、頭痛が起こり、受診すると肝障害だった。そのまま34日間入院。それまで肝障害の診断を受けたことはなかった。(50歳代女性)。
(2)知人に勧められたサプリメントの摂取を続けたところ、薬物性肝障害の重症倦怠感、褐色尿、皮膚の黄染を訴えて医療機関を受診した。摂取を中止すると、黄疸を示すビリルビンや肝臓や胆道の異変を示す肝胆道系酵素の値は減少した。薬物性肝障害と診断され、1ヵ月強の入院となった。(70歳代女性)
(3)飲酒後二日酔いがあり、翌日に尿が濃いことを自覚して近くのクリニックを受診。ASTとALTの値の上昇が認められたが、アルコールの影響ではく、摂取していた健康食品が原因と判明。外来で1ヵ月以上経過観察となった。(40歳代女性)
(4)10年前から数種の健康食品を摂取。総合感冒薬を1日分飲むと2週間後に腹部の不快感があったため受診、肝障害と診断された。摂取をやめると回復したので1ヵ月以上の経過観察となった。(50歳代女性)。
糖尿病治療をうたった「健康食品」も
なお、日本医師会の「健康食品安全情報システム」事業には、健康食品による薬物性肝障害の情報が2017年6月までの10年8ヵ月の間に27件寄せられているという。
日本医師会に寄せられた主な事例には下記のものがある――
(1)「健康ハーブ茶」を園芸店で購入し服用したら、2ヵ月後に黄疸を発症。かかりつけ医の診察を受けたところ、高度肝機能障害が判明。その後、同じハーブ茶のネットのページで糖尿病治療を強くほのめかす記載があることが判明。厚生労働省に医薬品医療機器等法上の対応を要請した。(70歳代女性))
(2)ウコン末とクルクミンの健康食品を摂取したところ、胃部の不快感と黄疸、劇症肝炎を発症。(50歳代・男性)
医療機関を受診する必要がある
「一般用医薬品や健康食品は、ドラッグストアやインターネットで容易に購入・使用できるが、使用する場合は、薬物性肝障害のような副作用が起こることがあるということを知ってほしい」と、日本内科学会理事・日本肝臓学会副理事長の滝川一氏は注意を呼び掛けている。
アレルギーのある人、肝臓に疾患がある人、長年に渡る飲酒の習慣がある人などは、健康な人よりも薬物性肝障害を起こしやすいという。
医薬品や健康食品を使用していて、以下のような症状が1つあるいは複数みられ、症状が持続する場合は、直ちに使用を中止し、医療機関を受診する必要がある。
<肝障害の初期症状の例>
▽倦怠感、▽食欲不振、▽発熱、▽黄疸、▽発疹、▽吐き気・おう吐、▽かゆみ
受診の際は、医師に医薬品や健康食品を使用していることを伝え、商品やそのパッケージを持参するなどして商品に関する情報(商品名、メーカー名など)も正確に伝えるよう呼び掛けている。
医師からの事故情報受付窓口(国民生活センター)
消費者の皆様へ 機能性が表示されている食品を購入する際は、キャッチ コピーだけではなく、パッケージの表示をしっかり確認しましょう!(消費者庁)
[ Terahata ]